「まぁ様!凄いですわ!!」

「そ、そうかなぁ・・・」

「ハロ!」

ラクスの家のキッチンを借りて、モニターに映し出されている手順を繰り返して生まれて初めて作った・・・ケーキ。
オーブンを開けると甘い匂いを漂わせながら、綺麗にふっくら膨らんだ黄金色のケーキが姿を現した。

「これならきっとアスランも喜んでくれますわv」

「えへへへへ・・・」

「オマエモナ!」

パチパチと拍手をするラクスの回りをハロが意味もない言葉を繰り返しながら飛び回る。



明日は―――大好きなアスランの誕生日。










パン パン パパンッ☆

「うわぁっ!」

起床の目覚ましがなるよりも早く、アスランに向けて前もって用意していたクラッカーを鳴らす。
ちなみにイザークの時にも使用した、音だけのクラッカー。
本当は紙吹雪が出てくるやつも用意してたんだけど、朝から掃除はちょっと嫌だからそれは夜用に取っとくことにした。

「お誕生日おめでとうアスラン♪」

「・・・・。」

あっあれ!?アスランどうして頭抱えてるの!?もしかして頭痛い?

「アスラン頭痛?」

「いや、そう言う訳じゃないけど・・・」

「じゃぁどうしたの!?」

「・・・それ、どうしたの?」

不思議そうな顔をしてあたしの手元に残ってるクラッカーを指差すアスラン。

「これ?この間ラクスの家に行く途中に買ったの。」

あっさりそう言うとアスランはまた大きなため息をついた。

「それか・・・」

「!?」

「随分前にイザークがにヘンなおもちゃを与えるなって言ってた事があってね。」

「イザークが?」

「俺はにそんな物あげたつもりないから知らないって言ったんだけど・・・まさかこれだったなんて・・・」

「えへへぇ〜月ではよくこれ使ったよねv」

笑顔で空になったクラッカーを振り回すと、アスランもようやく笑顔になってあたしの手を掴んだ。

「・・・懐かしいな、あの頃誰かの誕生日の時には驚かすようにこれ鳴らしたっけ・・・」

「うん!」

は初めてこれを聞いた時・・・泣いたんだよな。」

思い出したように笑い出したアスランの頭にクラッカーを投げつける。

「あれは、キラとアスランが・・・驚かすから!」

「驚かすためにやってるんだから、当たり前だろう?それにその後、その倍の数を俺の時にやったじゃないか。」

「あー・・・そう言えば・・・でもそれはキラが言い出した事で・・・」

「やっぱりキラか。が言い出す訳ないって思ってたんだけど・・・」

そんな風に昔話を始めていたらいつの間にかお互いの出勤時間になっていて、朝食も食べずに大慌てで軍服に着替えた。

「アスラン!夜は絶対部屋に戻ってね!!」

「え?」

「あたしとラクスからプレゼントがあるから!」

「・・・分かった。今日も一日頑張るんだよ?」

「うん!」

いつものように頭を撫でてもらって、今日は医局での用事が先にあるので突き当たりの通路でアスランと別れた。
さーて、早めに仕事終わらせて部屋の飾りつけやらなきゃ!





「・・・おっそいなぁ、アスラン。」

隊長に無理を言って今日の業務の一部を明日に持ち越させてもらって、アスランよりもホンのちょっと早めに帰らせてもらった。
隠れて作ってた部屋の飾りつけも完了して、ラクスの所で作らせて貰ったケーキもあたしのベッドに隠してある。
本当は机に出しといてもいいんだけど、そこには既にあたしとラクスからのプレゼントが乗っている。
楽しみは少しずつ出したほうがいいもんね。

「隊長のスケジュールだとクルーゼ隊はもう終わってるはずなんだけど・・・」

その時部屋の通信ランプがついたので慌ててこちらの画像データを切って音声データだけをONにした。

「はい、こちら。」

「あぁ・・・俺だけど。」

「アスラン?どうしたの?」

珍しい・・・普段ならどんな連絡でも部屋に直接来るアスランが通信機使うなんて。

「急遽クルーゼ隊が出撃する事になった。」

「え?」

「と言っても今日こちらへ帰還する艦を迎えに行くだけなんだけど・・・」
「おい!貴様!何をやっている!」

「あ・・・あぁイザークすまない。だから部屋に戻るのは遅くなるから・・・その・・・」


「・・・分かった。気をつけて行って来てね。万が一にも怪我したらすぐに迎えに行くから。」

「そんな事にはならないよ・・・それじゃぁ。」



――― プツン



そう言ってアスランの声が聞こえていた通信は途切れた。

「・・・何も今日クルーゼ隊を任務に駆り出す事ないじゃん。」

文句を言いながらアスランのベッドに仰向けに倒れこむ。
机の上にはあたしとラクスから新しい工作キッドと廃棄処分となっていた細かな部品、勿論クルーゼ隊長に一つ一つ許可を貰っているので軍務規定にはひっかからない。(ちなみにゴミだからと言って勝手に部品を持ち出すと軍務規定に引っかかってしまって処罰が与えられる。)
寝返りを打ってふと視線を下げると、ここに来て初めて着たワンピースが目に入る。

「・・・ごめん、ラクス。前に送ってもらったワンピース・・・アスランに見せる前に脱ぐ事になりそう。」

以前大量にキャベツを送ってきた中に入っていたピンクのリボンがかけられた白い箱。

中に入っていたのは・・・淡い水色のワンピース。

見た時から可愛いって思ったし、すぐに着てみたいって衝動に駆られたけど折角なら何かのお祝いの時に着てみたいって思って今日まで取っておいた。

「・・・アスラン。」

いっぱいいっぱいお祝いしたかったのになぁ。
ここにいないラクスと・・・キラの分も・・・。
そんな事を思いながら今まで寝る間も惜しんで飾りを作っていた疲れが出たのか気付いたら目が開かなくなって夢の世界に行ってしまった。

夢の中には勿論アスランがいて、あたしの作ったケーキを囲んでラクスもキラもいた。
皆で『アスランおめでとう』って言ったら少し恥ずかしそうに笑いながら、でも嬉しそうに『ありがとう』って言ってくれるアスランがいた。










「・・・。」

「んー・・・
もー食べれない。

「まだ何も食べてないよ。」

食べても食べてもお皿からなくならないご飯、んー・・・もうお腹いっぱい。

「ほら、!」

「・・・え?ア、アスラン!?」

「ただいま。」

「え?え?任務は!?艦の護衛に行ったんじゃないの!?」

まだ覚めない目を一生懸命手で擦りながらアスランの顔を覗き込めば、苦笑しながら部屋に置いてある時計を指差した。

「もうすぐ0時だよ。」

「・・・あたし寝ちゃったんだ。
ってええええー!!

ガバッと起き上がって時計を手に取るとあと僅か数分で時計の針は今日の終わりを告げてしまう。
これからケーキを出してろうそくを立てたりしてたら、絶対今日中に考えていたお祝いは出来ない。

?」

「あたしが寝ちゃったから・・・」

「え?」

肩を落としながらも自分のベッドの上に置いていたケーキの箱を取り出してアスランに差し出す。

「ろうそく立てたりしたら時間、過ぎちゃうから・・・せめてこれ受け取って・・・」

「時間・・・」

ポツリと呟くとアスランはケーキを受け取らず机に置いてある時計を手に取ると、側にあったドライバーで器用に時計を解体してしまった。

「アッアスラン!?」

そして時計の原動力となっている物だけを取り出すと再びドライバーでふたをして机の上に戻した。

「これで時間は十分だろ?」

「え?」

にっこり笑顔で示された時計の針は0時5分前でその動きを止めている。

「一緒にろうそく立てて、俺が吹き消して・・・それで一緒にケーキを食べよう。」

「・・・うん!!」

ケーキを持ってなかったらすぐにアスランに抱きつきたくなるくらい嬉しかった。
あたしの大好きなアスラン!
いっぱいいっぱい感謝と大好きを込めてお祝いするからね!!




















「すごい事になったな。」

あの後、が用意していたって言うクラッカーを鳴らした事によって部屋のあちこちに紙吹雪が散らばった。
その後が生まれて初めて作ったケーキにろうそくを立てようとして、思わず手が止まった。

だって一応誕生日ケーキだろ?
普通ケーキって言われたら生クリームとかイチゴとか想像するじゃないか!
それなのに・・・どうしてピンクのクリームが塗られてて、しかも丁寧にハロの顔まで書いてあるんだ!?
・・・って誰が考えたのか言わなくても分かるけどさ。

そこにろうそくを立てるって言うのはちょっと複雑な気分だったな。
それ以外、生地は普通のスポンジだったしイチゴも入ってて初めて作ったとは思えないくらい美味しかった。
外見だけが・・・どう考えてもラクスの要望としか思えないんだけど。

「ん〜・・・もぉ食べれない。」

「また寝ぼけてる。」

くすりと笑ってその柔らかな髪を撫でてあげれば嬉しそうにその頬が緩む。
ベッドに腰掛けた俺の膝を枕に眠っている今日のパーティの主催者は、一生懸命今日の飾り付けやプレゼントの説明をしてくれて何度も何度もおめでとうと言ってくれた。

「・・・俺の方こそ、ありがとう。」

机の上ではが眠りにつく前に修復した時計が静かな音を立てて正しい時刻を示している。

「本当は・・・もっと早く帰ってたんだけどな。」

予定よりも艦がこちらに接近していたせいで部屋には23時頃戻る事が出来た。
部屋に入ってすぐの名前を呼ぼうとしたら、いつもないはずの飾りとテーブルに置かれていたプレゼントとメッセージカードに驚いてすぐに声が出なかった。俺を喜ばせようとしてくれた事が嬉しくて、寝息の聞こえる俺のベッドへそっと近づいてを驚かせようとカーテンを開けて・・・逆にビックリした。

そこにはいつもの軍服姿ではなく、白衣姿でもない・・・今まで見たこともない水色のワンピースを着た、可愛い女の子が寝ていた。
それがだって頭では分かっていたけれど、あまりにも今までと違う姿に戸惑ってしまった。
夢を見てるのか何かもごもご呟く姿は、いつも隣のベッドで寝ていると替わりはない。
吸い込まれるようにベッドの脇に腰掛けて、ちょっとした物音にも気を使ってそのままじっと寝顔を見続けていたら・・・いつの間にか時間が経っていた。

「ただ着ている服が違うだけで女の子は随分印象が変わるんだな。」

顔を隠すためギリギリまで伸ばしている前髪が目にかかりそうなので、手で左右に分けてやる。

・・・アスラン。

寝言で呟かれた俺の名前。
それに返事をしてやると嬉しそうな顔をして笑った。
それを見ていたら自然と俺の中に何かが溢れてきて、そっとに顔を近づけた。



一生懸命俺の誕生日を祝ってくれた、可愛い幼馴染に・・・感謝と愛情を込めて・・・。

「・・・どうもありがとう、。」

この時俺は、初めて彼女の額に・・・キスをした。





BACK



★ Happy Birthday ★

アスラン・ザラ

アスランお誕生日おめでとうv話。アスランサイドオマケ付(笑)
なぜかって!?それはアスランが一番のお気に入りキャラだから!!
今回思いついていたシチュエーションはアスランが時計を破壊・・・じゃなくて分解するシーン。
そうすると時計は止まるでしょ?するとゆっくりお誕生日会(ヒロイン主催)が出来るでしょ?
だから「これで時間は十分あるよ」って言う台詞が出てくるわけで・・・(汗)
あとケーキなんだけど最初は普通のケーキだったのに、ラクスの家のキッチンって設定にしたらいつの間にか「ピンクハロケーキ」になってしまった(大爆笑)
絶対ラクスが「ピンク色が可愛いですわv」と言ったに違いないんですけどね(苦笑)
アスランがホンのちょっと前に進んだ・・・気のする話ですv
問題は・・・The first impressionが上がってないのに進んでるよ、おいっ!っと言う点でしょうか(苦笑)