「うわぁ…あっ!」
思いっきり転んだ所為で、抱えていた書類が勢い良く床に散らばった。
「あ〜あ…」
ばらばらと散らばる書類を見て、思わずため息が零れる。
急いで卯ノ花隊長に届けるよう言われたのに…
「よいしょ…」
本当に、どうしてぼくなんかが四番隊に所属できたんだろう。
そう考えながら、散らばった書類を手前から一枚一枚拾い集めていく。
「…でも、頑張らなきゃ」
そう呟きながら、手の甲に巻かれた包帯を眺める。
「あいたたた…」
「だ、大丈夫?」
「えぇ、まぁ…」
まさかこんな見通しのいい廊下で、勢い良く人にぶつかるとは思わなかった。
「本当にごめんなさいっ!よくお姉ちゃんにも言われるの。ちゃんと前を見なさいって」
「大丈夫です。ぼく、こうみえて結構丈夫ですから…」
「あ…手…」
「え?」
言われて自分の手に目を向ければ、転んだ時に擦ってしまったのか、微かに赤くなっている。
「これくらいなんてことありません」
「駄目!」
「え?」
胸元から取り出した真新しい包帯を、ぐるぐるとぼくの手に巻く。
「あ…あの…」
「ちょっとの怪我でもちゃんと治療しなきゃダメ!」
「はぁ」
「四番隊の人は、皆を助けるんでしょ!」
「…」
「助ける人が、怪我をそのままにしてちゃ駄目!」
なんてまっすぐ人の目を見る人なんだろう。
ぼくみたいに俯いたりせず、まっすぐ人の目を見て話す女の子。
だけど、決して押し付けがましくない。
寧ろ、温かな太陽の日差しに似て…心地よい。
「…はい、出来た!」
ぼぉっとしている間に手当てが終わったらしい…けど、これは…なんていうか…
「独創的な…巻き方、ですね」
「う゛…」
包帯を巻いてるのか、タオルを巻いてるのか…形状的には後者が正しい、かな。
「き、気持ちの問題だから!」
真っ赤になって立ち上がった彼女は、膝の埃を軽く払うと、不意にぼくの後ろへ視線を向けた。
「お姉ちゃん!」
「ちゃん…どうしたの、こんな所まで」
この声は…
「う、卯ノ花隊長!?」
慌てて立ち上がって頭を下げる。
「どうしました、山田七席。もしかして、この子が何か…?」
「いえ、あの…」
「花ちゃん怪我してたから、手当てしてあげたの」
「…まぁ、そうなの」
「うん!」
「は、はい!小さな怪我だったのですが、こうして包帯を…」
と言って、巻いてくれた手を前に出した瞬間…するりと包帯が落ちた。
――― ぼくの手を巻いたままの形で…
「にゃーーー!」
「あらあら、随分と緩かったようですね」
「あ、いえ、これは…」
「ごめんね、花ちゃん!次はもっと上手に巻くから!」
そう言って床に落ちた包帯の抜け殻を、再びぼくの手にはめた。
それが ――― 彼女との出会い。
「でもまさか、卯ノ花隊長の妹君だとは思わなかったな」
「呼んだ?」
「うわぁっ!!」
背後からの呼びかけに驚いて、拾い集めた書類が再び空を舞う。
「あ〜…」
「…ごめん、花ちゃん」
「気にしないで…ちゃん」
数年後、ぼくのいる第十四上級救護班の副班長になったのは、すっかり応急救護…とくに包帯の巻き方が上手くなった、ちゃんこと、卯ノ花だった。
時間のある時に見ている死神。
そして死神といえば、宮田ッチ演じる花ちゃん。
ということで、突発的に思いついた小話は何故か卯ノ花隊長の妹という、これまた特殊なところへ行きました(笑)
しょうがないじゃん!だって私、卯ノ花隊長好きなんだもん!
ついでに京楽隊長も好きです…なんだろう、この微妙な趣味は?(笑)
あ、あと夜一さんも好き♪