「やっほー、ちゃん」
「京楽隊長!?」
「凄い荷物だねぇ、手伝おっか?」
「い、いえっ!隊長にお手伝い頂くほどの事ではありませんから!」
「そっか…ちゃんは偉いね…」
にこにこ笑顔で両手が塞がったあたしの頭を撫でてくれる。
だらしない隊長って皆は言ってるけど、本当は京楽隊長が優しくて頼り甲斐のある人だって…
――― あたしは、知っている
「あー…そうだ」
「は、はい!」
「ちゃん、この後時間ある?」
「はい?」
「実は、美味しい肴を置いている場所を見つけてね」
京楽隊長がいう肴…とくれば、お酒のおつまみ。
でも、残念ながらあたしはお酒が飲めない…というより、身体が受け付けない…らしい。
以前、一度飲んだらすぐにお酒が回ってお姉ちゃんに「これからは付き合いの席とはいえ、お酒は控えるように」って笑顔で注意された。
「…それで、一緒にどうかな〜ってね」
折角京楽隊長が誘ってくれたけど、飲めないあたしと行っても…楽しくないよね。
「あの、嬉しいんですけど…あたし、お酒飲めませんし」
「あれ?ちゃん、ちゃんとボクの話聞いていた?」
「っ!!」
気づけば下手するとあたしの2倍くらい背の大きい隊長が、しゃがみ込んで笠のフチを持ち上げたまま、あたしの顔をじっと見ていた。
ちっ、近っ…近い!!
「ボクはお酒に誘ったんじゃなくて、お茶に誘ったんだよ」
「…へ?」
「いくらボクでも、卯ノ花隊長の妹君を酒場に連れて行く勇気はないよ。それに、これは…あの日のお返しだ」
「え、え?」
驚いて、頭の中が真っ白になる。
あの日のお返しって…な、なんだろう。
ぐるぐる色々な事が脳裏を駆け巡り、中々返事が出来ない。
そんなあたしの様子を見て、のんびり何かを待つようその場であぐらをかいた京楽隊長は、膝に頬杖をつきながら、空を見上げた。
「あの日も、いい天気だった」
「……」
「久し振りだよ。七緒ちゃん以外に、貰ったのは」
「…あっ!!」
「よーやく思い出した?」
織姫さんに教えられた、現世の行事…バレンタイン。
その日は、好きな人にチョコレートを贈るらしい。
好きな人…といわれ、最初に脳裏に浮かんだのは京楽隊長。
だからあたしは、先月この人に、チョコレートを贈った。
「ルキアちゃんがね。「貰いっぱなしでどうする!今日は、貰った相手へ誠意を込めて返事をする日だぞ」って…教えてくれてね」
「……」
「だから、キミを誘いに来たよ」
いつも、部屋で飲んでいる時のようにあぐらをかいたまま、手を差し出される。
「ボクと一緒に、茶屋に行こう」
「……」
「卯ノ花隊長の許可も、ちゃんと取ったさ。日が暮れるまでに、持ち場へ戻らせなさい…だって」
「…い、いいんですか?あたし、で?」
両手に抱えた荷物が…震える。
「うん、キミがいいんだよ」
「京楽隊長…」
「うわああっ」
「あ」
嬉しくて零れる涙を拭おうと、手を離した瞬間…全ての荷物が、京楽隊長に向かってなだれのように圧し掛かった。
「すっ、すみません!京楽隊長!!」
「いやいや、大丈夫…」
「本当に申し訳ありませんっ!!」
頭を下げながら崩れた荷を拾っていると、大きな手も一緒に手伝ってくれた。
「これもきっと、ボクも荷物を運ぶのを手伝って、キミが早く茶屋にいけるようにってことなんだよ」
「…隊長」
「さて…これはどこへ運ぶのかな?」
ひとりで持つには重かった荷物。
でも、二人で持てば…それは、驚くほどに軽くなった。
朽木隊長の所へ荷物を届けてから、その足で京楽隊長と茶屋へ向かう。
いつも隊長の隣を歩くのは伊勢副隊長だから、通りすがりの人は一瞬「あれ?」って顔をしていた。
でも、それでも…
いつか、この人の隣を歩いていても振り返られない人になりたい。
…そう、思った
ふと思い出してみる。
確か以前は…浮竹さんでWDネタを書いた覚えがある。
わからないなりに、遊びに来てる人の好きなもの〜ってので頑張った覚えが…(笑)
そんでもって今回は京楽隊長…あのルキア奪還の時、山じいと戦う京楽さんがカッコよくて!
…訂正、七緒ちゃんを山じいの前から遠くへ逃がした時の京楽さんがカッコ良かったんだ(笑)
という訳だから、いいじゃないか!でこぼこカップル万歳!
寧ろ卯ノ花隊長に京楽さんが睨まれてしまえばいい(笑)
それはそれで楽しい(え?)