好きだよ…

「え…?」

こんな風に、ひとりの姫君に熱い想いを抱くなんて思わなかった。
けれど、今まで自分でも聞いた事がないほどの弱々しく擦れる声が、オレの想いの深さを表している。

「お前が、好きだよ…」

「ヒノ…エ……」

抱きしめていた腕を緩めて、慈しむよう彼女の頬に手を添え見つめる。

「お前を、愛してる」

「…」

大きな瞳が、ゆっくり揺らぐ。
瞬きすれば今にも零れそうな雫が目元に溜まり、そこに反射する月の光が更に美しさを増加させている。

「…好きだ」

「っっ…」

零れ落ちた涙を、そっと唇で拭いながら、泣き出したの体をそっと抱きしめる。



微かに震える細い肩
ゆっくり背に回される、手

あぁ、なんて幸せな時だろう…



けれど、彼女の胸には…アイツが、いる。

でも、これだけは…譲れない。
抱きしめたまま、耳元の髪を払い、そこへ唇を寄せる。

「アイツのこと…忘れなくて良い…忘れなくて良いから…オレを見て、オレを…」



――― 好きになって…



なんて馬鹿な事を言ってるんだ、と、自分の中の誰かが笑う。
そんな事を言わずとも、今までのように抱いてしまえばいい。
床の中で、何も考えられなくなった所に、愛の言葉を与えて落としてしまえ。

そんな想いを押しつぶして無くすかのように、ぎゅっとを抱きしめる。

「好きだ…お前が」

「…ん」

が、好きだよ…」

うん…

小さな頷きと共に、の両手がしっかりオレの背に回された。
そして思わぬ言葉を、聞く。

「弁慶の言うとおりだった…」

「は?」
「あ」

思わず顔を上げたオレの視界に、しまった、という顔をしたがいた。

「…なんだって?」

「あの…えと…」

「弁慶が、どうしたって?」

「う……」

「さぁ、全部吐いて貰おうか…」

























「あっのクソ叔父!!」

「お、落ち着いてヒノエっ!」

弁慶と別れて意気消沈しているを慰めている内に、自分の気持ちを自覚したオレが言う台詞でもねぇが…恋仲ってのも、別れたってのもアイツの策略かっ!!!

「どこまでも馬鹿にしやがって…」

苛々と爪を噛んで、どうしてやろうかと思考をめぐらせていると、不安げにそっとオレの手に触れるがいた。

「弁慶は悪くないの。あたしが…」

が?」

「あたしが、相談したから」

恥ずかしそうに、けれど、言わねばならぬ事がある…という思いを込めた空気に、オレの中の苛立ちが分散する。

「…なんて相談したんだい」

「ヒノエは、女の人に慣れてるから…どうすれば、あの…」

「どうすれば?」

………かなって

ぽつりと呟かれた言葉に、思わず眩暈がする。



子供みたいな思いを抱いた姫君は面倒だ、とか
恥らう姫君よりも、大胆な姫君の方がいいね、とか

そんな事を言った過去の自分を切り捨てたい気持ちになる。




その後もたどたどしく、どうすればオレが自分の方を見てくれるか、意識してくれるかを考えていたと伝えるの姿が、あまりにも愛しくて…自然と口元が緩む。



――― ヤバい…



アイツへの怒りなんて、とっくに消えちまった。
それらをひっくるめて、今のの姿があるって言うなら…アイツの嫌味な言葉も姿も策略も、全部まとめて引き受けてやる。

「だから、つまりっ……〜〜あたしもずっとヒノエが好きだったの!」

今までの告白に加え、上目遣いでこんな風に言われて…落ちないわけがない。
口元を覆っていた手をそのままの後頭部へ回して、顔を近づける。

「んっ」

口付けに驚いているに、そのまま体重をかけて、そっと床へ押し倒す。

「…オレはが好きだよ」

「あ、あ、あたしも…ヒノエ、好き」

「…ふふ、嬉しいね」

「うん!」

本当に、本当に嬉しそうに微笑む姿を見て、理性の箍が弾け飛ぶ。

「…愛しているよ。」



お前の話を聞く前に言った事は、本当だよ。

アイツのこと…忘れなくて良い…忘れなくて良いから…
オレを、好きになって…


無理に想いを消したり、忘れたりする必要なんてないんだ。
その想いを抱えているお前が、好きだと思ったから…
それら全部を、オレに預けて欲しいって…本気で思ったんだよ。

けど、今は…ずっとオレを想い続けていてくれたっていう、お前の気持ちごと…預けて欲しいね。
それらを全部受け止めた上で、お前を今まで以上に…愛するから、さ。





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【ホームワークが終わらない】に自主的参加です。
IN熊野のヒノエでございます。
当サイトというか、私が書くヒノエの基本とも言うべきものです。
ヒノエの基本=砂糖増量(笑)

えーわかりにくいだろうと思うので、補足します!
ヒノエはヒロインと弁慶が恋仲だと思ってました。
ほんで、弁慶に振られたところを暫く見ていました…が、何かの拍子に…まぁ多分他愛無い話をしていて、何かのきっかけでこんな感じになったんでしょう(説明じゃねぇ(苦笑))
ちょっと泣きそうな、でもって少し弱々しいヒノエが書きたかったんです。
大好きな台詞がひとつ。
オレを…好きになって…
↑これを、是非とも直ちゃんに言って欲しいっ!!
弱々しく、擦れそうな声だけど、想いを込めて熱い声でっっ!!
見事そのように音声変換出来た人は、脳内に直ちゃんがいっぱいの人です。
是非、これからもその素敵脳?を維持してください(笑)

主催者として、多少頑張ってみました。
あといくつ頑張っているかチェックしてみるのも一驚です?