「お、こんなトコにいたのか。」

「ディアッカ・・・どこか怪我でもしたんですか?」

女のクセに男装してザフトに潜り込んで来たヘンなやつ。

「いや・・・ただ医局に行ったらさ、色んな人間がお前を捜してたから・・・」

「え?」

慌てて手に持っていた書類の束を胸に抱え直して踵を返そうとするの手を慌てて掴む。
ったく、コイツもイザークと一緒で人の話最後まで聞かねぇんだから。

「待て待て、話は最後まで聞け。」

「っ!あぁゴメン。」

「みんながお前を捜していた。だけどお前が午前中は隊長の所にいるってのは、今じゃお約束。だから皆もう一回午後に出直すって事でその場は落ち着いた。」

「そうなんだ・・・誰が来ていたか知ってる?」

誰がお前を訪ねてきたかって?

「オレが医局へ行った時には・・・ラスティとミゲルがいて、その後に見慣れないヤツラが数人来たかな。」

オレが一番だと思ったんだけど・・・まさかラスティがミゲルと一緒に医局に来てるなんてこれっぽっちも思わなかったぜ。

「見慣れない・・・白衣着てた?」

「あぁ・・・」

「そっか、じゃぁきっと午後のミーティングの確認だ。他は?」

「あぁ?まだ言えってのか?」



何でオレがそこまでしてやんなきゃなんねぇのよ!?



ため息をついてからそう言ってやろうと思ってを見た。
・・・何だってそんなまっすぐな目でオレを見てんだよ。
一点の曇りもない、青の海を思わせる目が反らされる事無くオレの目を見つめている。

「・・・イザークとニコルも来た。」

「え!?イザークがっっ!!」

何だってイザークにだけ反応すんの?
ひょっとして・・・気があるとか言うヤツ?
だけどオレのその考えは単なる杞憂だった。
キョロキョロ周囲を見渡すとオレを手招きしたので、ちょっとだけの方へ体を傾けてまるで内緒話をするように顔を近づけた。

「・・・な、何か怒ってた?」

「ぶっっ!」

「ディッディアッカ!?」

「あははははっっ!」

ヘンな事考えて損した。
お前のトコにイザークが来ただけでそんな風に思うとはね・・・アイツも可哀想に。
こみ上げて来る笑いがどうしても堪えられなくて暫く腹を抱えて笑っていたら、がやれやれと言った表情でその場に座り込んでオレの顔を覗き込んだ。

「で、結局ディアッカは僕に何の用?」

「あ?あぁ・・・オレはたいした事じゃねぇんだけど。」

笑いすぎて溢れた涙を拭いながら、ポケットに手を突っ込んでその封を解く。

、ちょっと目閉じて口開けな。」

「・・・ん?何で?」

「イーもんやるから、ほら・・・」

手での目を隠すようにすると、は慌てて手にしていた書類を床に置いてオレの言うとおり目を閉じて小さな口を開けた。



本当にやるとは思わなかった。
今なら誰も見てないし、コイツも目を閉じてる。
ナニをやってもばれない・・・けれど ―――




ふっと口元を緩めてポケットに忍ばせていた物をひとつ取って、雛のように口を開けているへ運んでやった。

「・・・甘い!」

「そ、コレがオレの用事。」

目を開けて嬉しそうに口の中の物を転がしているの前に、和紙と言う紙で包まれている手の平サイズの小さな四角い箱を渡した。

「コンペイトウ・・・って言うんだとさ。」

「コンペイトウ?」

「ま、たんなる砂糖の固まりなんだけど・・・お前こう言うの好きかと思ってさ。」

「うん!好き!!」

両手で箱をしっかり握り締めながら頷くの表情は、男装している今でも可愛いとさえ思えてしまう。
でもコイツが一番可愛く見えるのは・・・

「あっ・・・アスラン!!」

通路の遥か先を歩いている小さな赤い影に向けて大きく手を振ると、相手もそれに気付いたのか一緒にいた相手から離れてこっちへやって来た。

「・・・あ〜あ、来ちまった。」

ポツリと呟いてももうにはオレの声は届かないし、さっきまでオレを見ていた瞳にももうオレは映っていない。

、ディアッカ・・・こんな所で何を・・・」

「別に。アンタには関係ない。」

「あのねアスラン!これねディアッカがくれたの!!凄く甘くて美味しいんだよ!」

「へぇ・・・」



そう、が一番可愛く見えるのは・・・アスランと話をしている時。
全身でアスランの事が好きだと言っている姿は見ていてムカつく気もするが、それ以上にその笑顔に見惚れてしまう。
出来るならその笑顔をオレに向けて欲しいなんて・・・くだらない事を思うほどに、コイツにやられちまった。



一生懸命アスランにコンペイトウの説明をしているの後ろ頭を拳で軽く叩くと、床に置いてあった書類を手に持った。

「一気に食いすぎるとブタになるゼ。オレちょっと医局に用事あるからこれ持ってってやるな。」

「あ、ありがとうディアッカ。」

「はいはい。」

そのまま後ろを振り返らず、急がず慌てずいつものペースでその場を離れた。





好きになった方が負け
なんて言葉が脳裏をよぎる・・・だが、まだ終わったわけじゃない

「いずれ絶対落として見せるから・・・覚悟しとけよな―――。」

言いながらに食べさせた時に微かに触れた指に唇を落とす。
本人も知らない、間接キス。





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あっはははははっやだなぁディアッカまでヒロイン争奪戦に参戦?
この人は遠くで見ていて楽しむタイプ・・・のはずだったのに(苦笑)
知らないうちにこうなってしまったよ・・・キャラの一人歩き?
んーいつかヒロインにディアッカの事を「ディア」って呼ばせたいって言う野望があるんだけどそれが叶うのは何時だろう!?
何となく・・・凄く親しげな感じがして好きなんですがv
医局に皆がやってくるのは言わずもがな・・・ヒロイン目当ての一言につきます(笑)
え?隊長はどうしてるのかって?
・・・午前中仕事で独り占めしてますよ(笑)その辺しっかりしてますから、アノ人は♪