「ヒノエ?」
「あれ、どうしたんだい姫君。」
珍しく息を切らして部屋に入ってきた姫君を見て、文を書いていた手を止める。
「・・・良かった。」
「ひょっとして目覚めた時にオレがいなかったから不安になったのかい?」
くすくす笑いながらそう言えば、思ったとおり・・・可愛らしく頷いてくれる。
たまに長期間船で館を離れるってのもいいかもしれないな。
旅前はこんな風に素直に頷いてくれる事、なかったからね。
「またヒノエ・・・行っちゃったのかと思って。」
「馬鹿だな。お前に何も言わずに行くはずないだろう?」
「・・・本当?」
「あぁ。オレが館を離れる時は必ずに声をかけるよ。」
そう言ってやれば目に見えてが安堵の表情を浮かべた。
「約束ね!!」
太陽を背に嬉しそうに微笑む天女っていうのは、随分と魅力的だね。
押さえられない自分の素直な感情に苦笑しながらも、を手招きして自分の元へ近づけさせる。
「おいで。」
「?」
「・・・ほら、そこじゃ誰か通る時に邪魔になるだろう?こっちで話をしよう。」
「お仕事中じゃないの?」
「姫君との語り合い以上に重要な事はないよ。」
「・・・本当?」
「あれ、随分と疑われてるね。」
「だってヒノエが朝起きてお仕事してるなんて滅多にないから・・・。」
本当は起きるつもりなんてなかったさ。
でもね、オレにも色々事情があるんだよ。
特に、男の朝には・・・ね。
「急ぎの仕事は終わってる。だから、おいで・・・。」
両手を広げて笑顔で姫君の名を呼んでやれば、小さく頷いてこっちへやって来る。
あと5歩
あと3歩
・・・1歩
「きゃ・・・」
「ようこそオレの腕の中へ。」
「ヒ、ヒノエ!?」
初なの顔がどんどん朱に染まっていく様子を見てると、自然と笑みが零れる。
ヤバイね、こんな風に可愛い顔見せられたら離せなくなりそうだよ。
「今日はこのまま抱いていてやろうか。」
「えぇ!?」
「オレの姿が見えないと寂しがってくれた姫君のために・・・この腕を今日一日貸してやるよ。」
「貸してって・・・ちょ、ちょっと・・・」
腕から抜け出そうと暴れ始めたの耳元に、そっと声を落としてやる。
「あまり暴れると裾が乱れるよ。まぁ見るのはオレだけだから構わないけど。」
「・・・っ!!」
「いい子だから、今日は一日オレに抱かれてな。」
チュッと音を立てて頬に唇を落とすと、姫君の体が小さく丸くなる。
全く、本当にこの姫君はオレに火をつけるのが上手いね。
この手にしっかり抱いているのに
その身体は、まだ、この手に落ちない。
毎度思うこと。私はどんだけ額とか頬へのチューを書くのが多いのか、と。
あの可愛い感じが好きなんですよねぇ〜・・・って、それ解決になってないから。
オトナなヒノエのはずが、ほら、ね?この辺から狂い始めてるでしょ?
普通オトナでこのお題なら、あっちへ行くだろう!!
・・・でも、行かないで甘い方へ持っていくのが私なのです(笑)
こんなヤツですが、見捨てず最後までお付合い下さると嬉しいですっ!!