「はぁ〜…終わっ、た」

出来上がったばかりの書類を添付してメールを送ってから、そのまま机にばったりと倒れる。
2月はバレンタインっていう女の子のときめきイベントが控えてるから、それに向けての準備で忙しいってのに、それなのに!なんだって社の方の書類まで俺が作んなきゃいけないんだっての!
はぁ…スケジュール組んだヤツ、ぶっ殺す。



…って、俺だよ、組んだの。



あ〜そうだ…彼女が温泉に行きたいってテレビを見て言ってたから、じゃあ行こうかって話になって〜それから、宿の予約を取って…その日をカレンダーに花丸したりしてる彼女を見て、その日に会社で会議があるの思い出して。

「3回分の書類作成と引き換えに、アイツに会議出るの頼んだオレが悪いんじゃ〜ん」

「そんな無理したんですか?」

「んー無理っていうか…って、えぇ!?」



なんで君が知ってるの?!



「結城さん、疲れてると独り言全部口に出しますよね」

「あらやだ、そーなの?」

「はい」

「うっわ、それじゃあ、ちゃんと温泉であーんな事とかそーんな事したいとかまで言ってた?」

「そ、そんなのは言ってません!」

「あっはー、真っ赤になっちゃって、かーわい〜♪何想像した?」

「し、知りませんっ!!」

真っ赤になって部屋を出て行こうとしたちゃんだけど、何かを思い出したように踵を返して戻ってきた。

「本当に、旅行…大丈夫、なんですか?」

「うん。モチロン」

「無理、させちゃってますよね」

「このぐらいなんてことないよ。君が喜んでくれるなら、オレ、もっともっと頑張るよ」

「…」

申し訳なさそうな顔をして、言葉を紡ごうとした彼女の唇に指を押し当ててその先の言葉を止める。

「ごめんなさい、なんて聞きたくないよ」

「…」

「俺が先走って予約して、君にも有給取らせたんだから、君に非はひとつもない」

「でも…」

「ま、オレが君の浴衣姿見たさに、予定も把握せず宿を取ったのが悪いんだけどねぇ〜」

「そ、それぐらいいくらでも」

「ホント?」

「はい」

「それじゃあ、お代官様ごっこもしてくれる?」

「…ハイ?」

「ほらー、やっぱり夢じゃない?こー帯を持ってさ、あーれーお代官様〜、よいではないかよいではない…いてっ!」

ごんっ、といういい音がしたと思うと、頭部に微かな痛み。
でもって目の前には真っ赤になって、怒った顔のちゃん。

「そんな馬鹿な事するんですか!?」

「和室に浴衣、ときたらやっぱそれはお約束でしょう」

「やりません!」

「やっちゃうよ?」

「ダメですっ!」

「やりましょう」

「〜〜〜結城さんの馬鹿ーっ!!」

大きな馬鹿と共に、彼女が慌しく姿を消した。

「あっはー、もー本当に可愛いんだから」

くすくす笑いながら、再びパソコンに向かい戻ってきたメールの内容を確認する。

「はいはい、いっくらでもお仕事しますよ」

お花屋さんの仕事も
友人とはじめた会社の事業も
どっちも、大切

けど、ま、一番大切なのは…

「オレの腕の中で咲く、一輪の花だけなんだけどね…」





――― つまり、君が一番大切ってこと





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【ホームワークが終わらない】に自主的参加です。
久し振りですよね、はい、久し振りです。
素敵なお花屋さんの登場ですが、皆様覚えてますか〜?(笑)

おやすみと引き換えに書類作成しちゃったりする結城さん大好きです。
相変わらず、自分の欲望に素直な彼も大好きです(笑)
だって、結城さんだったら浴衣で絶対言いそうじゃん!
お代官様ごっこしようって!←あなたの脳がおかしい(苦笑)
でも、最後に甘くぽつりと囁くってのが彼のポイント。
是非是非、和彦さんボイスで台詞を読んで下さいませ!

主催者として、多少頑張ってみました。
あといくつ頑張っているかチェックしてみるのも一驚です?