「先生急患でース。」

「いいって言ってるだろ、くぼちゃん!!」

「あ〜ら久保田君vどうしたの?」

「時任にいつもの、下さい。」

「もう・・・しょうがないわねぇ。」

そう言いながら椅子に座っている時任をジロリとひと睨みし、ヒールの音をカツカツと響かせながら戸棚へ向うと、その中から残り少ない胃薬を取り出した。

「全く、アンタの為に置いてあるんじゃないのよ?」

「俺だって好き好んでこんなオカマ校医のいる保健室なんて・・・」

時任が全て言い切る前に水の入ったコップが勢い良く目の前に置かれ、周囲に散った水とコップの残量がその怒りの強さを表していた。

「こんなキレーな先生に見て貰えて何が不満だって言うのよ?」

「綺麗っててめぇ男じゃねぇか!!」

「醜いヤローよりはマシでしょ!!」

「まぁまぁ二人とも・・・ところで先生?」

「あらvなぁーに久保田君v」

「あー!!くぼちゃんに無意味に抱きつくんじゃねぇよ!!」

「あのコ、先生の知り合い?」

「「え?」」

今迄久保田を間に挟んで口喧嘩をしていた二人が同時に窓辺に振り向くと、にっこり微笑みながら手を振るセーラー服を着た女子高生がいた。

「誰?」

「さぁ?」

久保田と時任が二人で首を捻る中、五十嵐は久保田の首に巻きつけていた腕を解くと驚きの声を上げて窓辺へと近づいて行った。

「やだ、どうしたの?」

「お姉ちゃんの忘れ物届けに来たの。」

「お姉ちゃん?お兄ちゃんの間違いじゃ・・・」

ダン!と言う音と共に窓辺からフタの外された注射器が飛んできて、時任の顔のすぐ側の壁に突き刺さった。
もし体のどこかに刺さったらどうするつもりだったのか・・・。

「ま、様子を見ましょうか。」

「・・・だな。」










「はい、お弁当。」

「あら、ありがとう・・・でもコレだけ?」

自分より頭ひとつ以上小さい妹の声を良く聞く為に窓辺から身を乗り出して顔を近づける。

「お姉ちゃんご自慢の二人に会ってみたくて・・・あそこにいる人達がそう?」

壁際に立ってじーっと此方を眺めている二人を少女は指差した。

「えぇそうよv紹介してあげるわね。久保田君ちょっとこっちに来てくれる?ついでに時任君も。」

「何で俺がついでなんだよ!」

「まぁまぁ」

こめかみに怒りマークの浮かんだ時任を宥めるように肩を叩きながら二人は窓辺へと近づいた。

「この子、アタシの妹の。家で二人の話をしてたせいで興味を持ったみたいなのよねぇ。」

「初めまして、五十嵐です。」

「初めまして、俺が執行部のラブリー久保田・・・で、こっちが・・・」

「ビューティー時任だ・・・って似てねぇ兄妹だなぁ。」

時任は身を乗り出して五十嵐の妹と言われた少女の顔をじっと覗きこんだ。

「やぁねーそっくりじゃない。この整った顔立ちとか美胸とか・・・」

「偽乳のクセして・・・」

「何ですって!!」

五十嵐と時任が今にも掴み合いになりそうな中、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
反射的にその場にいた全員がその声の方向を振り向いた。
まるで鈴が転がるように笑うと言うのはまさにこの事だろう。
普段他人に対してそう興味を持たない時任や久保田の二人ですら一瞬その笑みに目を奪われてしまった。

「ご、ごめんなさい。お姉ちゃんとの話し方が・・・その・・・とても楽しくて・・・」

そう言うとはスカートからハンカチを取り出して、笑いすぎて溢れてきた涙を拭った。
そんなを良く見ようと窓辺から乗り出していた時任の頭にのしかかる様に久保田が顔を出して話しかけた。

「君、随分笑い上戸みたいだね。」

「良く言われます。あっヤダ!もうこんな時間、昼休み終わっちゃう!!」

腕時計で時間を確認すると足元に置いてあった荷物を持って慌ててその場を立ち去ろうとする。

「それじゃぁお姉ちゃん!バイバーイ!」

「あ、!今日の夕飯何がイイの?」

「え?・・・んー、この間食べたアサリのスパゲティ、また食べたい!!」

「了解、気をつけて行くのよ?」

「はーい!それじゃぁ久保田くん、時任くん姉をお願いします。」

「こちらこそ、ドーゾよろしく。」

珍しく穏やかな笑みを浮かべた久保田がひらひらと手を振るとそれを見たもにっこり微笑んで軽く手を振った。
その後は本当に慌てた様子で裏門に向けて走って行った。
姿が見えなくなると久保田は口元へ手を持っていきポツリと呟いた。

「さーすが先生の妹さんだコト。」

「うふふ〜可愛いでしょvアタシの最高傑作よ♪」

「あんな女もいるんだな。やけに落ち着いてて大人っぽい・・・」

時任は誰もいない裏門をじっと見つめ、その目は何処か遠くを見ているようだ。
そんな時任の言葉を五十嵐があっけらかんと受け止め、勝手に答えた。

「あら、落ち着いてて当たり前でしょ?あのコ、もう立派な社会人よ?」

一瞬の間の後、学校全体を揺るがすような時任の驚愕の声が響いた。

「えーーっ!!」

「・・・セーラー服着てたよね?」

「あぁアレね。趣味よ趣味。あの子の通ってる会社って制服が無くて私服だから・・・。」

ケロッとした顔でお茶を飲みながら話す五十嵐を時任は口を開けたまま見つめ、その隣にいた久保田はやれやれといった表情で頭をかいた。
その後何かに気付いたように時任が五十嵐の机に両手をついて真剣な眼差しで問いかけた。

「まさか!アンタと同じであの子も男だとか言うんじゃねぇだろうな!」

「しっつれーしちゃうわね。あの子は正真正銘本物のオンナよ。」

あっそ、そりゃ良かった。

ポツリと呟いた久保田の一言を聞いて五十嵐は久保田の首に再び腕を絡めて体を寄せた。

「他の男にはやらないけど久保田君にならあのコ、あげてもいいわよ?そしたらアタシの事『おネェさんv』って呼んでねvvv」

「・・・お兄さんの間違いだろ。」

「時任ぉ?次薬飲む時・・・永遠に覚めない薬、飲ませて欲しいか?あぁ?」

怒りがMAXに到達すると保険医五十嵐は綺麗な外見とは裏腹に態度は男らしい男へと戻る。
再び時任と五十嵐が口喧嘩を始め、久保田はそれに巻き込まれないよう先程までがいた窓辺へ向うと胸ポケットからタバコを取り出し火をつけた。


「五十嵐ちゃん・・・ね。」


タバコの煙を外へ向かって吐き出すと、青い空気に溶け込みながらゆっくりゆっくりと上に上って行った。

「・・・やれやれ退屈しなそうだね。」

のんびり窓辺にもたれて外に咲いているサクラを眺めながらタバコを吹かす久保田の後ろでは、鬼と化した五十嵐が時任との戦場の場を更に拡大させていた。










五十嵐、私立荒磯高等学校校医である五十嵐の妹。
一流企業のOLらしいが趣味は制服コスプレと言う変わった趣味の持ち主。
兄が姉に代わった事を違和感無く受け入れ、今の五十嵐を作り上げるのに協力したと言うどこかずれた女性。
今後執行部の面々にどんな影響を及ぼすのか、今はまだ定かではない・・・。





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人の意見にあっさり動かされる人間・・・それが私(笑)学園物・・・って楽しいですねぇ♪
でも、そうなるとどうしても会話が多くなってしまいちょっとかいてて戸惑い気味。
しかもヒロイン!あの五十嵐先生の妹だし(笑)つくづく兄妹設定に弱い人間だ・・・私って。
と言うかあの二人が興味持つ人間なんてそん所そこらの普通の一般人じゃ無理でしょう!と言う訳でインパクトあるヒロインにしようとしたら・・・こうなった(TT)
外見高校1年生位、でも実際は某企業に勤めるOLさん。好きな服は制服(笑)高校時代私服の学校に通っていたせいで妙に執着しているらしい。
会社に入れば制服があるかと思ったらそこも私服・・・それじゃあと言う事で会社では制服代わりに日替わりで色々な高校の制服を着用しているらしい。
無茶な設定、そしてお馬鹿な設定(笑)単発って事で許して〜っっ!!

私立荒磯高等学校生徒会執行部・・・最遊記で峰倉先生を知ってからこの作品を知り、例に洩れず久保ちゃんに落ちました(笑)
勢いはそんなに無いですけど、久保ちゃん好きですよvうん。
続編でも出ないかなと思いきや、W・Aが始まったのでもう出ないなと諦め中(TT)
CDも聞いたんですけど、久保ちゃんの声がイメージピッタリだったのに驚き!!「そうそう久保ちゃんってこんななの〜v」とのたうちました(笑)
気の抜けたような力の抜けたような話し方何だけど、何処かしっかりしてる!・・・ってわかんないって(笑)取り敢えず森川さんありがとー!って事で・・・。