「好きですっ!」
「うん、ボクもちゃんが好きだよ」
お茶を飲みながら、いつものようにあっさり答えられて頬を膨らます。
「京楽隊長ぉ〜」
「んー?お饅頭おかわりかい?」
「違いますーっ!」
でも、差し出された手から、一日限定10個という貴重なお饅頭は貰う。
袋をぺりぺりはがしつつ、お饅頭を手に持ち、ちらりと視線を隊長へ戻す。
「やっぱりここの饅頭はおいしいねぇ…」
「……はい」
「あれぇ、どうしたの。元気ないね」
そりゃ元気もなくなりますよ。
好きだって…言ったのに、まるで食べ物の好き嫌いを答えるみたいに、返事を返されたら…
「…なけなしの勇気もしぼんじゃいます」
「しぼむ?」
「っ!!」
うっかりつぶやいてしまったのに気づき、口を両手でふさぐ。
「あ、あ、あのっ」
けれど、京楽隊長は慌てることもなく、笠に手をかけると、それをほんの少し上に上げて微笑んだ。
「大丈夫、キミはまだ成長段階だから…大きくなることはあっても、しぼむなんてことはないよ」
「…はぁ?」
見当違いの隊長の言葉に、思わず声をあげる。
「あれ、もしかしてボクの勘違いかな?」
「勘違い…って」
「いやー、しぼむって言ったからてっきり…」
そういって、ぽんぽんと開いた自らの胸元を示した隊長の姿をみた瞬間、反射的に手が動いていた。
「た…隊長のばかあああああああ」
「あいたーっ!」
笠の上から空になったお盆を隊長の頭にぶつけて、その場を駆けだした。
確かに…
確かに胸はないけどっ…
しぼんじゃったわけじゃないもーーんっ!!!
「あいたたた…」
「なにをしているんです、隊長」
「あー、七緒ちゃん…」
「…また、ですか」
「いやだなぁ、また…だなんて」
落ちてしまった笠を拾い、土埃を軽く手ではらって頭に乗せる。
「現場の状況と、あなたの表情をみればわかります」
「さっすが、ボクの七緒ちゃん」
「誰があなたの、ですか」
店のものに茶代と迷惑をかけた分の代金を手渡して立ち上がる。
「全く…毎回こうなるのでしたら、早く受け入れたらどうですか」
「そうはいかないよ。彼女は卯ノ花隊長の妹君だよ?」
「わかっていての行動だと思っていましたが…」
キラリと眼鏡を光らせた七緒ちゃんの言葉に、思わず苦笑する。
「参ったね…どうも」
「心にもない台詞ですね」
「もー、ひどいよ、七緒ちゃん」
「先にいきます」
「あらら…冷たいのー」
足早に去っていく七緒ちゃんの背と、さっき駆けだしていった彼女の背がわずかに重なる。
「…だってさぁ、まだ人前じゃないと言わないんだよ」
彼女がボクに気持ちを伝えるのは、人がいる場所。
決して二人きりの時に伝えてはくれない。
「彼女こそ、まだ、ボクのことを普通の”好き”だと思っているんじゃないかな」
ボクはキミのことが、好きだよ。
ひとりの女の子…いや、女性として…キミを想ってる。
だからこそ…待ってるんだけどね。
ちゃんがボクのことを、普通の”好き”じゃなくなるのを。
誰とも違う…ひとりの男としてみてくれる日を。
「…その時は、もう簡単に離してはあげられなくなるね」
そんなことを呟きつつも、毎回告白してくれる彼女へ伸ばす手が…どんどん触れてしまえそうな距離になっていることも、気づいている。
「んー…我慢、出来るのかな…ボク」
広げた手のひらをじっと見つめると、つい先程、自分の手に微かに触れた小さな白い手を思い出す。
それだけで、なんともたまらない気持ちになるから困ったものだ。
「…参ったね、どうも」
我慢って、苦手なんだよ…本当は、ね。
彼と彼女の距離の差は、大体25センチぐらい。
なんとなく、京楽さんの場合…タイトル、物凄い考えます(苦笑)
なんか、和…っぽくしたい、というイメージが。
ただ、それに文才とねぇみんぐせんすがついてこないのが難点。