「ん・・・」
唇に何か触れる感覚で目が覚めた。
「・・・おはよ」
「ゆ・・・きさん?」
瞼が重くて中々開けられず、のろのろしていると再び何かが唇に触れた。
「ほーら、お寝坊さん。そろそろ起きろ〜?」
重い瞼を一生懸命開けると、結城さんが楽しそうに笑いながら私の髪を引っ張ってる。
もぉ・・・たまに自分が先に起きるといっつもこうなんだから。
わざとらしくその手を払って布団を頭までかぶって背中を向ける。
「あっはー、今日はやけに甘えてくれるね」
「甘えてません」
寝起きの擦れる声でそう言ったけど、本当は嘘・・・甘えてるの。
「昨日約束したとおり、お姫様の好きなコーヒー入れたよ?」
「・・・パンは?」
「もっちろん、駅前のパン屋で買ってきた焼きたてのミルクロールとクロワッサンをご用意してま〜す♪」
「・・・」
「それに、ちゃんがシャワー浴びてる間にオムレツ作ったげるよ」
その言葉に思わずピクリと肩が揺れ、もぞもぞと身体を反転させる。
「オムレツ?」
「そ、チーズとプレーンどっちがいい?」
そこまで言われて私はようやく頭までかぶっていた布団から顔を出した。
「プレーン!」
「ようやく顔、見せてくれたね」
「・・・おはようございます。結城さん」
身を乗り出して結城さんの頬にキスをすると、同じように結城さんも私の頬にキスをくれた。
「はい、おはよ・・・じゃぁシャワー浴びといで」
「はい!」
「ほんっと、綺麗に咲いたよね」
「は?」
「ん?こっちの話。ほらほら、目の毒だから早くバスルーム入って下さい」
ツンッとシーツを引っ張られて今の自分の格好を思い出す。
急激に顔に熱が集まり、慌ててシーツを身体に巻きつけたままバスルームへ向かった。
「あれぇ?どしたの、そんな慌てて」
「こっち見ないで下さい!!」
「あっはー、そう言われると逆に見たくな・・・ぶはっ!」
振り向きそうになった結城さんに枕を投げつけ、その隙にバスルームに飛び込んだ。
ずるずると力なく扉を背に座り込むと、軽いノックと共にいつもの結城さんの声が聞こえた。
「早く出てきてよ〜?じゃないと俺、泣いちゃうから」
「泣いてていいですから、オムレツは残しておいて下さいね!」
「あらま、冷たい人。はいはい、分かってます。時間だけ注意してね」
それだけ言うと声は背中から遠ざかって行った。
真っ赤に染まった頬と同じように、体中に咲いた赤い華。
「もぉ・・・これじゃぁハイネックしか着れないよ。」
ため息をつきながら、纏っていたシーツを床に落としシャワーを浴びる。
美味しい朝食を、誰よりも愛しい人と食べる為に・・・
日常小話です。
えぇ、もう、ほんっとうに大した事ない小話(笑)
ただ単に結城さんの朝ごはんが食べたかったんです。
昨夜多分恐らく(いや、確実に)何事かあって、その時のお願いを翌日キチンと叶えてくれるお兄さんが書きたかったんですよ(笑)
焼き立てのパンをわざわざ買いに行ってくれるあたりが結城さんっぽくて好きですw
泣いちゃうよ〜俺。って台詞も好きなんですよ、この人の(笑)
何だか可愛くありません?そんな事言うと結城さん、怒りますけどね(笑)