そっと部屋の扉を開けて中に入ると、ベッドで眠っている人の元へ向かう。
気付かれないよう静かに顔を覗き込むと、規則正しい寝息を立てながらこちら側を向いて眠っている・・・涼兄がいた。

「・・・いつも涼兄の方が早起きなんだもんね。」

あたしを起こしに来る事はあっても、その逆は今までなかった。
でも・・・これからは・・・

「あたしが毎朝起こしてあげる。」

そう呟きながらその肩に触れようと伸ばした手を掴まれた。

「それは嬉しいね。」

「え?」

「でも今度はもう少し、早めに来る事をお勧めするよ。」

「涼兄っ!起きてたの?」

あたしがあんなに扉の開け閉めも、部屋の中で歩くのも注意したのに・・・ダメだったの?

「・・・どうして起きちゃったの?」

今後の参考までにそう尋ねれば、むくりと体を起こした涼兄が小さく欠伸をしながらあたしのほうへ体を向けて小さく笑った。

「部屋に入ってからは完璧だったよ。」

「じゃぁどうして・・・」

「廊下で、・・・歌ったろ?」

「あ」

そう言われて見れば・・・昨日しおんがカラオケで歌ってた曲、気に入っちゃってエンドレスで聴いてたから自然と歌っちゃってたかもしれない。

「その所為なんだ。」

「あまりに綺麗な歌声だったから・・・つい目が覚めちゃったんだよ。のせいじゃない。」

「ごめんね涼兄、夜勤明けなのに・・・」

あれから家に戻ってきた涼兄は、病院勤務と言う事もあってその日その日で睡眠時間が全然違う。
折角家に帰ってきたんだからゆっくりしてもらおうと思ったのに、これじゃぁ余計疲れちゃうよね。

「こーら。また何か余計な事、考えてるな?」

「・・・そんな事ないもん。」

ちょっと頬を膨らませてそっぽを向くと、涼兄の大きな手があたしの頬を包み込んで再び涼兄の方に顔を戻された。

「・・・内緒事かな?」

「そっそんなんじゃっ!」

「じゃぁ、俺の目を見てちゃんと言ってごらん。」

じっとあたしを見つめる涼兄の視線からは、溢れるほどの愛情が感じられて・・・あたしはいつもこうして涼兄に守られてるんだって思う。

「・・・ほら、。」

涼兄ってばずるい。
こうして目を見て、そんな声で名前を呼ばれたら・・・あたしが隠し事なんて出来ないの分かっててやってるんだもん。

「涼兄がね・・・」

「俺が?」

「折角家に帰ってきたからゆっくりしてもらいたいのに、あたしが涼兄の邪魔しちゃって・・・ゆっくり出来ないんじゃないかって思ったの。」

「・・・そんな事ないよ。」

「でも・・・」

「本当には・・・可愛いね。」

クスリと笑った涼兄があたしの頬に置いていた手をゆっくり離すと、そのままベッドに腰掛けていたあたしの体をそっと抱きしめた。

「以前は触れられなかったお前をこうして抱きしめる事が出来る。」

「りょ・・・涼兄・・・」

「家に帰れば、がいる。笑顔で『お帰り』って言ってくれる・・・そうだろ?」

「うん。」

幼い頃のように頭を撫でながら耳元で話す涼兄の声は、あたしの心に染み渡るように響く。

「俺の方は毎日こんなに幸せでいいのかって思うくらいだよ。」

「涼兄・・・」

嬉しくて嬉しくて涼兄の背中にあたしも手を回して大きな体をギュッと抱きしめる。
そうすると涼兄も少し力を入れてあたしを抱きしめ返してくれた。










「ところで。」

「なぁに?」

後ろから抱きしめられながら涼兄の大きな手をじっくり眺めていたあたしの耳元で、涼兄がポツリと呟いた。

「俺はいつになったら『涼兄』を卒業できるのか、教えてもらえるかな?」

「っ!!」

吐息と一緒に耳に入ってきた涼兄の声に、思わず体が震えてしまった。
それを小さな頃から一緒にいた涼兄が気付かないはずはない。
面白がってるのか耳にかかった髪をかきあげて更に唇を近づけて声を落とす。

「俺としては今すぐにでも『涼』って呼んで貰いたいんだけど?」

「涼兄っ!くすぐったい!!」

ジタバタ暴れて離れようとしたけれど、涼兄はしっかり腰に手を回してあたしの体を掴んでいる。

「涼って言ってくれたら離してあげるよ。」

クスクス楽しそうに笑っている涼兄の腕を一生懸命剥がそうとするけど、こういう時の涼兄は全然手を抜いてくれない。

「ほら、。」

「りょっ・・・
・・・」

ただ名前を呼んでるだけなのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう。
何年もずっと一緒にいて呼んでいた名前なのに・・・『兄』と言う言葉をつけないだけであたしは耳まで真っ赤になるくらい照れている。

「耳まで赤いよ。」

「涼兄のせいだもんっ!」

「ほらまた、涼だって言ったろ?」

くるりと体を反転させられてコツンと額を重ねられた。
じっと目を見られて微笑まれたら――――もうあとは涼兄の思うがまま・・・。
ゴクンと息を呑んで、カラカラになった喉から何とか音を搾り出す。

「・・・涼」

「ん、良く出来ました。」

満足そうに微笑んだ涼兄は体を拘束していた腕を解いて、今だ真っ赤になっているあたしの頬を最初と同じように両手で包み込んだ。

「・・・ご褒美だよ。」





そうして重なった唇は、いつもより少し熱いくらいで・・・
涼兄が「お兄ちゃん」から「恋人」に変わった日から、あたしの熱は下がる事がない。





BACK



100のお題からこっそり移行させましたが、コメントは殆ど弄ってません。

涼兄が好きだー!!(絶叫(笑))
って言うか、悟浄を知って平田さんを知って・・・その関連で平田さんがパソコンゲームでお兄ちゃん役をやってると知って買ったゲームがSiestaです。
そしてこれで完璧に平田さんに落ちました!
柔らかい笑顔で微笑むお兄ちゃんv
囁くような優しい言葉で妹を見つめているお兄ちゃん!
散々言っている「手のかかる妹だ」のお姫様抱っこも好きですが、このゲーム・・・涼兄には最上EDがあって・・・見た瞬間死にました(笑)
平田さん・・・貴方の声も犯罪です(おいっ)
最上EDはこの話みたいに涼兄(=平田さん)が甘く囁いてくれますよvvv
※ゲームを知ってる方へ
本来であれば最後の方で「涼」と呼ぶのではなく「亮」と呼ぶのが正しいのですが、多分このゲームを知らない人は変換間違いと思ってしまうのでは?
と思ったので今回は「涼」にさせて頂きました。あの辺ちょっとややこしいですよね(苦笑)


涼兄の声は、声質的には・・・L/Rのジャックが近いかな?
悟浄やサンジとは全然違う平田さんを是非貴女も堪能してみませんか!?
確実に妹扱いしてもらえますよ!(それ以外も可だけど・・・)
あーSiestaもPSにならないかなぁ、イベント増やしてさぁ〜・・・(呟き)