「お風呂〜♪湯気いっぱ〜い……♪楽しい〜…お風呂〜♪」

いつものように鼻歌を歌いながらお風呂の用意をするリュカを見ながら、タオルを用意する。

「今日〜は〜♪…どの〜入浴剤〜をー…入れ、よう〜かなぁ〜♪」

用意が整ったので、楽しそうに歌いながら入浴剤を選んでいるリュカの隣に腰を下ろして尋ねる。

「どれにするの?」

「どれ…も、いい〜」

「うん、そうだね」

フルーツの香り、花の香り…あはは、チョコレートの香りなんてのもあるんだ。

「う〜ん…」

大きな体を丸めて眉間にしわを寄せて悩むリュカも…なんだか可愛い。
くすくす笑いながら、お風呂の温度を確かめるため立ち上がり、お湯に手を入れる。

「ねぇねぇ…は〜…どっち、が…いい〜?」

「うわっ!」



ぼっちゃん……



リュカが背後からまるでおんぶをねだるかのように乗っかった拍子に、腕が肘までお湯の中につかってしまった。

「あ……あぁ〜…大変、…たいへ〜ん…」

おろおろしながらあたしの腕をお風呂の中から引き上げ、タオルでぐるぐる巻きにして申し訳なさそうに謝り続ける。

「ごめ、んね…ごめ〜ん…」

「大丈夫だよ。濡れただけだから…」

「でも…、服〜…」

「着替えれば済むから、ね?」

「ん〜〜…」

それでもまだ申し訳なさそうな顔をしているリュカの頭を背伸びして撫でる。

「タオルありがとう、リュカ」

「……へへへ〜……」

頭を撫でられて蕩けそうな笑顔を見せてくれるリュカの手には、二つの入浴剤。

「もしかして、この二つで悩んでるの?」

「え〜……あー…、うん…。だから〜…君、が〜…選んで〜」

ずいっと前に差し出されたのはオレンジの香りとチョコレートの香りの入浴剤。
パッケージのイラストが他のものに比べて可愛らしいところが、リュカらしいなぁ…なんて思っていたら、頭上から不吉な声が聞こえた。

どっちも、おいしそ〜

そういえば、この間…ピーチの入浴剤を入れた時、飲もうとしてたんだっけ。

「リュカ?これを入れてもお湯は飲んじゃだめ、なんだよ?」

「大丈夫〜…もう、飲まない〜…」

蕩けそうな笑顔の裏に一抹の不安を抱えながらも、チョコの入浴剤を手に取った。
もう飲まないって言っているけど、オレンジだとちょっと…ほんのちょっとこの間のピーチの二の舞になりそうな気がしたから、止めた。

「こっち〜?」

「うん」

それにチョコレートならリュカも何度か実物を見てるから、飲もうなんて思わないよね。



――― 多分



「じゃあ…入れる、よ〜…」

封を切ってお風呂にいれる。
少し大げさ…ともいえる勢いでお湯をかき混ぜると、甘いチョコの匂いがお風呂場全体に広がった。
準備万端整い、おもちゃのあひるをチョコレートのお風呂へ浮かべると、洗濯物を手にドアへ手を伸ばす。

「それじゃあリュカ、肩までちゃんと入るんだよ」

「え〜……えぇ〜……

「え?」

一歩踏み出そうとしたけれど、がっちり腰に回された手が…外に出ようとしていたあたしの体をいつの間にか固定していた。

「リュ、リュカ?」

も〜…一緒に〜……入る〜♪」

「えぇー!?」

「甘い〜…チョコ〜、でも〜…君と、一緒ならー…もっと〜…あま〜いー♪」

「リュカ!?」

「お風呂〜♪お風呂〜…♪」

「あ、あの…」

「なぁ〜に〜…?」

「……」

「…あっ………あ〜…」

「?」

…チョコ、嫌い〜?他のもの、が…いい〜?」

あたしがお風呂に入らないのを入浴剤のせいだと思っているのか、足元に散らばっていた他の入浴剤を差し出してきた。

「混ぜる…?混ぜ、る?」

「ま、混ぜちゃだめだよ!?」

「でも…」

しょんぼりと下がる肩と…そして羽も元気をなくしてたたまれている…ようにみえるリュカを見て、小さくため息。



窓の外を見れば、月はまだ青にはなっていない。
それなら、警戒しなくても…大丈夫、だよね。



「いいよ、一緒に入る」

「ほ、ほ……ほん、と〜?」

ぱぁぁっと花が咲くように微笑まれ、つられるようにあたしも笑顔になる。
それから暫くの間は、楽しくあひるさんで一緒に遊んだりしていたんだけど……のんびりしていたら、いつの間にか空の月は、青々と輝き始めていた。





BACK



風見的超癒しキャラのリュカ。
ただ、小話を書くにとなると、彼の場合「……」が多いんです、本当はもっと。

そんなこと、ない……よぉ〜……

でもこのゆったりまったりさが、彼の可愛いとこなんです。
もう可愛いわがままくらいいくらでも聞いてやるぜ!みたいな。
それがじれったい時もあったりするんだけどさ…それも月が出れば、また変わるので(笑)
えー、このゲームは大人になってから遊べるゲームですので、18歳未満の方は興味があっても後もう少し頑張って待ちましょう!