「甘いものが食べたい…」
暑さを遮る衣を被り、俯いて歩きながらポツリと呟いた声は、案外はっきり隣を歩く人の耳に届いたらしい。
「はぁ!?なんだよ、突然?」
「突然じゃないもん…」
ずっと思っていたけど、それはこの世界ではワガママ…というか無茶な話。
あかねちゃんすら我慢してるんだから、年上のあたしが甘いものが食べたいなんて言えるはずもない。
「ずっと思ってたんだもん」
その我慢して考えていた事が、年下のイノリくんの前で零れてしまった事をちょっと恥ずかしく思いながらポツリと呟いたら、大きなため息と共に目の前の木陰を指差された。
「ったく、しょうがねぇなぁ。ちょっとここで待ってろ!」
「え?」
「ぜってぇ、そこ!動くんじゃねぇぞ!」
「ちょっ、イノリくん?!」
止める間もなく、イノリくんは風のように歩いてきた道を走って戻って行った。
残されたあたしは、都の一歩手前…みたいな所で立ち尽くすのみ。
――― ど、ど、どうしよう…
追いかけたほうがいいのかな?
でも、絶対動くなって言われたし…
下手に動いて、迷子になったらまた怒られそうだし。
取り敢えず、言われたとおり示された木の下に腰を下ろして、イノリくんの帰りを待つ。
まばらな人影
好奇の目を衣で隠しつつ、今か今かと彼の人が消えた方向へ視線を向け、戻ってくるのを待っていると、不意に視界が翳った。
「おい、何してんだよ」
「イノリくん」
暗かった視界が一気に明るくなり、顔を隠していた衣が取り払われた事を知る。
「詩紋みたいに顔隠してんじゃねぇよ」
「だって、皆が見るんだもん…」
「はぁ?」
「…恥ずかしいじゃん。」
「ぶっっ…あははははは!!」
――― 大笑いされた
「お、お前っ…おもしれぇ!」
「何が!?」
お腹を抱えて、尚且つ笑いすぎで零れた涙を拭いながら、イノリくんは太陽にも負けない笑顔でさらりと言った。
「が綺麗だから」
「は…」
「だから、つい、見ちまうんだ」
「………」
「っと、いけねぇ。忘れる所だった!」
あたしがイノリくんの台詞に戸惑っているのも露知らず、袂をあさってある物を取り出す。
「ほら、今の時期じゃこんなのしかねぇけど、充分だろ?」
「……え、え!?」
「オレしか知らない場所に生えてる実だ」
そう言っててのひらに乗せてくれたのは小さな赤い実。
「小さいけど、すっげぇ甘いから食ってみろよ!」
太陽を背に眩しく笑う彼がくれた赤い実には、額に汗して大急ぎで採って来てくれた優しさがギュっと詰まっていた。
2008web拍手、名前変換入れて手を加えて再録。
お砂糖シリーズでUPしていたものです。
遙か1で一番の将来有望株イノリくん!!
漫画で好感度が物凄い勢いで上がりました!!
男前だ!カッコイイぞっ!!大好きだー!!
一本気なとこも、家族大事にするとこも、仲間大事にするところも…大好きだー!!
…そしてセリさんも大好きだー←あれ?(笑)