「ヒノエ〜っ!」
まさか親父と二人でオレを罠に落としいれようとしていたなんてね。
「ダメだよ、姫君。まだ動いちゃ・・・」
「でも・・・」
「さっきの勢いはどうしたんだい?」
「あれは!!」
分かってるって、あれは親父にやらされたんだろ?
全く、が素直だからって親父も変な事やらせるなよな。
「ほら、あとは紅を引くだけだから少し静かにしてなよ。」
「紅?」
「そのままでも十分魅力的な唇だけどね。」
自分の唇に指を当てて、姫君の唇にその指を押し当てる。
たったそれだけの事で、の頬はあっという間に朱に染まる。
「・・・いいね、姫君が自分で頬を色付かせるってのも。」
「だってヒノエが・・・」
「しぃ〜・・・いい子だから、少しだけ動くんじゃないよ?」
「・・・」
ふふ、そんな風に可愛らしい目で睨んでもダメだよ。
ただ挑発しているようにしか見えないからね。
小指につけた紅をの小さな唇にのせ、そっと色をのせる。
「へぇ、紅ひとつでこんなに雰囲気が変わるとは思わなかったね。」
「・・・?」
「今のには衣を通して光り輝いたっていう伝説の美女、衣通姫すら敵わないだろうね。」
「比べ物にならないよっ!そんな凄い人と・・・」
「そうだね、比べる間もなくお前の方が綺麗だよ。」
「!?」
「見知らぬ美女よりも、オレの目の前で一喜一憂する美女の方が数倍・・・いや数十倍いいね。」
「だ、だから美女なんて・・・」
「あれ?姫君以外、オレの前に女がいるかい?」
ねぇ、これがオレの復讐だって気づいているかい?
オレはね、がイタズラを仕掛けた事は怒ってないんだ。
ただオレがいない間、親父と一緒にいたという事実が気に入らないんだよ。
「い、いない・・・」
「お前以上に美しい女は、この熊野・・・いや、国中探しても見つからないかもしれないね。」
「ヒノエ〜・・・」
正面から容姿を褒められる事に慣れていないお前には、これが一番の復讐だろう?
えーっと、湛快さんは可愛い可愛い息子をからかうのが大好きです。
(当サイトの湛快さんは、というのが正しいかな?)
ヒノエがいない間に、ヒロインを上手い事手なずけてイタズラをしようとしましたが失敗しました。
失敗の原因は、嘘のつけないヒロインの所為です(笑)
・・・ま、ヒノエに正面から尋ねられたら嘘なんてつけませんよね(小声)
復讐、になってるかどうか分かりませんが、ヒノエ的には復讐になってるみたいです。
それにしても、どうしてこんなに次から次へと甘い台詞が浮かぶのか、最近自分の脳みその中が覗いてみたくて仕方がありません。
・・・いえ、大好きですけどね。こんな話ばっかり考えられる脳みそ(苦笑)