「8月8日・・・か」

日付を確認した時そこに何故赤丸がされているのが気になったが、あえて見ない振りをして着替えを始めた。
そのままコンピューターのモニターに映っている今日の予定に目をやる。

「今日の予定は・・・シュミレーションとプログラミングか・・・」

ふといつもならまだ隣でのんびり欠伸でもしているはずのディアッカの姿が見えない事に気付き、背筋に妙なものが走った。
時計を確認する・・・が、集合時刻30分前でついさっき時刻を合わせたばかりだから間違っているはずはない。

「アイツ、珍しく早起きでもしたのか?」

不審に思いながらも、声を掛け急かす手間が省けたのだからかまわない。
そう思い部屋を出ようとロックをはずした瞬間、見慣れたヤツが目の前に立っていて次の瞬間小さな爆発音のような物が幾つも鳴り響いた。





パン パン パパンッ☆



「っっなっ!?」

「お誕生日おめでとう!イザーク!!」

「・・・あ?」

キ―――ン と耳鳴りがする耳を押さえながら、俺は目の前でにこにこ笑っているヤツへ不機嫌全開のまなざしを向けた。

「・・・何バカな事を言っている。」

「え?だって今日イザークのお誕生日でしょ?」

「それがどうした。」

「本当だったら何かプレゼント持って来ようと思ったんだけど、何も用意できなかったから・・・誰よりも早くお祝い、言いに来てみた。」

俺はもしかしたら、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてるかもしれない。
いつもの罵詈雑言が何ひとつ口に出せず、ただ目の前で嬉しそうに笑っているコイツがやけに可愛らしく思えて・・・しょうがない。





たかが誕生日。
しかも、戦争の最中だと言うのに・・・コイツは、出来る限り相手を喜ばせようとしている。
だがそれを笑って喜べるほど、俺は・・・出来た人間じゃない。





「・・・おい、。」

「何ですか?」

「だからと言ってこんな至近距離でこんなモン何発も鳴らすな!!」

俺は手に持っていた書類を床に放り投げて、目の前のの耳を思い切り引っ張る。

「いっ・・・痛っ!痛いよっイザーク!!」

「ふん、馬鹿が!朝っぱらからクラッカーを何発も鳴らされた俺に比べればマシだろう!」

「でも音だけだから・・・」

言われてみればそうだ。
普通なら音と共に、意味の無い色とりどりの紙切れやテープが飛び出してくるはずが、が使用した物からはそれが出てこなかった。

「イザークはそう言う派手なの好きじゃないと思ったから、これにしたんだけど・・・」

「・・・」

手を緩めた隙には俺が引っ張っていた右の耳を手で擦りながら小さな声で呟いた。



全く・・・コイツは馬鹿なのか、それとも・・・



俺が色々考えて俯いているのをどうとったのか、はさっき床に落としたファイルを拾うと俺の前に差し出した。

「えっと・・・朝から騒がせてごめんなさい。それじゃぁ・・・あの、今日も一日頑張って・・・下さい。」

ペコリと頭を下げてそのまま立ち去ろうとしたの手を掴み、思わず引きとめてしまった。

「待て。」

「・・・イザーク?」

し、しまった。何で俺は引き止めたんだ!?
だが、このままコイツに何も言わず別れるのは・・・何だかイヤだ。

「今日の・・・ワビをしろ。」

「え?」

「静かに一日を始めようとした所をオマエに邪魔されたんだ。そのワビとして今度の休み俺に付き合え。」

キッと睨みつけるようにを見れば、アイツは驚いた顔をした後、ほんの少しだけ頬を染めると小さく頷いた。

「・・・休みが決まり次第連絡する。」

それだけ言うと俺は片手をあげてに背を向け、午前中のシュミレーションが行われる部屋へ向かって足早に歩き出した。





たかが誕生日
たかがアイツの祝いの言葉
それがこんなに心を喜ばせる
自分がそんな単純な人間だなんて思いたくはないが、次の休みを心待ちにする俺の心に嘘はつけないらしい

だが、やられた事はやり返す。
オマエの誕生日には・・・何を返してやろうか





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★ Happy Birthday ★

イザーク・ジュール

イザークお誕生日おめでとうv話。
相変らず天邪鬼な彼が好きみたいです、私(笑)
本編ではザフトに残ったのは彼だけになってしまい、ちょっと寂しいなと思いつつ平和に誕生日を祝ってみました。
あ、ちなみに部屋のカレンダーに赤丸をしたのはディアッカです。
ヒロインに言われて赤丸をしたらしいです(笑)何気に使われているディアッカ(苦笑)
きっとこの日、早起きしたのも前日ヒロインに言われたからなんでしょうね♪