腕の中の姫君の様子が・・・いつもと違う。
戯れが過ぎた、と思っても・・・もう遅い。
その瞳に宿る情欲の色は、姫君と出会う前は良く目にしたものだ。
けれど、天女と・・・否、と出会ってからは久しくお目にかかっていない。
「・・・ヒノエ」
普段と変わりなく呼ばれているはずの名。
けれど、そこには・・・今まで聞いた事がない程の艶が込められている。
自身も気づいていないであろう溢れ出る色香に・・・のまれちまいそうだ。
それでも、今までの姫君のように一時の快楽を味わうような真似はしたくない。
僅かに残っている理性を総動員して、腕に抱いているの頬をそっと撫でた。
それすらも刺激に変わっているのか、僅かに眉をひそめて色っぽい表情を見せる。
逃がさないよ・・・オレの、オレの姫君。
「・・・お前が、好きだよ。」
「・・・ん」
こくりと頷きながら微かに震える手でオレの衣を掴む姿が愛おしい。
誰かをこんな風に心から愛しいと思ったのは、初めてだ。
それと同時に、壊してしまいたいほど愛したい衝動に駆られた事も。
安心しきったように預けられた姫君の身体をそっと床に横たえて、じっと目を見つめる。
「お前が欲しいって言ったら・・・姫君はなんて言葉をくれるかな。」
「・・・え」
いつものオレならこんな時、こんな野暮な台詞は口にしなかった。
言葉なんていらない、あとは行動に出るだけ・・・けれど、を前にしていたら、自然と言葉が零れた。
「オレはお前を大切にしたい。この世の誰よりも、幸せにしたい。」
「ヒノ・・・エ・・・」
戸惑いと恥じらいを含んだ表情は、微かにのこった理性の箍すらも外しそうな勢いだ。
床についている拳をギュッと握り締め、その痛みで湧き上がる衝動を必死に堪える。
「情けない顔、してるだろう?愛する女の前じゃ、こんな格好悪い姿も見せちまえるんだ。」
「・・・」
「お前が好きだよ・・・愛してる。」
「ヒノエ・・・」
「・・・」
互いの名を呼んで、じっと瞳を見つめあう。
やがてが意を決したかのように、両手を首に回して耳元にひと言落とした。
――― そう、それは初めてオレに好きだと告げてくれた時と同じ
その言葉がオレの身体に電流を浴びせたように行き渡ると・・・オレは躊躇う事なく姫君の首筋に顔を埋めた。
はい、今度こそ、この言葉を叫びますっ!!
ノーコメント!!
・・・若干ヒノエがヘタレですね。
強気でガンガン行くのは、別の方に頑張って貰いましょう。
うちのヒノエは好きな相手には強く出れないんです。
えぇ、それが私の趣味ですけど何か!!(笑)←開き直り