「…っ」
「どうしたの、蓬生?」
「なんや、首んとこ刺されたみたいやわ」
「え?大丈夫?」
「、ちょお見てくれへん?」
首筋を押さえている蓬生にしゃがんで貰って、長い髪を肩から前に垂らす。
「この辺りやねんけど」
「んー…」
示されたところは、少し赤く擦れたようになっているけど、特に虫に刺された…ようには見えない。
「少し赤くなってるけど、刺されてはいないみたい」
「そうなん?」
おかしいなぁ…と首を傾げた蓬生が、再び、小さな声をあげた。
「っつ…」
「あ、わかった…これだ」
蓬生の動作で思い当たったことがあり、指先で襟に触れると、そのまま辿りながら襟裏のタグに触れる。
「蓬生、このシャツ新しいでしょう」
「せやけど…」
「裏にある、このタグで擦れたんだよ」
「…あぁ、なるほど」
「替えがあるなら、取ってあげるよ?」
「せやね。着替えたらお願いするわ」
「うん」
「ありがとう」
原因がわかってスッキリしたのか、振り返った蓬生の表情は、まるで絵画をみているかのように綺麗で…思わず息を飲んだ。
「さて…と。ほんなら着替えて来よか」
首を押さえたまま立ち上がろうとする蓬生の邪魔をするよう、背後から首に両手を回して抱きしめる。
「?どないし……」
そして彼が振り返るよりも先に、先ほど見た…赤く擦れた部分に、そっと唇を押し当てた。
「……っ、」
「だって、蓬生のうなじ、色っぽかったんだもん」
「……昼間っから、そない煽らんで欲しいわ」
「煽られたのは寧ろ、こっちだと思うんだけど…」
「ふふ…悪い子やね。そういうて誘われたら、断れんよ」
「誘ったわけじゃないんだけど」
「ほな、夜までお預けにしよか」
「う……それも、や」
「ほな、そのままええ子にしがみついとき」
首に回していた手を押さえるようにして、蓬生が立ち上がる。
「俺より、あんたの方が色っぽいって…気付かせたるわ」
「…蓬生には負けるって」
そんなこといいながら、目の前にあるうなじに…今度はさっきよりも強く唇を押し当てた。
―――そこに、自分の証を刻むかのように
蓬生のうなじはえろいと思う。
2010/06/14