船を貸す代わりに京での情報を寄越せといえば、量が多いから書に認めて送ると応えた。
暫くして送られてきた書を紐解いて頭を抱えた。
簡潔に書かれているのかと思えば、何重にも重ねられた暗号文。
微塵も内容を伝える意図は感じられない。
「…嫌がらせかよ」
ぽつりと呟いた瞬間横から人の気配を感じ、顔を動かさず伸びてきた手を掴んだ。
「わっ!」
「…あれ?随分可愛い子猫が忍び込んで来たね」
「…」
子猫、と言われて若干頬を膨らませる姿も愛しいオレの姫君。
けれど、普段ならば先に声をかけるが今日に限ってこんな行動に出るなんてどうしたんだろうね。
「で、何をしようとしていたんだい」
「え?」
「今、オレに何かしようとしていたろう?」
「…な、何も…」
あからさまに目をそらして手を振りほどこうとするが、捕まった小動物が逃げる仕草に何処か似ていて笑みが零れそうになる。
それを堪えながら掴んでいた手に力を入れると、あっという間に小さな身体がオレの腕に飛び込んできた。
「わっ!」
「さて、何をしようとしていたのかな。オレの姫君は」
「…お、怒らない?」
「さぁ、どうかな」
「…じゃぁ言わない」
「ふふ、嘘だよ。お前がする事にオレが怒るわけないだろう。だから…」
――― 教えて?
…と耳元の囁けば、頬を朱に染めた姫君がゆっくり口を開いた。
他愛無い言葉が返ってくるだろうと思っていたのに、の口から出た意外な言葉に…オレは思わず間抜けな声をあげてしまった。
「ヒノエの弱点は、わき腹だって」
「は?」
――― 弱点?
「いつも戸惑ってばかりだって言ったら、教えてくれたの」
「…それ、誰に聞いたか教えてくれるかい?」
「…」
「怒らないから」
「…お手紙で聞いたの」
手紙、と聞いた瞬間、オレの手元に届いた書物以外に、烏が花の添えられた文を持っていた事を思い出した。
「へぇ…弁慶か」
「え?どうして分かったの!?」
「お前の事ならなんでも分かるさ」
にっこり微笑みながら、空いている手で弁慶からの書を握りつぶす。
――― 絶対解読してやるっ!!
売られた喧嘩を買わないわけにはいかない。
どんな手を使っても、この書は解読して突っ返してやる!
さて、アイツの方は後回しで問題ないとして…姫君へのお返しは、どうしようか。
オレに手を出したらどうなるかってこと、その身で覚えてもらうってのが一番かな?
いつもいつもいつもいつも、ヒノエには戸惑わされてばかりです。
なので、たまには驚かせてみよう!ということで、ヒノエにちょっかいをかけてみました。
はい、あっという間に形勢逆転になりましたけどね(笑)
小さい頃はきっとヒノエも脇腹とか湛快さんとかにつつかれて飛び跳ねていたと信じたい。
(勝手に言ってろ(苦笑))
でも今はへーーぜんとしてそうだな。
足の裏くすぐっても笑わなそうだ。
…誰か、ヒノエの弱点教えて下さい←誰が知ってるんだよ