「それ以上、言っちゃいけない。わかるだろ?」


金やんに屋上で言われて、数ヶ月…

言っちゃいけない、と言われながらも、つい

「金やん大好き〜!」とか、叫んじゃうんだけど。


だって、ちょっと照れたように、でも、嬉しそうに頭をぽんぽんってして、

「ありがとさん」

って言ってくれる金やんの声と表情が、とっても大好きなんだもん。




でも…



毎日、音楽準備室に通い詰めて。

「おう、来たのか」

優しく迎えてくれる金やんがすごく、嬉しくて大好き。


あったかい笑顔も、そしてぽんぽんって頭を撫でてくれる大きな手。

それだけでも、金やんがあたしを大事に想ってくれてるのは伝わってくる。



だけど、やっぱり言葉にして欲しいって思うのは我が儘、かなあ…



いや、我が儘なんだろうけど。


最初にそれでもいいって覚悟したはずなのに、金やんをどんどん好きになるごとに、どんどん欲張りになっちゃうよ…


あんまり我が儘言ったら…嫌われちゃう?



「やだ…よぉ…」


実際に金やんに何か言われたわけじゃないのに。
ちょっと、嫌われるかも、って考えただけで、涙が出そうになる。


どれだけ、あたし金やんのこと好きなんだろう…

きっと、すっごく、すっっっごくなんだ。だから…



「我慢、しなきゃ、ね…」


溢れそうになる涙をなんとか堪えて、自分に言い聞かせるように呟く。





「何を?」

ふいに背後から声がして、あたしは文字通り飛び上がらんばかりに驚いた。


「か、か、か、か、か、かな…や…」

「なんでそんなに驚くんだ?俺がここにいても、おかしくなかろうが」



それは、金やんが正しい。
ここは音楽準備室で、金やんがここにいても、なんにも、おかしくない。




おかしいのはむしろ…あたし?




いや、疑問系にするまでもなく、おかしいのは、あたしだけど、金やんのことを考えてるときに、
本人に声をかけられて、なんでもない顔ができるほど、修行積んでないから!






「…ほんっとうにお前さん、見ていて飽きないよな」


からかってるような言葉なのに、優しくて。
そして、あったかい手で、頭をぽんぽんってされる。

嬉しいはずなのに、どうして今日は、辛くなってくるんだろう。



「お、おい、どうした?」


頭の上から、慌てた声が聞こえる。

金やんが慌てるなんて珍しい…

ぼんやり顔をあげると、本当に焦った顔をした金やんと目が合う。


「…お前さん、自分が泣いてることに気付いてないのか?」

「ほえ?」


ため息と一緒に吐き出されたような声を聞いて、慌てて顔に手をやってみると、確かに濡れてる。


「あ、あれ…どうして…」

「いや、それはこっちが聞きたいんだがな」


あたしの頭に手を置いたまま、金やんが顔をのぞき込んでくる。

あ〜やっぱり好きだな〜

金やん困らせてるのに、そんなことを考えてしまう。


「な、なんでも…な…」


一生懸命手で涙を拭っているのに、早く止まれ、涙!


「なんでもないってわけがないだろうが。ん?」


優しい声と手が、ますます涙腺を刺激していくようで、涙が止まらない。


「か、金やんが…」

「俺?」

「金やんが好きだな〜って思ったら、なんか…」



止まらない涙に、頭が混乱してきて、言わなくていいことを口走ってしまった。
金やんは驚いた顔で、あたしを見てる。


だって、本当にそう思ったら涙が出たんだもん…


さっきの嫌われるかも…って想いがまた頭によみがえって、どうしていいかわからなくなってくる。

もう、足にも力が入らなくなってきて、しゃがみ込みそうになったとき、金やんがあたしの頭をぽんぽんってした。


あたしが落ち着くいつものおまじない。


さっきもそうだったけど、今日はそれでも涙は止まらない。
だけど、なんとか、あたしは顔をあげて、金やんを見上げた。

あたしの頭をぽんぽんってしながら、じっとこっちを見てる金やん。


「ちゃんと聞いてろよ」


何を?と思う間もなく、金やんがあたしの耳元に顔を寄せてきて…






「好きだ…愛してる」






声が出ない。
動けない。

それなのに、涙だけ、どんどん流れてくる。


「さみしい想い、させちまったようだな、悪かった」


抱き寄せられて、また耳元に金やんの声。




「せん、せ…」

「おいおい、今このときに先生なんて言ってくれるなよ」

「ご、ごめんなさ…」

「いや、それも俺のせいか…」


もう、言葉が出なくて、それでも金やんが悪いんじゃないとぶんぶん首を横に振る。





「俺とお前さんには、秘密がある」


きっぱり言われて、頷くこともできない。


「でないと、傍にいられない」

「そ、傍にいたい!」


それが、何よりの望みなの。
我が儘言わない、言わないから…

金やんがこれから何を言うのかわからなくて、不安に胸が潰れそうになる。


「…俺が、お前さんを傍におきたいばっかりに、随分辛い思いをさせたようだな…」


抱き寄せられたまま、あやすように、頭と背中をぽんぽんされる。


「今も、俺はお前さんを離してやれない。
だから、言葉にしないほうがいいと思っていた」


そっと、金やんの身体が離れて、顔をのぞき込まれる。


「それで、お前さんにこんな顔させてちゃ、どうしようもないよな」

「そ、そんなこ…」

「だが、今、こうして二人だけの時なら…」


また、今度はさっきよりも、強く抱きしめられる。





「好きだよ…」





ああ、やっぱり聞きたかったんだ。
こんなに涙が溢れるほど、あたし、金やんにこの言葉を言って欲しかったんだ。


そう思うくらいに、涙が流れてくる。


そんなに何度もじゃなくていい。

でも、あまりに好きって気持ちが大きすぎて、あたしが不安になったときは。

その時は、どうか…







あたしだけに囁いて…





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【ホームワークが終わらない】にご参加下さりありがとうございました!
犀さん、カッコイイ金やんをありがとうございましたーっ♪

立場上、コルダでもコルダ2でもアンコールでも…金やんはわかりやすい言葉は口にしません。
それが公式着ボイスで初めて、音にしてくれた時の喜びったらどう表現していいかわかりませんっ!
それを見事に形にして下さってありがとうございます!
うんっ!まさにこんな感じっ!!(笑)
好きだから聞きたいけど、それが我侭で嫌われてしまったらなんて不安もあると…言えない。
だからこそ、それを汲み取ってそっと囁いてくれる金やんに拍手を送りたいくらいです!

こちら、喜んで懐に収めさせていただきます。
お忙しい中、本当にありがとうございました!!