「・・・愛してるよ。」

「私もですわ、ヒノエ様。」

横たわる女を抱きながら、そう耳元に囁いてやる。
今、このひと時だけ・・・誰よりもお前を愛してるよ。



けれど、ひとたびコトが済めば、それで終わり。



「次はいつお会いできますの?」

「さて、いつかな。」

「・・・寂しゅうございます。」



――― お前との恋は、夢みたいなモノさ



「そんな風にお前に言って貰える男は幸せ者だろうね。」

「貴方様以外にそんな事言いません!」

「へぇ〜・・・じゃぁ感謝しないといけないね。」

「・・・何にですか?」

「勿論、昨夜甘い声を聞かせてくれた可憐なその唇に・・・ね。」

「ヒノエ様・・・」

「じゃぁね姫君。昨夜は楽しかったよ。」



――― 身体を重ねていたあの瞬間、オレはお前に惚れてたよ















どんな女だって、愛する事は出来る。
けれどオレにとって一番大切なのは、この熊野だ。
それを引き換えに出来る程の女に出会う事なんてないと思っていた。
だからその場限りの快楽を求めるよう、様々な姫君の元へ通い甘い言葉で女を酔わせてこの手に抱いた。



――― 恋はひとつじゃない



それがオレにとっての男女の恋だと思っていたのさ・・・お前と出会うまでは、ね。





「ヒノエ!」

館からオレの姿を見つけるなり、一目散に走ってくる姫君の為に両手を広げる。
躊躇う事なく腕に飛び込むの身体を抱きしめると、海では感じる事の出来なかった花の香りに包み込まれる。

「・・・ただいま、姫君。」

「お帰りなさい、ヒノエ。」

躊躇いつつもオレの背に両手を回してくる小さな手が愛おしい。
今まで感じた事のない感情を胸に抱きつつも、姫君の頬に唇を落とす。

「いつもながら嬉しい歓迎の仕方だね。」

「ヒノエ〜っ!」

困った顔をしながら唇を寄せた頬を手で押さえ、オレを見上げる姫君。
がいるなら・・・と、物事を量りにかけるようになったのは何時からだろう。
このオレがそんな事を考えるなんてありえなかったのに、姫君の側にいるとつい考えちまう。

「今度はお前の方から、お帰りの口付けがあると嬉しいね。」

「な、ないよ!」

「ふふ、残念。でもいずれ、して貰おうかな?」

「ヒノエ〜・・・」





そろそろ、自分を誤魔化すのも限界かもしれないね。

恋はひとつじゃない・・・って事に。





BACK



はい、すみません。
自分でも書いててよく分からなくなっちゃったんで、フォローさせて下さい(笑)
まず最初に、ヒロインと出会うまで、ヒノエは「恋はひとつじゃない」と思ってます。
なぜかと言うと、数多の女性の相手をしているヒノエは、その時々で相手をキチンと思って愛しています。
ただ、無茶苦茶短期間ですけどね(笑)一緒にいる間、だけ。
だからもし夜を共にしても、朝になって彼女の家を出たらヒノエの心を一番占めているのは熊野なんです。
そんなヒノエだけど、ヒロインと出会ってからは・・・そう思えなくなってきました。
何度「恋はひとつじゃない」と言い聞かせても、いつしかヒロインと熊野の出来事を量りにかけ始めちゃったんですね。
だから「あーあ、もう誤魔化せねぇなぁ」と思って最後呟いてるんです。
・・・フォロー入れても、まだ何となく眉間に皺寄っちゃう内容ですね(苦笑)
でも一応これと7:恋愛方程式が朱雀の恋愛感になるんでしょうか?←聞くなよっ(笑)