、コーヒーを頼む」

「座っているだけなら、自分でいれたらどう?」

「君が淹れるコーヒーに勝るものはない」

「しょうがないわね…」

読みかけの本に栞を挟み、立ち上がると同時に勢い良くドアが叩かれた。

「悪い、。タオルくれ!」

「ヒューズ?」

ドアを開ける前に、切羽詰った声が聞こえ、慌ててドアを開ける。
するとそこにいたのは、頭から爪先まで見事にびしょ濡れになっていたヒューズの姿。

「ちょっと待って、今タオル持って来るから」

何の足しにもならないが、そばにあったハンドタオルを渡してから、バスタオルを取りに洗面所へ向かう。

「今は雨は降っていないようだが?」

「いや、それがついさっきまで物凄い音を立てて降ってたんだって。お前さん、気づかなかったのか?」

「俺は目の前の女性との会話に忙しくて、気づかなかったな」

「私は本を読んでいただけで、ロイがひとりで話していただけじゃなかったかしら?」

素早くヒューズが持っていた濡れたタオルを奪い、ロイに向かって放り投げる。

「っと…酷いな。私に濡れタオルを投げるとは」

「わざとだから。はい、ヒューズ」

「お、サンキュー。ありがとな」

「上着だけでも脱いだら?」

「そうさせて貰うか。あー…床も濡らしちまったな」

「いいわよ、ロイが拭くから」

「………、君は私をなんだと思っている」

やや不満そうな顔をしたロイに、ヒューズの上着を手に持ったままにっこり微笑む。

「何事も優先順位があるでしょう?もし、私が床を拭くのであれば、ロイのコーヒーは更に遅くなるわよ?」

「…くっ」

「あなたが手伝ってくれれば、美味しいコーヒーをすぐ淹れるんだけど?」

「はははっ!さすがだ。諦めろ、ロイ」

「全く、お前が雨に濡れなければ、こんなことにはならなかったんだぞ。…貴様!わざと水を零してないか?」

「何言ってんだ。髪を拭いてるだけだろう」

「だったら、大人しく拭け!犬か!」

そんな二人のやり取りに思わず笑みが零れる。



さて、まずはヒューズの上着を乾かして…
それから、二人のためにコーヒーを淹れよう。

床を拭いてくれたロイへの感謝と
冷えたヒューズの身体を温めるための、コーヒーを…





BACK



いつの頃かわからないが、仲良し三人組が書きたかっただけ。
しかも基本ヒューズさんの扱いは上。
2010/07/02