「ただいま、姫君。」
「ヒノエっ!!」
「おっと、珍しいね。こんな風に出迎えてくれるなんて。」
「きっと寂しかったんですよ。ね、さん。」
笑みを向けるが、彼女はヒノエに抱きついたまま、一切こちらを見ようとはしない。
――― それも当然、かな・・・
「本当にどうしたんだい?妙に甘えてるね。」
「誰かが浮気でもしたんじゃないかと勘ぐっているんですよ。」
「・・・あんたと一緒にすんなよ。おいで、姫君。沢山土産がある。」
ヒノエの首に回した彼女の両の手を優しく解き、頬を寄せながら自分の胸元から取り出した装飾品を見せる。
沈んだ表情だった彼女の顔が、ヒノエの言葉を聞いている内に、徐々に赤く色付いていく。
僕の前ではあんな風に表情を変えてはくれない。
もう、あんな表情は見られない。
「他にもまだまだあるんだぜ?見てみたい?」
「うん!」
「ふふ、じゃあおいで。姫君だけにとっておきを見せてやるよ。」
肩を抱き寄せ、さんと共に岸につけてある船へと向かっていく後姿を見ながら、海に浮かぶ太陽の光りに目を細める。
「幼い頃と変わりませんね。」
大切な物は、いつも手元に。
そして大切な者を喜ばせるために、手を尽くす。
「・・・そんな所は、可愛い甥のままですよ。」
君のその純粋さを疎んだ時もあった。
何もせずとも皆を従わせる魅力と、性質。
けれど、もう・・・いい。
別の方法で僕は、手に入れる事が出来たから。
例えそれが、幼い子供が物をねだるような行為に見えたとしても・・・
手に入れるためには、手段など構わない。
多分、恐らく・・・弁慶は一度くらい、ヒノエに嫉妬した気がするんですよ。
ほんの一瞬の事だと思うけど・・・なんとなく。
ヒノエは幼少期はそりゃ素直だったと思うのよ。
どうして?を連呼したり、元気に走り回って海に行けば、水軍の皆に構って貰えた。
弁慶はそういう幼少期、過ごしてないんじゃないかなぁ・・・と。
そんなヒノエを愛しく思いながらも、どっかに嫉みもあったかなぁ・・・と。
はい、これ全て妄想なり(笑)
まぁそれでも弁慶がチビヒノエを教育したら、あのように育ちました・・・となると面白いなぁと考えていつも朱雀話を書いております。