「手相占い?」
「はい。」
夕食後、珍しく姫君の方から手を重ねてきたから、随分大胆になったものだと思ったのに・・・そんな理由だったのかい?
「手の平にあるこの太い線・・・手首に向かって伸びてるのが生命線で、その側からの手の平に向かって伸びてるのが頭脳線。」
白く細い指が、オレの手の平をそっと撫でていく。
何だかくすぐったいような照れくさいような仕草を繰り返し、時折何かを思い出しながら指先でオレの手の平にある皺を撫でていく。
「それから、小指の方から伸びてるのが感情線で・・・あ、ヒノエ金運が凄くいいね。」
「へぇ、そんな事も分かるのかい?」
「ここの線がこうなってるのは、確か億万長者型でめったにいないんだよ。」
「ふ〜ん、悪くないね。」
たかが手の平に刻まれた皺でそんな事が分かるなんて・・・ひょっとして姫君は巫女姫様の間違いだったのかな。
そんな事を思いながら食い入るようにオレの手を見ていたが不意に動きを止めたので、不審に思い声をかける。
「どうしたんだい?」
「・・・う、ううん。なんでもない。」
否定するものの、その表情はさっきとは違って翳りがあり、無理して微笑んでいるようにも見える。
「えっとそろそろ寝る時間だよね。あたし寝る前にお茶飲みたいから貰ってくるね。」
そんなとってつけたような言い訳、このオレに通じるわけ無いだろう?
立ち上がりかけたの手首を掴んでほんの少し力を入れれば、体勢を崩したお前の体は容易くオレの腕の中におさまる。
「全く、姫君は酷いね。」
「え、酷いって?」
「こんなにオレの鼓動を高めておきながら、そのまま1人にするなんて・・・」
「そんなつもりは・・・」
「そうだろうと思ったよ。でも、ほら、聞こえないかい?オレの胸の高鳴り。」
しっかり彼女を抱きしめ、鼓動が良く聞こえるようの顔を胸元へ押し付ける。
「ね、・・・分かるだろう?」
「・・・」
初な姫君の顔が見る見る真っ赤に染まっていく様子を見ながら、抱きしめていた腕の力を緩める。
「可愛いね、。」
「ヒノエ・・・」
「そのまま教えてくれるかい?一体何を見てその可愛い顔を曇らせたのか。」
「・・・。」
「姫君の嘘はオレには通用しないよ。」
「お、怒らない?」
「オレが姫君の何を怒るって言うのさ。」
「・・・」
壁を背に寄りかかり、僅かに体を起こして口を開くのを躊躇っている姫君を再びこの腕に抱きしめる。
「何に怯えているのか分からないけれど、オレは姫君が何を言っても驚かないよ。」
「・・・」
「オレが、信じられないかい?」
耳にかかる髪を指で払い、そこへ口付けるくらい唇を近づけて囁けば、小さく姫君の肩が震える。
「ねぇ、オレのこの手から何を読み取って、そんなに不安になったんだい?」
もう一度、優しく声をかけてやれば・・・ようやくが顔を上げてオレの目を見つめた。
「ヒノエの・・・結婚運。」
「結婚運?」
「そう・・・」
潤みかけた目元を手の甲で拭い、最初にやっていたようにオレの手の平を上にして指でなぞる。
「ここの小指の付け根から、感情線の間にある線が結婚線なの。」
オレの手には姫君のいう感情線と小指の付け根の間にくっきりと刻まれた皺が2本ある。
「ヒノエは・・・線がくっきり2本出てるから、きっと・・・」
そこまで言いかけて口を噤んでしまったを見て、何故表情を曇らせたのかが分かり思わず笑みが零れてしまった。
「はははははっ!」
「ヒノエ?」
「全く、どうしてお前はこんなにオレを喜ばせてくれるんだろうね。」
「???」
「姫君がオレの手に触れてくれるのは嬉しいから、手相占いってのも試してもらったけど、この手の平にあるのが全て運命とは限らないぜ?」
「え?」
「現にオレの手は皺以外にも、小さな傷がいっぱいあるだろう?ほら、ここの傷も、こっちの傷も・・・全て怪我が治ってから出来たものさ。」
驚いた顔をしているの前に、手の平をかざして傷ついて出来た傷を見せる。
「だから、姫君がそんな風にがっかりするような線は・・・無かった事にすればいいんだよ。」
「が、ガッカリなんてしてません!」
「なんだ、それは残念。まだ見ぬ女に姫君が嫉妬してくれたのかと思ったのに、ね。」
「!?」
ボンッとまるで火薬が爆発したかのように体を大きく震わせて、顔を真っ赤にしたの手をとり、教えられたばかりの結婚線を探す。
「へぇ・・・姫君の結婚線は1本なんだね。」
「・・・一応。」
「じゃぁ・・・」
手を閉じてしまわないよう両手で姫君の手の平を開くと、オレは小指の付け根に唇を寄せた。
「姫君の結婚線は、オレが頂くよ。」
「ヒノ・・・っ!!」
「結婚線が何本に増えようと、全く無くなったとしても関係ない。オレがお前を貰うと決めたからには、その言葉は違えない。」
「・・・」
「熊野の男は一度決めた事はどんな難題でも貫き通す強い意志を持っているんだぜ?」
ウィンクをしながらもう一度姫君の手の平に口付けると、夏の暑さで蕩けた氷のようにが力なくオレの腕に倒れこんできた。
素直な姫君にダメ押しと言わんばかりに、オレの声を脳に刻み込む。
「こんな手の皺なんかより、オレの言葉を信じろよ。」
「・・・」
「・・・ね?」
「・・・」
小さく頷いたのを確認すると、いつものように少し声を落として甘い声で名を呼んでやる。
「いい子だね、。」
力をなくしたその体を抱き上げ、あらかじめ用意されていた布団に下ろして離れると、姫君が不安げにオレの顔を見上げた。
「ヒノエ?」
「悪いけど今日は先に休んでいてくれるかい。烏が何か仕入れてきたようでね。」
「・・・はい。」
「ふふ、聞き分けのいい姫君に褒美をあげようか。」
口元を緩め、まだ熱を持っていそうな額に軽く唇を押し当てる。
「おやすみ、姫君。なるべく早く戻ってくるよ。」
「わかった・・・お休みなさい、ヒノエ。」
「あぁ。」
潤んだ瞳が閉じられたのを確認すると、オレはゆっくり立ち上がり部屋を後にした。
「ふぅ・・・さすがのオレも今日はヤバかったな。」
小さく息をつき、足早にのいた部屋から離れる。
いつも可愛らしい無垢な少女のような笑みを浮かべている姫君。
けれど今日は、そのまっすぐな瞳の中に微かな嫉妬の炎が浮かんでいた。
本人は気づいていないだろう、小さな小さな炎
それが自分ひとりに向けられていると気づいた時の胸の高鳴りをどういえばいいのか。
「魅力的過ぎておかしくなっちまいそうだよ。」
それでも側にいたい。
誰にも渡したくない。
「ま・・・取り敢えず、姫君に言った手前、真面目に仕事に取り掛かるか。」
烏からの呼び出しなど本当はないが、小さな雑事はきっと山ほど溜まっているに違いない。
それらを片付けて部屋に戻れば、いつものように可愛らしい寝息が聞けるはずだ。
「それまでは一人寝させちまうけど、許してくれよ?」
届けられなかった唇へのキスを指先に乗せ、部屋に向かって飛ばす。
「おやすみ、姫君。いい夢を・・・」
遙か祭での直ちゃんのキスが忘れられません・・・あ゛語弊ありすぎだっ!!(笑)
えーっと曲の振り付けに入っている指先に乗せた投げキッスのシーンが忘れられません・・・でいい!?
という訳で、最後の指先に乗せたキスは、遙か祭から持ってきました(笑)
ちなみに手相は一応調べて書きましたが、何が正しくて何が間違ってるのかまでは一般人で占いを適当にいい事しか信じない私には分かりません。更にヒノエの手相は・・・知りません、勝手に作りました。でも確か傷が皺になる事もあるってのは聞いたことあるんだよね。
何かなぁ・・・つくづく私ってキスする仕草に弱いんだって気付きましたよ。
おかげでヒノエがキス魔になっちゃって申し訳ない(苦笑)
しかも唇へのキスより、他の部分へのキスの方が好きみたいでねぇ・・・さて、今後どうなるんでしょう?(私が聞きたい)