「ん・・・」
「お目覚めかい、姫君。」
「あ、おはようヒノエ・・・」
目元を擦っている姫君。
さて、そろそろいつもの声が上がる頃かな。
ゆっくり自らの手を両耳へあて、これから起きる事態へと備える。
「きゃぁーーーーーっっ!!」
全く、いつになったら慣れるんだろうね、この姫君は。
姫君が目覚めるのは、必ずオレの腕の中。
何故かって?そりゃ妙な輩が手を出さないよう牽制の意味を兼ねてるのさ。
ま、頭領であるオレが目をかけてる女に手を出すような不届き者を敷地内に入れたりはしないけどね。
ついでに言えば、オレは寝る時に薄衣一枚はおって床に入るから、初な姫君は毎度視線のやり場に困るみたいだよ。
その反応が見たくてわざとやっている・・・なんて、教えてあげないけどね。
「い、いやぁ〜っっ!」
「ふふっ、姫君はいつになったらオレに慣れてくれるのかな?」
「今はまだ無理、です。・・・だから、その・・・お願いだから服着てーっ!」
「おや、この衣が見えないかい?」
「それだけじゃダメっ!」
元々オレは手のかかるお子様には興味が無かったはずなんだけど、この姫君だけは別だ。
今まで相手にしてきた数多の女達とは違う容貌。
男慣れしていない仕草は鬱陶しいはずが、逆にオレの保護欲をくすぐる。
「昨夜は珍しくオレに抱きついて眠ってくれたのにね。」
「そんな事してませんっ!」
「おや?違うのかい?」
「あ、あ、あれは・・・」
そう、あれは寝ぼけて寝返りをうったをオレが勝手に抱き寄せただけ。
それでも目覚めなかったって事は、オレに気を許してくれているって事だろう?
くすくす笑いながら腕の中から逃げようと暴れる体を抱き寄せる。
「ほら、まだ朝餉には早いよ。もう一眠りしたらどうだい。」
そっと首筋に顔を埋めれば、姫君の体から香る香りに頬が緩む。
いつもオレがまとっている香が、姫君にしっかりと移されている。
同じ香りを共有しているという些細な事が、幸せに思えるなんて・・・オレもどうかしてるぜ。
「ヒノエ〜!」
「何?」
「・・・離して。」
「可愛らしくお願いしてくれたら離してあげるよ。」
「そんなぁ〜」
全く、潤む瞳でそんな風に見上げられるだけで男はあっという間に落とせるのに、自分を知らない姫君ってのは怖いね。
「ほら、お願いしてごらん?」
ニヤリと笑っての耳元へ囁き、その反応を楽しむ。
そんな朝の戯れの邪魔をしたのは・・・無粋な来訪者のひと声。
「ヒノエ、お楽しみの所を失礼しますよ。」
「・・・失礼されたくないね。」
「事は急を要するんです。」
そう言って図々しくも部屋に入り込んできたのは・・・オレの叔父でもある武蔵坊弁慶。
オレはを腕に抱いたまま上掛けを引き寄せると、オレの身体ごとを上掛けで包んで弁慶から隠した。
「おや?珍しいですね。いつものように腕の中の美女を僕に自慢するのかと思っていましたが・・・」
「生憎姫君はまだ他の男を知らなくてね。あんたに見せたら折角の清らかな姫も一瞬で濁っちまうだろ?」
「・・・皆が言っていましたよ。まるで天女のように儚げな姫らしいですね。」
「まぁね。」
「是非一度拝見してみたいものです。」
「オレの気が向いたら会わせてやってもいいぜ。ただ、その時は既に姫君が天に帰っちまった後かもしれないけどな。」
女に関してオレと同等・・・いや、それ以上に場数を踏んでるこいつにを見せるわけにはいかない。
あっという間に値踏みして、隙を突いて奪うに決まってる。
「・・・で?まさかあんたがオレの女見たさに寝所に押しかけるなんて馬鹿な真似するわけねぇよな?何の用だよ。」
「早船を一隻お借りしたいんです。」
「偵察、か?」
「それはいくら可愛い甥とはいえ、教えられません。」
「思っても無い事を・・・。金さえ貰えれば、構わないぜ。」
いつもの話し合い、いつもの算段。
弁慶は懐から何か取り出すと、ゆっくりとした動作で布を紐解きその中から上質の装飾品を取り出しオレの前に置いた。
「これで如何ですか。」
「相変わらず趣味のいいもん持ってくるな。これなら高値で売れそうだ。」
手に取り細やかな装飾を確かめていると、ふとこれがの襟元に似合いそうだと思い、布の下でうごめいている肢体へ視線を向ける。
それに気づいたのか、弁慶が立ち上がりながら嫌味ったらしく呟いた。
「売らずとも、あなたお気に入りの小鳥さんに差し上げては如何ですか?きっと柔らかな黒髪に映えると思いますよ。」
「てっめぇ!!」
「ふふ、冗談ですよ。今、頭領を怒らせてしまっては船をお借りできませんからね。」
相変わらず嫌味な野郎だぜ。
一瞬でも動揺してしまった自分が情けなくて、髪をかきあげながら弁慶を睨む。
「船は貸してやる。けど、今度からは寝所じゃなく別室で取引だ。」
「・・・分かりました。それでは、お楽しみの所失礼しま・・・」
あともう一歩で弁慶が部屋を出ようとしたのに、オレの手が緩んだ隙を見てが上掛けから顔を覗かせてしまった。
「ぷはっ!」
「馬鹿っ!」
「苦しかった・・・」
「あぁ〜・・・」
折角あいつから隠していたのに・・・ため息をつきながら弁慶へ視線を向けると、立ち上がりかけたままの体勢でじっとを見つめていた。
「・・・用は済んだんだろ。とっとと帰れよ。」
「えぇ、ですが僕とした事が大切な用事を忘れていました。」
笑みを浮かべてオレの前に来ると、きょとんとした顔をしているの前に弁慶が膝をついた。
「初めまして、ヒノエの叔父である武蔵坊弁慶・・・と申します。」
「・・・弁慶?」
「えぇ、これから直々こちらに立ち寄らせて頂きますので、どうぞよろしくお願いします。」
「・・・おい。」
「ヒノエ、そういう訳ですから、よろしくお願いしますね。」
「人の女に何を・・・」
「おや、まだ君たちはそういう関係じゃないでしょう?ねぇ・・・お嬢さん?」
まるで裏のない優しげな笑みを浮かべてに尋ねる弁慶。
おいおい、オレの目の前で口説いてんじゃねぇよ!
「とっとと帰れ。」
再びを上掛けで隠すと、弁慶を睨みつけながら外を指差す。
「折角手に入れた船を泥舟に変えられたくねぇだろう?」
「・・・そうですね。今日の所は君が慈しんでいる姫君の顔を拝見出来ただけで良しとしましょう。ではまた。」
クスクスと嫌みったらしい笑みを残して部屋から姿を消したと同時に、上掛けを取り払いの肩をしっかりと掴む。
「いいかい、。あいつと二人っきりで会ったりするなよ。」
「え?」
「あいつは・・・危険な野郎だからな。」
「・・・?」
弁慶が船の代金代わりに持ってきた装飾品は、確かにの黒髪に映える代物だった。
・・・が、とっとと売り払って金に換えた。
何で他の野郎が持ってきたモンを、にやらなきゃなんねぇんだっての。
弁慶相手じゃさすがのオレもちょっとばかり気を引き締めなきゃならねぇかもな。
キャーwww弁慶登場〜〜〜〜wwwしょっぱなから真っ黒〜(笑)
個人的に大好きなのが「おや、まだあなた方はそういう関係じゃないでしょう?ねぇ・・・お嬢さん?」です。
お嬢さんですよ!お嬢さん!!(笑)←壊れてる。
最初くらいしかこの台詞言ってくれないから、読み直してて1人でじたばたしてました(笑)
えー、こんな風にヒノエをからかいつつ、オイシイ所は持っていく彼が大好きです!
この話を書いている時、何が楽しかったかって・・・叔父と甥の会話(笑)
腹を探ってるんだか、からかって遊んでるんだか・・・あー楽しい♪←変。
まぁそんな感じで弁慶の初登場も書けたので、次は普通にたらたらと書いていく事になります。
あ、でもその前にお題があるか・・・うん、そっちUPしよう。
一体何時までヒロインはヒノエと一緒に寝てるんでしょうか?
ま、一緒に寝ている内は大丈夫でしょうね。
別の部屋で寝るようになったら確実に狼が何匹かやってきますから(キッパリ)
なので、身の安全の為に、彼女はまだヒノエの側にいた方がいいと思います。
うちのサイトの湛増くんは優しいですから(一応)
さーて、今度は父も出したいなぁ〜湛快さん(笑)←何処を目指している!?