数ヶ月が過ぎ、再び中忍試験がやってきた。
「今日こそ…今日こそ、カカシが試験官じゃありませんように!!」
心の中で呟きながら胸に入れたイルカに貰ったお守りをぎゅっと握り締めると、今日の戦場である試験場へと足を踏み入れた。
「いらっしゃ〜い」
そこに立っているのは…いつもと同じ、いつもと同じ男。
「またか…」
「あれぇ?またちゃんか」
入り口から一歩入った所でガックリ頭を垂れ膝をつく。
は今日こそ神を呪った日はなかった。
「ど…どうしていつもあたしの試験官がオマエなんだぁ!」
「オマエって…俺にはちゃんと「はたけカカシ」って名前があるんだから名前で呼んでよ」
「煩い!あたしにとっての疫病神に名前も何もな〜い!!」
ぜぇぜぇ肩で息をしながら目の前で本を片手に立っているカカシを指差す。
「疫病神って…ひどいなぁ。わざわざちゃんの成長を見ようと毎回試験官に立候補してあげてるのに」
「余計なお世話だ!…って…何?立候補?」
不吉な単語を聞いては思わず顔を歪めた。
「そ、普通俺みたいな優秀な人間がたかが中忍の試験に顔出すワケないでしょ?」
持っていた本をパタンと閉じるとそれを合図にカカシがの前から姿を消した。
は足に隠し持っていたクナイを構えると同時に周囲に視線を走らせ、ある一点めがけて手裏剣を投げた。
それが何かに当たり床に落ちても、はその場から動く事はなかった。
暫くしてカタンと言う小さな音がの耳に届き一瞬視線をそちらへ向けた瞬間、の目の前に今まで姿を見せなかったカカシの姿が現れた。
すぐにカカシと距離を置き体勢を立て直すその反射神経は実戦経験を踏んだ事のある上忍そのものだったが、その表情はまるで突然好きな相手が目の前に現れ戸惑う少女そのものだった。
「相変らずかーいーね。ちゃんは…」
「う…煩い!!」
「その様子じゃま〜だ気付いてないんだ」
「な、何が!?」
額から流れる汗を拭いながらもの神経はいまだ目の前にいるカカシから離れない。
いつもの試験の時と同様、の顔は真っ赤に染まり呼吸は荒く手足は震えている。
カカシはその様子を確認するとわざと音を立てての前まで歩いて行き、震えるその体をそっと抱きしめた。
「な、何するんだよ!」
「あれぇ?ここまでしてもまだわかんないの?」
「だから何がっっ!!」
「…ここまでしてもわかんないのって、ちょっとスゴイかも」
カカシはを抱きしめていた手を緩めると目の前にしゃがみこんだ。
体が自由になったは転がるようにカカシの側から離れていく。
「うっわ〜…そんなに転がるように逃げなくてもいいのに」
「う、煩い!あたしの勝手でしょっっ」
「そりゃそうだ。…ねぇ、面白い事おしえたげようか?」
「面白い事?」
「そ、多分今まで君が知らなかった事だよ」
「知らなかった事…」
の好奇心を上手い事ついてくる言い方である。
警戒していたが徐々にカカシへと距離を縮めてくる。
(何だか野良猫相手にしてる気分だなぁ)
が木に隠れながらカカシの方へやってくる姿を見て、カカシはのんびりそんな事を考えていた。
やがてカカシが手を伸ばしてぎりぎり届かない所まで近づいたにカカシはいつもの口調で話し始めた。
「さぁ…僕のコト好きでしょう?」
「はぁ?」
そのままでも大きな目を更に大きく広げ、はカカシの顔をじっと眺めた。
誰が?いつ?どうして??
その様子を見ていたカカシはやれやれと言いながら腰を上げ、懐から今日の試験の結果を記入すべき名簿を取り出した。
「やれやれ、これじゃぁいつまで経っても合格にはしてあげられないな」
「・・・」
未だ言われた事がわからないはそのまま動きを止めている。
「キミの実力は十分ある。本当ならいつでもアカデミーの教師になれるんだよ。でもね自分の事も良く分からないようじゃ先生としてまずいでしょ?」
「・・・」
「だから、キミの俺に対する気持ちがはっきりしたら…いつでも合格にしてあげるよ」
そういってカカシは手にしていた名簿に何やら書き込み、そのままに向かっていつもの台詞を告げた。
「はい、ダ〜メ。出直しておいで」
台詞はいつもと同じだがを見つめるカカシの目はいつもと違い、糸のように細められにっこり微笑んでいるようにも見える。
そんなカカシを見ての胸がドキンと高鳴った。
彼女が恋に気付くまであと僅か…
アニメのNARUTOを見て、井上さんVOICEのカカシ先生にあっという間にはまって書いた話。
『恋』を知らないヒロインをからかう先生が書きたかったのに…これか(泣)
この時はアニメも最初の方しか見てないので、中忍試験があんな物だとは知りませんでした。
だからこんな平和な方法で試験やってるでしょ?しかもカカシが面接官でしょ?
いるか先生がアカデミーの先生になって、その頃ヒロインが中忍試験受けてる…だったらカカシは暗部じゃないか!?
…ほぉ〜ら、突っ込みどころ満載でしょ?だからボツなんですよぉ(TT)
言いたい放題のヒロインが結構お気に入りだったんですけどね、可愛いくて。
最終的に私の一番好きな「ごーかっくv(合格)」を言わせたいんですけどねぇ…
この間そのヒロインが先生になった話をひとつ書いたんですよ。
この話の強気ヒロインを頭に置いて…でもね、全く性格が変わっちゃったんですよ。
現在の第7班の先生をやってる私の中のカカシに、強気ヒロインちゃんは難しかった。
芯は強くてコレという時は口悪くても、強気でも問題ないんだけど…普段はつかみ所の無い子の方がカカシの興味を引きそうだなぁと思って。
という訳で突っ込みどころ満載と言う事と、ヒロインが変わったのでやっぱりボツ。
でもコメントまで書いてあったから、サルベージしてみた(笑)
コメントを見ると、これを書いたのがどんくらい昔かってのがわかるなぁ…(苦笑)
…………読み直したら、全部…書き直したくなった…orz