空が白む頃、そっと目を開けて腕の中の姫君の眠りを確認する。
「ふふ…可愛いね。こんなに安心して眠るなんて…」
両手を口元に当ててすやすやと眠る姿は、何処か赤子の姿に似ている。
「…っと、さすがにその例えは姫君に対して失礼だね」
ふ…と、頬を膨らませた彼女の姿が脳裏に浮かび、僅かに肩を震わせた。
すると、その振動が抱きしめていたの体に伝わったのか、瞼を震わせ僅かに身じろいだ。
「ん…」
「姫君が目覚めるには、まだ早いかな」
身体を動かさず、彼女が再び深い眠りにつくのを静かに待つ。
「…ん…」
微かに口元を動かし、寄り添うようにオレの方へ身を寄せる。
やがて規則正しい呼吸が、抱き寄せている胸元にあたりはじめ…肩の力を静かに抜いた。
「…いい子だ」
そう呟きながらそっと彼女の頭に唇を落とし、その寝顔を盗み見る。
僅かに乱れた髪、微かに開く唇…そして衣の合わせ目から見える白い肌
数え切れなくなるほど夜を共にし、衣一枚纏った状態の天女を腕に抱いているのに、手を出さない…ってのは、おかしな話だ。
こんな魅力的な相手なら、すぐに自分の物にしたとしてもおかしくはないのに。
けれど、が気持ちよさそうに眠っている姿を見ていると…普段ならば押さえられない欲望すら、自然と抑えられてしまう。
「求めていないわけじゃないんだけどね」
苦笑しながら、柔らかな頬をそっと撫でる。
姫君 ――― と呼べば、すぐに頬を朱に染め
可愛いよ ――― と言えば、飛び上がるくらい驚いて
いい子だ ――― と囁けば、俯きながら小さく頷き…
そして ―――
…と、名を呼んでやれば
太陽のように眩しい笑みを見せる
それら、全ての仕草が、愛しい。
こんな気持ちをひとりの女に抱いたのは初めてだ。
「…こんな風に女を想うのは初めてだよ」
目覚めたら、その眼差しで…この高鳴る鼓動を射抜いて貰いたいね。
そうすれば、もう少しお前の傍にいられるだろう?
「誰よりも安心出来る相手として…ね」
花のような唇へ口づける代わりに、前髪をかきあげ…額にそっと口づける。
「…おやすみ、オレの…オレだけの姫君」
2005web拍手、名前変換入れて手を加えて再録。
遙か3朱雀にいえることなのですが、本気の相手には手が出せない…というか、出し難い…というのが私の中にあるようです(今更!?)
軽く…とかは出来るのですが、本気の想いは中々伝えられない…という雰囲気が好きです。
基本、web拍手の話は短く甘く…という風にしてるので、甘めですね(苦笑)
ちなみに、ヒノエが一緒に寝てるのは牽制です。
他の人が手を出せないようにってことで。
自分が大変でも、手を出されちゃ大変だから…どこの誰とは言わないけど(笑)