「ね、ねぇ・・・イノリくん・・・・・・まだぁ?」

「もう少しだから頑張れ!」

「う、・・・うん。」

藤姫の館から外に出た事ねぇって言うから、気分転換に伏見稲荷に連れて来たけど・・・こいつ年はあかねより上のくせして体力が全然ねぇ。

「お前が言ったんだろ?綺麗な紅葉が見たいって。」

「言った・・・
けど、こんな・・・・・・山登りは・・・聞いて、ない。

「そりゃ言わなかったけど・・・普通紅葉見るって言ったら山だろ?」

「・・・・・・」

「まさかお前、のろのろ町歩けば見れるとか思ったんじゃねぇだろうな。」

「・・・え!?」



――― 図星かよ



「まぁ町中でも見れるけど、オレが一番綺麗だって思う紅葉はこの上なんだ。」

そう言って急な坂道を指差せば・・・思いっきりでかいため息をつきやがった。

何だよ!折角オレがお前にいいもの見せてやろうとしてんのにその態度は!
そりゃまぁ何も言わず連れてきたオレも、ちょっとは悪いって思うけど・・・でも本当にいい場所なんだって!
でもこれ以上体力のねぇこいつを登らせるのは無理・・・か?

下山も考えると、これ以上時間を取られる訳にもいかない。
ガリガリと頭をかいて、道端に座り込んじまってるに声をかける。

「もう止めるか?」



お前と一緒に、山間に沈む夕日が見たかった。
眼下に広がる色付いた紅葉を見せたかった。

けど、何よりオレが見たいのは・・・お前の笑顔だから ―――




「もう・・・
帰るか?

少しだけ声が小さくなったのは、きっとお前と一緒に何かが出来るって思ってたオレの期待がしぼんだ所為だ。
けど、そんな事にも気づかないくらい疲れているのか、座り込んじまったはいまだ顔をあげない。



って、おいっ!!まさか疲れすぎてそのまま気ぃ失ったとかじゃねぇよな!?



慌てて坂を駆け下り、座り込んでるの側に膝をつく。

おいっ!!

「・・・ん」

肩を掴むと、がオレの手に自分の手を乗せて顔を上げた。

「何だよ、驚かすなよ・・・」

「・・・て・・・」

「あ?」

・・・す・・・・・・ら・・・・・・い・・・に・・・

「・・・本当か?」

小さく頷いたのを確認して、オレは持っていた筒を手渡す。

「水、入ってるから飲め。そんで落ち着いたら行こうぜ!」

「・・・うん。」



――― 待って、イノリくん。もう少し休んだら行くから、一緒に・・・



荒い呼吸の中から紡いでくれた言葉は・・・やっぱりらしい言葉で、そんなだからオレはオレのお気に入りの場所に連れて行きたいって思ったんだ。










水を飲んで落ち着いたが顔を上げた時には、太陽がちょうどいい具合に傾きかけてて、運が良ければ一番いい時に山頂につけるかもしれない。

「お待たせ、イノリくん。」

「おう!」

立ち上がったの前に立ち、さっきと同じように歩きかけて足を止める。

「イノリくん?」

「ん。」

「?」

無言で手を差し出すと、は手に持っていた筒をオレに渡した。

違うっ!手だよ、手!

「手?」

「お前、遅いからな。オレが引っ張ってやる。」

「・・・イノリくん。」

「じゃねぇと、日が暮れるまでに藤姫のトコ帰れなくなるからな。」

「え!?嘘、あたしそんな遅い!?」

「遅い。」

「ガーン・・・じゃぁもっと頑張るね!」

「おう、頑張れ!」

そう言ってオレの手を掴んだお前の手が、思ったより細くて・・・驚いた。

ねぇちゃんの手とは違う、柔らかくて細い・・・手。
思いっきり握ったら砕けちまいそうで、力が入れらんねぇ。

でも、今度はちゃんとオレがお前の手を引いてやる。
だから、頑張れよな!





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えーっと元はweb拍手用に書いてたんだけど、なぜか名前がないと続かなくなったので急遽こっちに持ってきました(笑)
一応頑張るイノリくんのお話?いや、違うか?(汗)
ヒロインが年上だけど、頼りない所とかねぇちゃんと違う所を見つけてちょっと意識するイノリくんの話です。
ちなみに彼が見せたかったのは言わずもがな、伏見稲荷の千本鳥居です。あ、あと紅葉もね♪←どっちがおまけ!?
最終的に夕日が山間に沈む頃、ちゃんと山頂につきました。
ただ、帰りが遅くなってしまったので、イノリくんがあかねちゃんと藤姫に怒られ、ヒロインが頼久さんや友雅さんにさり気なく注意をされます(笑)
・・・そこまで書ければ良かったんですけどねぇ。気が向いたら書きます。