見慣れた背中を見つけて、駆け出す。
「っと…」
なにもいわず、腰にしがみつくようにし、広い背中に顔をうずめる。
「?」
振り返ろうとする金やんを制止するよう、しがみついていた腕に力を込める。
こんな所を誰かに見られたら
とか
金やんに心配かけてる
とか
ここじゃ駄目なのに
とか
色んな気持ちが頭をぐるぐる回るけど、ココロに逆らえない。
そばにいて
そばにいると、感じさせて
ひとりじゃないって
大丈夫だって
自分じゃどうにもできない、この、幼い感情の扱い方を教えて…
震える腕に、大きな手が軽く触れる。
心臓の鼓動に合わせるよう、ぽんぽん…と優しく、触れる。
「…ちょいと落ち着いたら、茶でも飲もうや」
それは、2人きりになろうという秘密の合図
イエスの代わりに、額を金やんの背にこつんとぶつける。
「いい子だ」
誰が来るかもわからない場所
それでもそのままでいさせてくれた
あと、少し…このままで、いて
そしたら、また、顔をあげるから…
あなたのために
あなたを見るために…
顔、あげる
頭でわかってても、心が逆らえない時もある。
2010/06/27