あの時から…
俺の手に触れる物は、全て…砂のようだった
どんなに握り締めても
どんなに掴んでも…
全ては、指の間からすり抜け零れていく
それを、無理に留めようとも
また、掴むことも…
俺は、諦めていた
もう、そんな情熱などない…
そう…思っていた ―――
「金やん!」
ふっと指先に触れた温もりに気付き、沈みかけていた意識がぼんやり浮かび上がる。
「…」
息を弾ませながら屈託のない笑顔を向ける女を中心に、俺の夜は…静かに明けはじめた。
「よぉ、」
「こんなところで会えるなんて思わなかった!」
ゆっくり昇り始める朝日が、俺の心を照らし出す。
「今日ここでね、お姉ちゃんの知り合いが小さなコンサートを開くの!」
「ほぉ…」
優しく、温かな光りが
俺の心の影や、目をそらしていたことも…
全てを照らし、包み込む
「それでお手伝いに来たんだけど…あっ」
興奮しながら話していたが、はっと我に返ったように、掴んでいた手を引っ込めた。
「ご、ごめんなさい…」
「いや、構わんさ」
「え…?」
――― けれど、今…
自ら手を伸ばして、そっと小さな…温かい手を握る。
「…こんなとこまで来る、学院のヤツなんざいないだろう」
「で、でも…」
――― 俺は…離したくない、と…思っている。
「イヤ、か?」
「ううん!そっ、そんなことっ!!」
卒業するまで、耐えるつもりだった。
コイツが生徒じゃなくなってから…と。
だが、一度この手に触れた時から…離したくない、と願ってしまった。
「んじゃ、たまにはいいだろ」
「…うんっ!!」
俺を見つけた時以上の、眩しい笑顔を見て…僅かに目を細める。
今、俺のこの手にあるものは
愛しい女の、優しい手…
俺の心に情熱と、音楽を取り戻させてくれた…
何よりも、大切な…
「…」
「やだーっ!」
「あのな…」
「たまにはいいって言ったじゃんっ!」
「…だからって、お前さん」
お前さんが受付担当してる間ぐらい、手…離せっての…
隣にいる、お前の親戚の姉さんが困っとるじゃないか。
「すいません…」
「いや、こちらこそ…」
「えへへ〜♪」
ったく、そんな顔見せられちゃ振り払うことも出来んだろうが。
【ホームワークが終わらない】に自主的参加です。
風見の愛情を時折凄い勢いで受けている金やん(笑)
ちなみに日記の小話で一時登場致しました。
ポツリと呟く心情がお気に入りの作品。
もしかしたらコルダ話の中で一番好きかもしれない。
アンコールクリアした時に浮かんだ言葉を並べて作った話、でもあります。
そういう風に浮かぶ時には、ぽろっ、と浮かぶので、そういう時に出来た話は大抵お気に入り。
一応教師と生徒って立場なので、手なんか早々繋げません。
でも、離れた場所だから、誰もいないから…そして、少しだけ触れたかったから…というので、今回は手を繋いでます。
ま、そーいう事になったら離したくないですよね、離しませんよね(どこの子供だ)
あ、ちなみに親戚の姉さんってのは、裏設定としてある、ヒロインのフルートの先生でもあります。
主催者として、多少頑張ってみました。
あといくつ頑張っているかチェックしてみるのも一驚です?