*パラレル
.幼馴染が急に疎遠になって戸惑ったのは…俺だ。
今までは煩いくらいに人の名を呼び、周囲をうろついてたクセに…ある日を境にピタリと来なくなった。
まぁ明日になればまたやって来るだろう。
そう思って無視していたが…3日、1週間、10日
――― 妙な苛立ちを覚え、窓を開けヤツの部屋の窓に石をぶつける。
「あれ、三蔵が呼ぶなんて珍しいね」
何もなかったかのように…いや、寧ろ今までと同じような態度に腹が立った。
「…」
何故俺の側を離れた
どうして、俺を避ける
聞きたい事は山ほどあるが、それを邪魔するのは…俺のプライド。
「あ、そう言えば三蔵。この間、女の子に告白されたんだって?」
「…あぁ?」
「可愛い子だったんでしょ?皆に言われてビックリしちゃったよ」
…てめぇは何を言ってる?
「もぉ、付き合ってるならちゃんと言ってくれなきゃダメじゃん」
「…おい」
「ん?」
「いつ、俺が、誰と、付き合ってるって?」
「先週、三蔵が、隣の高校の、清楚な美人と…」
きょとんとした顔でそう呟いたアイツの顔に、側にあった本を思いっきり投げつける。
「他人の話を簡単に信じるなといつも言ってるだろうがっっっ!!」
「〜〜〜っ!」
「…ひょっとしててめぇが俺の所に来なくなった理由はそれか?」
ふと胸に沸いた疑問を投げかけてみれば、鼻を押さえたままコクリと頷いた。
ようするに…俺に彼女が出来たから、離れた…そういう事か。
はぁ〜…と盛大にため息をつくと、髪をかきあげボソリと呟く。
「ったく、嫌ってたワケじゃねぇんだな」
小声で呟いたつもりが、風のイタズラか…俺の言葉はアイツの耳に届いてしまったらしい。
「嫌いじゃないよ!!寧ろ…その…」
「…?」
「あの、えっと…」
続きの言葉は、風に邪魔されてこちらまで届かない。
けれど、アイツの顔を見れば、それがなんだったか一目瞭然。
不機嫌に寄せられていた眉間の皺は無くなり、口元を緩めて名前を呼ぶ。
「…おい、」
「なっ、何!!」
「こっち来い」
「はぁ!?な、なんで行かなきゃいけないの?」
「お前が中途半端に話すからだろうが。いいから来い」
お前がここへ来たら…教えてやるよ。
俺がずっと想っていたのが誰か…
そして、ここ数日不快だった理由を。
俺も、お前と同じ気持ちだってことを、な。
昔書いた三蔵のパラレル物です。
一部に人気のあった、幼馴染シリーズ。
こちらもサルベージさせて頂きました。
2010/09/28