ずっと・・・気になっていた
まっすぐな目でダークを追いかけてくる、日渡怜の事が・・・
以前ダークが盗みに入った魔石がダークの魔力と反応して私の瞳に吸い込まれた時から、私はダークから一定距離離れると信じられないほどの激痛に襲われるようになってしまった。
その日以降、丹羽家の居候として・・・そしてダークの盗みのパートナーとして終始一緒にいるようになった。
ダークは口は軽いけど本当は温かい人だっていうのは分かった。
だから私も出来る限り彼に協力をした。運動神経にだけは自信があったから・・・。
でもそんな時、貴方が私の前に現れた。
呪われた氷狩の血を持った・・・日渡怜。
初めて会った時は、何て子供らしくない子供なんだろうって思った。
子供のクセに、大人の目をして・・・全ての苦しみを一身に背負っている姿は見ていて苦しかった。
それでも一生懸命自分の信念を持ってダークを追う姿は、見ていてそれなりに楽しかった。
大助と一緒で何かを頑張っている子を見るのは嫌いじゃない。
でも何度か貴方に会って・・・その目の奥に小さな陰りがあるのに気付いた。
ひざを抱えて小さく蹲って泣いている、男の子。
恐らく彼自信もそんな自分に気付いていないだろう。
だから私も気付かないフリをして、いつものようにダークと一緒に彼を欺き予告した宝を何度も盗みに入った。
そしてある日気付いてしまった。
彼がダーク以外にも視線を移すようになった事、そしてその視線の先にいるのが・・・私だという事に。
だから私は逃げたの・・・年上だっていうのもあったけれど、自分の今の状況を受け入れるのが精一杯で貴方が抱えている物の重さに私は耐える事が出来ない。
「何故逃げる!!!」
そう言って追いかけてくれる貴方が嬉しかった。
いつまでも追いかけて来てくれるって思っていた。
でも・・・この目がある限り、私はダークから離れる事は出来ない。
だから貴方にダークの事をどう思うかって聞かれた時に言ったの、私はダークが好き・・・ダークの僕だから彼から離れられない・・・と。
酷く傷ついた顔をした貴方を・・・その場に残してすぐにダークの元へ戻ったわ。
「・・・お前はオレの僕なんかじゃねぇだろ?」
ダークは泣きじゃくる私を抱き寄せてそう言ってくれた。
必ず私の中に取り込まれた魔石を取り出してやる、だからもう少しだけ側にいろ。
そう言っていつものように優しく抱きしめてくれた。
「くっ!」
瞳から涙の代わりに溢れる物が覆っている手から溢れてくる。
それが激痛から来る物で・・・血だと言う事は明白。
なぜなら今、私はダークの側に・・・いない。
大助とダークは、最後の闘いに行ってしまった。
その場に無関係な私が行く事は出来ないし、クラッドに見つかればちょうどいいエサにされてダークに不利な状況を与える事になる。
「・・・それならダークが張ってくれた結界から、出なければ良かったのに!」
自分自身に言い聞かせるように呟きながら、ポケットから取り出したハンカチで左目を覆った。
「・・・日渡、くん。」
最期の戦いで彼がどうなってしまうのか、今はただそれだけが気がかりで・・・私を前に進ませているのは、最期にもう一度彼に会いたいという想い―――ただ、それだけ・・・。
「・・・?」
丹羽と原田さん達をその場に残し、ただ何となく歩いていたら石段に崩れるように座っている女性を見つけた。
それが・・・ずっと心に残っていた人だと気付いて、痛む体も気にせず駆け寄った。
「!!」
すぐに手を取り脈を図ると少し弱っているが生きている事は確認できた。
体中に切り傷や擦り傷はあるが、大きな怪我は見当たらない。
ただ気になるのは・・・彼女の左目に血で真っ赤に色を変えてしまって張り付いている一枚のハンカチだけ。
「・・・ん・・・」
「!」
微かな反応に気付いて彼女の肩に手をかけると、瞼が微かに揺れて右目がゆっくり開いた。
「日渡、くん。」
「無事、なんだな。」
「・・・そのコート!!」
左目のハンカチが落ちないよう手で押さえながらもう片方の手でコートの裾を掴む。
そう言えば、これは君の・・・大切な人の物、だな。
「あぁ・・・これはダークの物だ。」
羽織っていたコートを脱いでの肩にかける。
「すまない、ダークは・・・」
「そんな事より貴方は大丈夫なの?」
「え?」
驚いて目の前の人物を見れば、右目が僅かに潤んでいる事に気付いた。
「貴方は怪我してないの?大丈夫なの?」
「何故・・・俺の心配をする。」
「・・・っ!心配しちゃいけないって言うの!」
どうしてそんな泣き出しそうな顔で、俺の腕を掴んでそんな事を言うんだ。
今まで一度だって俺の事を見てくれた事なんてないのに・・・。
「貴女はダークの・・・ダークが好きなんだろう?」
以前同じ問いを彼女へした時、笑顔で彼女は頷いた。
そして自分はダークの僕だから、彼から離れる事は出来ない。
そう言って俺の手を振り払ったじゃないか。
「えぇ好きよ。彼は優しいから、側にいてとても・・・安心できる人だから・・・」
やはりそうなのか。
貴女の想いは、やはりダークの・・・
「でも、今気になっているのは・・・日渡怜、だわ。」
「え?」
「初めて会った時からずっと気になっていた。どうしてこの子は人の心を見透かすような目をしてるのかって・・・でも、その瞳の奥に泣いている子がいたのよ。」
「何を言って・・・」
「いいから聞いて!」
恐らく初めて見る彼女の泣き顔は、朝日に当たって眩しく輝いて見えた。
「それに気付いてからずっと気になっていたわ。泣いているあの子をどうすれば助けられるか、私に何が出来るのかって!!でも私は年上で、魔石の持ち主で・・・貴方の側になんていられない。本当だったらここに来ない方がいいって言うのも分かってた・・・分かってたけど―――それでも最後に会いたいって思ったのは・・・ダークじゃなくて貴方よ!日渡怜!!」
「俺・・・に?」
自分でも声が震えているのが分かる。
こんなにまっすぐに求められた事なんて今まで一度もない。
いつも追いかけるだけで、誰にも振り向いてもらえなかった。
「貴方の事だから絶対に自分を犠牲にしてクラッドを殺すと思った。」
「・・・」
「だから、ダークが張ってくれた結界から抜け出して・・・でも間に合わなくて、結局私は何も出来なかった。」
「・・・い」
「え?」
「そんな事は、ないよ。」
傷ついた彼女の体を気遣いながらもコートの上からその体をギュッと抱きしめる。
「俺は・・・これから真面目に「生きる」という事を始める子供です。」
「何言ってるの?」
「聞いて、下さい。」
俺は声を発するたびにこぼれる涙を拭いもせず、封じ込めていた想いをもう一度紐解き・・・彼女に告げた。
「でも、俺は貴女が・・・が好きです。」
「日渡くん・・・」
「俺にはもう、何もない。貴女を追うべき翼もなければ力もない。そんな俺だけど・・・側にいて欲しい。いや、俺が貴方と一緒にいたい!」
体を離して彼女と視線を合わせれば・・・今まで左目を覆っていたハンカチがひらりと落ちて、そこには――――― 右目と同じ翡翠の瞳が涙に濡れていた。
「、その目は・・・」
「え?」
俺の声に反応してすぐ側の水溜りに顔を映せば、彼女の顔がまるで花開く大輪のバラのように輝いた。
「戻ってる・・・私の、目。」
「え、えぇ・・・」
「両目とも同じ色よ!痛みもないわっ!!」
「・・・良かったですね。」
俺の告白、流されちゃったのかな。
でもそれよりもの瞳が戻った事の方が嬉しいなんて・・・おかしな話だ。
苦笑しながら水溜りを見ている彼女の隣に座ろうとしたら、満面の笑みのが俺に飛びついてきて勢い余った俺は水溜りに押し倒されてしまった。
「うわっ」
水溜りに落ちた大きな水音の合間から、嬉しい言葉が聞こえてきた。
「私も怜が好き。これから貴方に何があっても絶対離れないって言うしつこい女でよければ、貴方の側にいさせて・・・。」
「ず、随分大胆になるんですね。」
「だって・・・ずっと言いたかったんだもん。」
起き上がってふいっとそっぽを向く彼女に対して、今まで知らなかった感情がこみ上げてきた。
あの時・・・丹羽が原田さんを見つけた時も、こんな気持ちだったんだろうか。
「・・・。」
「何?」
「キス、してもいいか。」
「・・・はぁ!?」
朝日が当たっているだけじゃなく真っ赤に染まった彼女の手を取る。
「今、したい。」
この気持ちをちゃんとした物にする為に・・・
これからの一歩を踏み出すための力に・・・したい。
彼女の目を見つめながら顔を近づけていくと、彼女がポソリと呟いた一言に自然と口元が緩む。
・・・そんな事、聞くな。馬鹿・・・
重なった唇から、熱いモノが俺に注がれてくる。
まるで冷たく冷え切っていた心を一気に溶かすような熱さ。
眩暈がするような・・・熱。
それに引きずり込まれないよう唇を離し、ゆっくり目を開ければ・・・目の前には何よりも愛しいと想える人がいる。
「貴方が、怜がいてくれて良かった。」
そう言ってもう一度俺にキスをしてくれた彼女の為に、これから俺は生きていこう。
これからが・・・日渡怜(俺)の人生だ。
NO:29ゆっこサンの『D・N・ANGELで日渡くんドリーム』です。
当初はキャラ投票に触発・・・に置く予定でしたが変更(笑)
理由・・・10/9 23:58(〆切二分前に駆け込み(爆笑))
と言う訳で、細かい所はお願いと違いますが基本は一緒。
日渡くんを幸せにする、一人じゃないと言う事を伝えると言う事だけは被っているので今回お星様側に回させて頂きました。
あ、以下のコメントはキャラ投票に触発・・・に載せるままの形ですのでちょっと変かも(笑)
言いたい事、全然上手く言えないけど!
アニメしか見てないし、途中見損ねた部分もあるから色々問題あると思うけど!
でも、日渡くんを幸せにしたかったんだぁ――――!!
誰かに必要だと、いてくれて良かったと言わせたかったんだい!!
当初は出会いのシーンから書く予定だったD・N・ANGEL。
ダークが盗みに入った家に住んでいた彼女が、それを守ろうとした瞬間その石が彼女の目に飛び込んでしまった。
(ダークの魔力と共鳴して)それ以来ダークから一定距離離れると目に激痛が走る為、しょうがなく丹羽家に連れて帰った。
大助の時は離れても大丈夫。だから盗みに入ってダークになる時はいつも一緒。
そんな時に日渡くんが現れる。最初は二人とも気にしてなかったけど、徐々に相手が気になりだして・・・気付いたらダークを追いつつ日渡くんの方が彼女を追い始めた。
でも彼女は自分の今の状況を受け入れるのに手一杯で逃げてしまう。
大人びた目をしてるくせに、心の奥底では泣いている彼が気になってるくせに・・・。
ダークだけはそれを見抜いてて、でも自分のせいで彼女が自分から離れられないのは知ってるから何とかしてやるまで待てと言う。
あー長い前置きだな。ね?書くと長くなりそうでしょ?
で、アニメに繋がるわけですよ。
シーンとしては丹羽君と原田姉妹と別れた後って事で。
アニメしか知らないし、途中見てない所もあるケド最終回を見た時からずっと書きたかったんですよ!これ!!
エンディングから書き始める話ってのも変だけど(苦笑)
でもこれ書いたら、日渡くんと年上のお姉さんのラブラブデート話とかかけそうでしょ♪
しかも主導権は怜だv←ツボはそこか!!(苦笑)