「さん、只今戻りま…」
「弁慶っ!!」
戸を開けた瞬間、小柄な身体が腕の中に飛び込んできた。
ほんの少し驚いて、でもそれ以上に君をこの手に抱ける事が嬉しくて…微かに頬が緩む。
「どうしたんですか」
「…ずっと、待ってたの」
「今日帰ると約束したでしょう。僕は君との約束を破ったりは…」
潤んだ瞳に見つめられ、告げようと思った言葉を飲み込む。
「すみません。君が信じてくれるのをいい事に、何度か嘘をつきました」
「どんな時でも弁慶を信じてるけど、でもこうして帰って来るまで心配で…」
「可憐な天女に守られているんです。どんな事があっても君の元へ帰って来ますよ」
安心させるよう彼女の体を抱きしめる。
背中に回された手が、僕の衣を掴んだ瞬間、何故か安堵する。
あぁそうか、安心しているのは僕の方だ。
いつ、僕の目の前から消えてしまうかわからない天女をこの手に抱いた日から、恐怖は消えたと思っていた。
けれど、その代わり…別の恐怖に時折捕らわれる。
可愛らしいお嬢さんに心奪われる輩は、多い。
君が、他の男に奪われたりはしないだろうか…という、見えない恐怖。
「弁慶?」
「…久し振りに君をこの手に抱いた幸せに、酔いしれてました」
「もぉ…」
頬を染め、恥ずかしそうに僕の胸に顔を埋めて隠す。
そんな愛らしい仕草は、他の人に見せないで下さいね。
そうじゃないと僕は…君をこの腕の中に閉じ込めたくなってしまう。
「あのね、今日山菜を取りに行ってね!それで…」
「それより先に、頂きたい物があるんです」
「あ、そうだよね。帰ってすぐお茶も入れなくてごめんなさい」
慌てて離れようとした彼女の身体を更に強く抱き寄せて、そっと耳元に囁く。
いつも、ずっと考えていたんですよ
「…ね?」
「っ!?」
「大丈夫。君が望むとおり、一瞬たりとも離しませんから…」
笑みを浮かべながら、頬を真っ赤に染めた彼女の唇を奪う。
ずっと、君が…
無印遙か3をやった後、思いついた小話…だと思う。
あまりに古くて良くわからないけど、京設定だと思うので…無印3だと思います。
弁慶って、いつどこに行ってしまうかわからない不安があるんですよ(苦笑)
大丈夫って言われても、本当かな…って不安が。
でも、それとは違う不安を弁慶も抱いてるんだよってのが、書きたかった…んだと思いたい(おいっ)
…というコメントが残っていたので、そういうことなんでしょう(笑)