山の頂で、一人沈んでいく夕日を眺めている少年。
背中にひょうたんを背負い、額に「愛」の文字を持つ忍・・・砂瀑の我愛羅。
その名前の意味は ――― 我を愛する修羅
自分だけを愛し、自分の為だけに戦い、生きる・・・と言う意味だと聞いた。
確かにあなたが生れ落ちた時つけられた名前にはそういう意味があるかもしれない。
でもね、今は別の意味もちゃんと持っているって事・・・分かっているかしら。
「我愛羅」
「・・・」
「・・・我愛羅?」
「・・・」
何度名前を呼んでも振り返らない我愛羅の肩をポンッと叩く。
すると驚いたように振り返った顔が、他の人には分からないくらいの小さな変化を遂げた。
微かに緩む口元、細められる瞳・・・それが我愛羅の安堵の表情だと気付いたのはいつだっただろう。
「か。」
「うん、邪魔しちゃった?」
「いや、もう帰ろうと思った所だ。」
「・・・そう。」
見ればひょうたんの栓はしっかり閉められ、いつもなら周囲に散らばっているはずの忍び道具も片付けられている。
「夕飯の準備が出来たから迎えに来たの。」
「・・・そうか。」
ゆっくり立ち上がった我愛羅が、すっと手を差し出したので何も言わずその手に自分の手を重ねる。
「・・・」
「・・・」
初めて出会った時からは考えられない光景。
我愛羅に触れるといつも砂が阻んでいた。
まるで我が子を守るかのように鉄壁の防御を誇る砂。
その砂がいつの間にか我愛羅と一緒にいる時に限り、私をも守るように周囲を取り囲むようになった。
それを見て驚いたのはテマリとカンクロウだけじゃない。
一番驚いたのは砂の呪縛に囚われたと思っていた・・・我愛羅だった。
「今日の夕飯はテマリが腕をふるってくれるらしいわよ。」
「・・・」
「どうしたの?」
「・・・なんでもない。」
「嘘、少し嫌な顔したわよ?」
「・・・テマリの料理は、少し変ってる。」
「そうなの?私が家を出るまでは普通だったわよ?」
現に私が家を出る前は美味しそうな匂いすらしていた。
「・・・そこからが違う。」
「・・・?」
「ひと口食べて口に合わなければ残せ。」
それから我愛羅はテマリの料理について一言も口にしなくなった。
「確かにあれは変ってる・・・」
テマリの独創性豊かな・・・料理、と一応名付けられる夕飯を食べてから動けるようになるまで一時間かかった。
ベッドに腰掛けた私の横ではひょうたんを背負った我愛羅も表情こそかわらないが、眉間に僅かな皺が寄っている。
「我愛羅、私の調合した胃薬飲んだ?」
「・・・あぁ」
「それが効くまで少し休んだ方がいいわ・・・ちょっと待ってね。」
重たい体を起こしてベッドに上がり、壁に背中をつけて足を伸ばす。
伸ばすのを見計らったように我愛羅が体をベッドに横たえ、私の膝に頭を乗せた。
「いつものように・・・」
「分かってる。30分経ったら声、かけるわ。」
そう言いながら我愛羅の短い髪をそっと撫でる。
すぐに規則正しい呼吸が聞こえ始めたので、私はチャクラを張り巡らし我愛羅の中に眠る守鶴の力を押さえ込む。
我愛羅が眠らないのは産まれる時体内に入れられた砂隠れの老僧守鶴の生霊が、我愛羅が眠った隙をついて彼の精神を蝕み、徐々に自我を削り取るからだと聞いた。それを知った私は自分の能力を最大限に使う事で、我愛羅が眠っている間、彼が起きている時と同じように守鶴を押さえ込む術を生み出す事に成功した。
一度も深い眠りについた事のない我愛羅を・・・安らかな眠りの世界に誘いたかったから。
思えば我愛羅が私の膝で僅かな間眠るようになってからかしら?砂が私を阻まなくなったのは。
一定のチャクラを練り続ける事は容易い事ではないけれど、目の前の幼子の眠りを守るためならそれも苦ではない。
私の・・・この、閉ざされた目に光を与えてくれたあなたの為なら・・・。
「おやすみ、我愛羅・・・私の愛しい子。」
額の『愛』に口付けを落とし、再び心を落ち着けてチャクラを練り始める。
我愛羅の目の下のクマが・・・僅かに薄れたのを見て、感じた事。
私の愛が、あなたの修羅を休ませる事が出来ればいいのに・・・
そう思い始めたのは、つい最近だ。
私に光を取り戻してくれたように、あなたに・・・安らぎの時を与えたい。
そしていつかあなたと共に同じ朝を迎えられるよう・・・今は、このひと時の安らぎを守る事に全力を注ごう。
大切な愛しい我の修羅の為に・・・
ずっとずっと書きたかった我愛羅夢・・・と言うか見守り夢です(苦笑)
アニメで我愛羅が出た事が引き金、となったかな?←よく分かってない。
基本的に我愛羅は慈しみたい、癒したいと思ってる人です♪
ちなみにこの話の元ネタはもっと長かったのよね。
ナルト達の所から姿を消した三人(中忍試験後だね)を匿ったヒロイン、見ての通り年上。
彼女は予見できる目を持つ一族の末裔だったわけで、お約束の通りその彼女を巡って争いが勃発。それが嫌になった彼女は自らの目を封じる事によって、国を出て山で人との触れ合いを避け暮らしていました。まぁしばらくは暗部がついてたけど、本当に目が見えないって事で無視されて我愛羅達と知り合った頃は国を抜けてから数年たったって感じ?
そんな中、出会った三人と奇妙な同棲生活が続き、テマリは姉のように慕いカンクロウはついつい面倒みちゃって、我愛羅は一人離れてたんだけど、ヒロインが我愛羅に愛を語り始め、自分の能力を我愛羅のために使ってぶっ倒れた時、たまたまヒロインの国の忍が彼女の能力がまだ消えてない事を知って連れ去ろうとしたのを我愛羅達が邪魔して・・・で、忍を全滅させ、全てを砂に消してしまった事で再び彼らに平和が訪れ、ようやく彼女は再び目を開ける決心をする、と。
それは勿論自分のために戦ってくれた我愛羅たちの為に。
目を開け、我愛羅を見て、テマリ達を見て、改めて家族になろうと誓ったのでした。
・・・我愛羅は母親を見てるけど、次第にそれが愛情だと言う事を学ぶ予定?(笑)
相変わらずなっがい設定作ってるなぁ自分。
しかもそれを全て吹っ飛ばしてしまう自分も自分(苦笑)
ま、祝アニメ再出演我愛羅!と30万hitオメデトウって事で!
(まるでついでのようね(苦笑))