「あ〜あ、なんかあっという間だったね」
「でも、今年は写真じゃなくて、直接見れてうれしかったよ」
「オレも!なんか毎年行ってるんだけど、今年はちゃんと一緒だったから、すっごくすーっごく楽しかった!」
駅のホームに並んで待ってるのは、彼女を迎えに来る新幹線。
本当は、帰したくない。
帰らないで、ずっとオレと一緒にいて欲しい。
けど、今のオレが、そんなこと言っても、彼女を困らせるだけ。
「…新くん?」
「あ、あーごめんごめん。ちょっと思い出してたんだ。ちゃんの七夕おどり」
「ちょ、もー忘れてよ!」
暑さのせいじゃなく、恥ずかしそうに頬を染めて軽くこつんと肩を叩かれる。
こんなやり取り、いっぱいいっぱいあったよね。
けど、それももう…
「…忘れない」
「?」
寄り添って繋いでた手を、ぎゅっと握る。
それでもまだ足りなくて、指を絡めて、オレよりもずっとちっちゃな手をぎゅっと握りこんだ。
「一緒に遊んだこと、全部覚えとく。そんで、次に会った時には…今よりもっともっと、楽しい時間凄そう」
「新…くん」
「あ〜、ほらほら、泣いちゃダメだよ。折角の想い出が涙で流れちゃうじゃない」
泣かない泣かない、なんて言って、逆の手で涙を拭いてあげる。
だけど…本当は、オレもちょっと泣きたい気分。
帰したくない
ずっと、一緒にいたい
あぁ、オレ…早く大人になりたいな
そうしたら、ちゃんを攫っていけるのに…
新は可愛い、思うこと全部口から出て、気持ちがいつも溢れちゃう。
大丈夫、彼はいつでも時間があれば飛んでくるタイプだ。
2010/06/18