「さぁ!飲むのだ、食べるのだ!!」
「………」
「今日は楽しい、ひぃなまつりなのだ!」
…気のせいだろうか
彼の発する、ひなまつり、の発音がおかしい気がするのは。
「どうしたのだ?」
「……」
「さー遠慮するなど無用なのだ!頑張る元気をつけるよう、色々取り揃えたのだ!」
甘酒で酔ってでもいるのだろうか。
彼が示す先にあるものは…ひなあられや甘酒、そして何故か手裏剣、懐刀…と、明らかに、元気をつけるというよりも、何かを抹殺しかねないものが混じっている。
「あのさ、シューマイくん」
「なんだ和人!まだいたのだ?」
「いや、最初からいたんだけど…というか、僕のロッカーの前に物を広げないでよ」
「おぉ、そいつはアイムソーリー」
「まぁいいけど…それより、彼女を元気づけるのに、この手裏剣はおかしくない?」
良く突っ込んでくれました、新田先生。
心の中で小さく拍手をすれば、シューマイくんは何を言う?とでも言いたそうな顔で、私の肩を抱き寄せた。
「和人、良く見るのだ」
「え?」
「拙者、今日はじめて彼女を見た時から気づいていたのだ」
「?」
何のことだろうと、事の成り行きを見守っていると、力の抜ける言葉が効果音(気のせい)と共にシューマイくんの口から発せられた。
「は疲れているのだ!!」
「…………あー、うん、そうだね」
新田先生すらも呆れさせる、必殺のひと言。
「疲れた時には甘い物が必要なのだ。今日はひぃなまつりだから、これらを用意したのだ」
「うん、甘酒とひなあられは間違えていないよ。でもこっちのはどう見てもおかしいんじゃないかな」
「これはこれでいいのだ。今日はひぃなまつりだから、後でこれを使って彼女の疲れの元をひぃひぃ言わせるのだ」
「「は??」」
…今、なんて言った?
「シューマイくん…今日、何の日だかわかってる?」
不安になって、尋ねてみれば、彼は胸を張ってこう答えた。
「今日は、ひぃーな祭なのだ。皆がひぃひぃ言う祭なのだ!」
「…シューマイくん、それ…ただのオヤジギャグだよ」
「何を言う!バームクーテヘン教授が、酒に飲まれつつ説明してくれたのだ!」
「飲まれた状態の教授の話を信じたらダメだって、前にも注意したじゃないか」
「さぁ!!そんなにぐったりした原因となる人物を教えるのだ!拙者が、成敗してくれるのだーーー!」
「ダメだよ、シューマイくん!彼女の世界じゃ手裏剣…ましてや刀なんて、銃刀法違反で捕まっちゃうんだから!」
「ええい、離せ、和人!行かねばならないのだ!愛しい人のためなのだー!!」
「うわぁっ…ほらっ、早く君もシューマイくんを止めて!ちゃんの言うことなら聞いてくれるから!!」
腰に新田先生をぶら下げて、刀を振り回しながら病院を出ようとしている彼の後を、面白そうについていく。
新田先生には悪いけれど、日々の忙しさには正直うんざりだ。
鬱憤晴らし…ではないけれど、せめてもう少し楽しい姿を見ていたい。
「えぇ〜い、武士の情け!」
「意味がわからないよーっ!」
三人の後ろで、甘酒の空瓶を見ながらメモを取る人影がひとつ。
「…まだ、改良が必要みたいだね」
彼が立ち去る音は、誰の耳にも聞こえないほど速かった…とか?
日記でひな祭りを遊んでいたら、プチリクエストが来たので書いてみた。
シューマイくんとひな祭り。
…あれ、なんか可愛いタイトルだな(笑)
ちなみに最後にメモを取ってるのは、Dr.HAYAMIです。
足音は聞こえません、だって…シュンッ!!…とか言うはずだから。
ま、なんかの実験に使われてたってオチですよ。
相変わらず適当だな、自分(苦笑)
多少内容変更しつつも、リメイクってことで!!