お母さんの仕事が一段楽したアスランは、近々お父さんのいるプラントへの引越しが決まった。
それを知らされた日から、あたしは毎日アスランの所に遊びに来ている。
だって・・・少しでもアスランと一緒にいたいんだもん。
でもアスランは決まって部屋にこもって一生懸命何か作ってる。
今も机の上に広げた設計図を見ながら、器用に細かい部品を組み立てている。
「・・・アスラン?」
「あぁ、か。いらっしゃい。」
チラリとあたしの方を見るだけで、すぐ手元に視線を戻してしまう。
最近ずっと何かを作ってて、アスランはちょっと疲れた顔をしてる。
一体何を作っているのか気になって、いつものように背中にへばり付きながら肩口から手元を覗き込む。
「ねぇアスラン。」
「ん?」
机に散らばっている緑と黄色の数々の部品から想像してアスランに聞いてみる。
「これって・・・鳥?」
「当たり。良く分かったね。」
「だって・・・クチバシあるし、足細いし・・・んーじゃぁ今作ってるのは、羽?」
「そう、あとこれが出来れば大体出来上がりなんだけど・・・」
「もしかしてこれ・・・飛ぶの?」
そう言うとアスランの手がピタリと止まって苦笑しながら肩口から覗き込んでいたあたしの方を振り向いた。
「・・・鳥だからね。」
「そ、そうだよね。と、鳥だもんね。」
でも確か前にアスラン、鳥を作るのは大変だって言ってなかったっけ?
そうそうキラが授業の課題で作るって言いだして、絶対にキラには無理だ!俺にだって難しいのにって言ったのは・・・つい最近の事だよね。
それを口に出そうとしたんだけど、アスラン凄い真剣な顔して作ってるから・・・止めた。
何かに一生懸命になってるアスランの顔。実は・・・凄く好き。
邪魔にならないよう作業をしている机の横に座ってそこからじっとアスランを眺める。
「それで、今日はどうしたの?」
ある程度キリのいい所まで進んだらしく、アスランがジュースを持ってきてガラステーブルの上に置いてくれた。
「え?」
「また宿題で分からない所あった?」
「今日は・・・一人でやったもん。」
「偉いな。」
コップを机の上に置いてアスランが優しく頭を撫でてくれた。
アスランは優しいけど、勉強とかちゃんとやらなきゃいけない事に関しては凄く厳しい。
どんなに宿題が多くても、追い詰められたとしても口は出しても手は出さない。
でもキチンと考えてそれでも分からないって時は、分かるまで一生懸命教えてくれる。
でも・・・それも暫く出来ないんだ。
何となく寂しい気持ちになった時、アスランの手が頭から離れて行って・・・胸がちょっとズキッとした。
何だろう、これ・・・。
「最近家に来る時、いつも何か持ってきてたから今日もそうかと思って・・・」
「宿題ばっかりじゃないもん。」
「でも俺の部屋に来る時はいつも宿題持ってきてただろ?」
「そ、それは・・・その、アスランがずっとお部屋にいたから勉強ならお部屋に入っても邪魔だって言われないかと思って。」
「・・・俺がを邪魔だ何て言うはず無いだろ。」
そうだけど、分かってるんだけど・・・あの鳥を作ってる時のアスランは、今までに無いくらい真剣な顔してたから、何か理由がないと声掛けられなかったんだもん。
ぷくっ〜と頬を膨らませて上目遣いでアスランの方を見たら、クスクス笑いながらアスランが指をあたしの眉間にちょんと当てた。
「困った時ストロー噛む癖、直した方がいいよ。」
「あっ」
慌てて噛んでいたストローを口から離すと、そこにはくっきり残った歯の痕。
「もう俺がこうして注意してあげる事もあんまりないんだから。」
さり気なく言われた筈のアスランの言葉を聞いて、あたしの胸は紐か何かで締め上げられるように苦しくなった。
そのまま額をガラステーブルにくっつけて下を向くと、心配したのかアスランが小さい頃と同じように頭をポンポンと撫でてくれる。
「?具合でも悪・・・」
「・・・あの鳥、もしかしてキラにあげるの?」
「え?」
あたしの頭に置かれた手がピタリと止まり、動かなくなった。
アスランはいきなり本当の事を言われると、一瞬動きを止める事がある。
これを知ってるのは多分あたしと・・・キラくらい。
頭に置かれた手に自分の手を重ねて頭から下ろすとゆっくり顔をあげた。
「キラ、きっと喜ぶよ。」
「そう・・・かな?」
あたしを見ていたアスランの視線が一瞬、机の上に置かれている鳥の方へ移った。
何でだろう・・・一瞬視線が離れただけなのに凄く寂しい。
「だってアスランが自分の為に!難しいって散々言ってたのに・・・それを喜ばないなんておかしいもん!!」
「・・・」
気付くとあたしは膝を抱えて・・・泣いていた。
アスランとキラはすっごく仲がいい。
でもキラが欲しがってたからって、あたしと一緒にいられる時間を削ってまであれを作ってるアスランが・・・ちょっとヤダ。
それが我侭だって分かってるけど・・・キラだってあたしと同じで寂しいんだって、辛いんだって言うのは分かるけど・・・でも、溢れちゃった気持ちは止まらない。
せめてこれ以上アスランを困らせないよう、おかしな事を言わないように口をギュッってしてそれでも泣いちゃいそうだから唇を噛んだ。
泣いちゃダメ・・・アスラン、絶対困った顔してるから。
「・・・。」
ガラステーブルの向こう側にいたはずのアスランの声がすぐ側から聞こえる。
「。」
ちょっと遠慮がちに肩に手が置かれてそのままアスランの方に引き寄せられて、ぽすんってアスランの胸に倒れこんだ。
「は・・・すぐプラントに来るんだろ?」
ギュッて抱きしめられて聞こえてきたアスランの声。
家でもプラントへ移住の話は出ているけど、まだその時期までは決まっていない。
でも近々って言う風には聞いている。
だから「うん」ってアスランに言いたかったのに、今口を開くと絶対泣いちゃうから小さく頷くだけにした。
「とはまた、すぐ会えるんだろ?」
今度は何度も首を縦に振って意思を伝える。
余りに勢い良く首を振り過ぎた所為か、頭がくらくらした。
そんなあたしの様子を見ていたアスランが、ちょっと笑った気がした。
それを確認しようと顔をあげたら、アスランがあたしの頬を両手でそっと包んで困ったような、恥ずかしそうな・・・そんな顔で言った。
「はいつでも俺の側にいてくれるんだろ?」
「ん・・・うん。」
そう言ったアスランの声が優しくて、ずっと耐えてきた涙が零れてしまった。
でも小っちゃい頃からあたしの面倒を見てくれたアスランは、慌てずに側に置いてあったタオルを手に取るとそっと涙を拭ってくれた。
「今度会う時は少しは泣き虫、直ってるのかな。」
「わっ・・・分かんないっ、もん!!」
ぎゅっとアスランの服を握って泣きつくと、あたしが落ち着くまでアスランは背中をポンポンと撫でながらずっと抱きしめてくれた。
「全く、にはハロをあげたろ?」
「鳥が作れるならあたしも欲しい!キラだけなんてズルイ!!」
泣き止んだあたしは、最初に部屋に入った時とは全く逆の態度を取った。
アスランの背中にべったりくっつきながら自分にも何か作って欲しいとおねだりをする。
「はいはい、わかりました。困ったお姫様にも今度別のもの作ってあげるよ。」
苦笑しながら出来上がったロボットトリのスイッチを入れると、それは僅かに首を傾げるとチョンチョンとこっちに近づいてきた。
「トリィ?」
「うわっうわっ・・・すっごーい!!」
「手を出してごらん。」
「え?え?こう!?」
アスランに言われて手の平をトリの方へ差し出すと、赤い目が手を見たと同時にまるで本物の鳥みたいにあたしの手にちょんと乗った。
「凄いっ!可愛い〜!!」
「がそれだけ喜ぶんなら成功かな。」
本物の鳥のように動きながらあたしの肩に移動してきたトリにアスランが手を差し出すと、難なくそっちに移動した。
そのままどうするのか見ていたら、トリは突然羽を広げて部屋の中をくるくる飛び回り始めた。
ビックリして口を閉じるのも忘れて天井を飛んでいるトリを見ていたら、アスランがクスクス笑いながらあたしの頭に手を置いた。
「鳥、だから・・・飛ぶんだよ。」
「そ・・・か・・・」
それから暫くの間、アスランがロボットトリの『トリィ』のスイッチを切るまで・・・あたしは普通に空を飛ぶ鳥のように自然な動きをする『トリィ』から目が離せなかった。
ず〜っと納得行かなくて書き直しをした作品。
ヒロインの性格が3つ書いたけど全部違う(笑)
しかも他二つはまとまりがなかったので没(おいおい)
SEEDでここまで書き直しをしたのは初めてじゃないかな?
アスランがプラントへ行く前にトリィを作っている所に出没したお話ですv
幼い頃って好きな人が他の物(事)に集中して自分を見てくれて無いと拗ねたりしません?
今回ヒロインはキラに嫉妬してます(笑)こんなに小さいのに独占良く強いなぁ・・・。
ずっと納得いかなかったトリィの第三弾?取り敢えずこれでいっか(笑)いいのか!?本当にっ!?
ひとまずアスランを自給自足する私(苦笑)