ピピッピピッ…
「36.9!」
「…微熱、だね」
「だからほら、何もしなくても下がったからこのまま下がるよ!」
自分がどんだけ意味不明な事を口走ってるのか分からないケド、どうしても目の前の…謎の液体は飲みたくない。
「だから!」
「…がこれ以上熱でうなされる姿はみたくないんだけど?」
「うなされない!大丈夫!もう下がる!!」
「その根拠は?」
「過去の経験により!!」
「…姫君の言葉を信じたいけど、それはちょっと怪しいね」
そう言って体温計をケースにしまうと、ヒノエは小さな湯飲みに入った謎の液体をあたしの目の前に差し出した。
「悔しいけど、アイツの煎じた薬は良く効くよ」
「ヒノォ〜…」
「ふふ、そんな風に可愛い顔を見せられると決心が鈍るね」
だってだって…それ、弁慶の作った薬でしょ!?
あからさまに青汁系で、苦そうだし不味そうだし…
「良薬口に苦し、だよ」
「やだやだ!お願いだから市販の薬買って来てーっ!!」
両手を合わせてヒノエの頼み込む。
ヒノエが薬を買って来てくれればそれを飲んで熱を下げられる。
そしたら弁慶に治ったって言える。
――― これ、飲まなくてすむっ!!
「姫君にお願いされると、弱いね」
「じゃぁ…」
「けど、残念。オレ今金がないんだよ」
にっこり笑顔で両手をひらひら振るヒノエ。
…う、うそつきぃ〜っ!!
「嘘!絶対ポケットに小銭とか入ってるでしょ!!」
「さっき弁慶に買物頼まれた時に使っちまったんだよ」
「うぅ〜…げほっ…」
「配管工事の用事は済んだんだろ?」
「ゆ、夕飯の支度…」
「これ飲んで、仮眠する時間くらいあるさ」
「…」
「…ね、オレの為に飲んでくれないかい?」
「…」
「そんな風に拗ねた顔も可愛いね」
「げほっっ!」
これ以上ヒノエと話してると、無駄に体調不良になりそうだ。
仕方なく湯飲みを手に、大きく息を吐く。
「…」
「飲み終えたら、褒美をやるよ」
「褒美?」
「そ」
「何くれるの?」
「さぁ、何かな。でも喜んで貰えると思うよ」
ヒノエの言葉に騙されて…ううん、騙されたフリをして薬を飲む。
味わった事のない苦味と微かな甘み。
危うく噴出しそうになるのを堪えて、飲み干すと「頑張ったね」という声と共に額に優しいキスが降りてきた。
――― 余計熱、あがりそう
朱雀に看病して貰おうってネタです。
弁慶だけじゃなく、ヒノエまでいてくれるなんて、なんて贅沢っ!
ただ、弁慶の煎じた薬を飲むのは、宮田ッチの作った飲み物を飲むのと同じくらい勇気がいる…気がするのは気のせい?
ちなみにヒノエは小銭を持っています。
弁慶の薬が嫌がらせとかだったら、ちゃんと薬を買いに行ってくれるのですが、今回はちゃんと効くとわかっているので、こんな風に誤魔化してるのです。
…ただ、弁慶がヒノエに渡す薬という名の物は9割以上実験です(おいっ)