「あ・・・弁慶こっち来ちゃ駄目っ!!」
「いい香りがすると思ったらさんだったんですか。」
館へ入った瞬間から、ここにはないはずの花の香りが漂っていた。
てっきり誰かが持ち込んだ物だと思っていたんですが、まさか君自身が花になっているとは思いませんでした。
「これは・・・金木犀ですね。」
「当たりです・・・って、来ちゃ駄目ですってば!」
両手で僕が近づくのを防ごうとする姿を見て歩みを止める。
「さん?」
「こっちに来ると弁慶まで甘い匂いうつっちゃいます!すぐお風呂に入って落として来ますから!!」
全く、これだから女性の扱いに慣れていない海の男は困りますね。大方水軍の男達が、この甘い花の香りに慣れていなくて顔をしかめたんでしょう。彼女自身が美しい花だというのに、その花に香りがついたのを何故素直に喜べないんですかね。
「僕は構いませんよ。」
「でも・・・」
もう少し手を伸ばせば、美しい花を手に入れる事が出来る。
それをただ見ているだけなんて、僕には出来そうにない。
花は愛でるだけではなく、この手にとってこそ、その美しさを堪能出来るものなんです。
大きく一歩を踏み出し、驚いているさんの手を掴んで引き寄せる。
「あぁ、いい香りですね。」
「あ〜・・・」
「ふふ、そんな顔しないで下さい。僕は嬉しいんですから。」
「嬉しい?」
「えぇそうです。同じ香りを共有するという事は、それだけ距離が縮まっているという事ですから。」
深読みすると ――― 深い関係になっている ――― とも言えますけどね。
手を取ったまま、手近の開いている部屋を見つけるとそのままさんを連れて部屋に入る。
「???」
開いていた障子を閉めて、改めて甘い香りのさんをそっと腕に抱き寄せる。
「君の香りを、僕にうつしてください。」
「・・・べ、弁慶?」
「そうすれば少し薄まるかもしれませんよ。」
この状況で薄まる、なんて事は間違ってもない。
逆にこんな締め切った部屋に居れば、薄まる所か余計衣服に匂いが染み付いて暫くは取れないだろう。
それでも僕は・・・かまわない。
「君と同じ香りを身に纏える僕はとても幸せです・・・だから、全て僕にうつして下さい。」
香りがしっかりうつったら、二人でヒノエの所へ行きましょうね。
勿論この場であった事は、僕とだけの・・・秘密です。
どうしよう・・・お題のコメントを書くため読み直すたびに、ときめく馬鹿な人がここにいます(笑)
好きなんですよ、本当に、こーいう弁慶が!(笑)
寧ろ今の自分に一番必要なのは薬師じゃなかろうか?いや、それとも陰陽師?←煩悩を祓わせる?
お散歩している最中、金木犀の中を通ったヒロインが館に帰った時、多分水軍の皆は驚いたんでしょうね。
普段女神だ天女だと思っていた女性が花の香りと共に帰ってきたものだから、実は花の化身だったのか!とか思ったんでしょう。
だから嫌な顔はしてないんですよ。寧ろ・・・動揺?(笑)
それを勘違いしたヒロインはヒノエが帰る前にお風呂に入ろうとしたわけですが、運良く(あれ?)弁慶に見つかりました。
あ、ちなみに部屋にこもっても何もしてませんからね。
寧ろ何もしてないけど、したような微妙な会話をヒノエに弁慶が飄々とする・・・ってのがツボなんです。
ヒノエ・・・大慌てだろうなぁ〜♪←楽しい
笑顔で叔父上が「とても可愛らしい姿を見せてくれましたよ」とか言ったら更に大慌てだろうなぁ〜♪
ま、実際はお散歩の話を楽しそうにする姿を見ての事だと思いますけどね。
・・・何故だろう、弁慶お題の話してると手が止まらない(笑)