「至急下記の場所に来られたし・・・一体何でしょう?」

午前中のシュミレーションを終え、部屋へ帰ってきた時扉に挟まれていた一枚の手紙。
可愛らしい黄色い便箋の裏には愛しい人の名前が刻まれていた。
綺麗に折られていた手紙を開くと書かれていたのは先程読んだ一文のみ。

「・・・行ってみれば分かりますよね。」

から初めて貰った手紙を最初の形に戻してポケットにしまうと、僕は午後のシュミレーションの時間を確認してから指定された場所へ向かった。










「えっと・・・ここであっていますよね。」

指定された場所は以前隊長に頼まれてオルガンの調子をと二人で見に来た倉庫でした。
カードキーを通さないと開かないはずの扉が少し開いていてそこから光が洩れていたので、僕は扉に手をかけゆっくり開いた。

「まぶし・・・」

暗い通路から明るい室内に入って目がくらんだ瞬間、突然大きな音が僕の耳に届いた。





パン パン パパンッ☆



「!?」

音とほぼ同時に僕の目の前にキラキラ輝く紙吹雪が降り注ぎ、それが全て床に落ちきった後・・・の声が僕の耳に届いた。

「ニコル!お誕生日おめでとう!!」

「・・・?」

「驚いた?」

満面の笑みを浮かべながら、手に持っていた使用済みのクラッカーを袋に入れるを見て自然と僕の頬も緩む。
本当に貴女は・・・いつも僕を驚かせてくれますね。

「えぇ、ビックリしましたよ。部屋に入るなりクラッカーが鳴るとは思ってもみなかったので・・・」

「お祝いだからねv」

「・・・お祝い?」

「だって今日、ニコルお誕生日でしょ?」

「あぁ・・・そう言えば、今日は3月1日でしたね。」

日々の訓練や任務、様々な事に追われていて今日が自分の誕生日だと言う事をすっかり忘れていました。そう言われて見れば今朝日付指定で僕宛の荷物が家から届いていたような気がしますね。そんな風に考え事をしていたら急にが僕の手を引いて歩き出しました。

?」

「ね、ニコル。こっちこっち!」





手を引かれてたどり着いた先は・・・以前に一度だけ触れた事のあるオルガンの前でした。

「ここ!ここ座って!」

「は、はい。」

彼女が先に椅子に座り、自分の左隣を叩いて座るように言うのでちょっと遠慮がちに腰を下ろすとが小さな鍵を取り出しオルガンのフタを開けた。



以前見た時は随分埃だらけだったはずのオルガンが、今日は綺麗に磨かれている。
そう言えばこの部屋も埃が充満していたはずなのに入ってきた時には一切埃が立ちませんでしたね。



――― 定期的に清掃するようになったんでしょうか?



隣に座ったはというとフタを開け、電源スイッチをオンにするとペダルを踏みながら音を出していた。
・・・大抵の考える事は読めるはずなんですが、今日ばかりはその意味が分かりません。

「えっと・・・それでは!・・・頑張ります。」

の行動の意味を考えながら首を捻っていると、彼女がそっと鍵盤に指を置き・・・誰もが知っている、今日の為にある曲を片手で弾きながら歌い始めました。





以前、は僕がオルガンを弾いた時、手がタコのようだと言っていましたよね。
凄い速さで動いていて、指が何本にも見えるからだと。
そんな風に言っていた彼女が、今僕の隣で・・・片手で「Happy Birthday」を弾いて歌ってくれている。

僕等二人しかいない静かな倉庫に響くのは、一和音だけのオルガンの旋律。
そしてそれにのせて小さな声でまるで囁くように歌ってくれるの・・・優しい歌声。

ラクスさんの歌声は癒しの天使の歌と称されますが・・・僕にとっての天使の歌声は、ですね。





あぁ・・・僕はこんなに幸せなプレゼントを今まで貰った事がありません。















彼女が歌い終えた瞬間、僕は惜しみ無い拍手を彼女へ送った。

「凄いです!僕、こんな素敵なプレゼント初めて貰いました。」

「ラクスに教わって練習したんだけど・・・両手がそれぞれ別の動きをするのが難しくて片手でごめんね。」

「そんな事ありません。練習大変じゃありませんでしたか?」

運指法もキチンとしていたし、リズムもちゃんと取れていた。ついこの間まで鍵盤に触れた事の無い人がここまで出来るのは結構大変だと言うのはピアノに慣れ親しむまで時間のかかった僕だから良く分かります。

「んー何度かアスランと一緒にラクスの家に行って、あとは隊長にここの鍵を借りて練習したの。」

「・・・」

「ニコルにあげられる物が何も思いつかなくて、こんなのになっちゃったけど・・・」

恥ずかしそうに頭をかく彼女の目を見つめ・・・ニッコリ微笑む。

「こんな物、じゃありませんよ。」

「え?」

そっと彼女の体を抱き寄せてその肩口に額を乗せ、今の素直な気持ちを彼女へ伝えた。

「言いませんでした?こんな素敵なプレゼント、初めて貰いました・・・って。」

「ニコル・・・」

「本当にありがとうございます、。」

ちょっとだけ力を入れて彼女の体を抱きしめる。

すみません、アスラン。
今だけですから・・・今だけ、彼女との時間を僕に下さい。

耳に届く彼女の鼓動がいつもより早いのは、僕が抱きしめているからか、それとも慣れないオルガンを弾いた事への緊張かわかりませんが、それが聞えるほど近くにいる事がとても嬉しく感じます。





それから午後のシュミレーションが始まるギリギリの時間まで、僕はに色んな曲をオルガンで弾いて聞かせました。
それをすぐ隣で見ているは、いつも以上に眩しい笑顔を向けてくれました。

本当に貴女は・・・どうしてそんなに他人を喜ばせるのが上手いのでしょう。
そんなに、やはり僕は惹かれずにはいられません。





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★ Happy Birthday ★

ニコル・アマルフィ

ニコルお誕生日おめでとうv話。
遅れてゴメンね・・・じゃないんですよ今回は(TT)
誕生日間違えて覚えててゴメンね←馬鹿。(某サ○ジと間違えて覚えていたらしい)
・・・と言う訳で今回一日遅れました、が気持ちの上ではギリギリ間に合ったと思ってます(勝手に)
前にニコルとヒロインでオルガンを発見したのでそのネタをつなげてみました(笑)
記憶能力が凄いヒロインなら暗記は得意だろうケド、それに指がついていくかは疑問。
片手ならついていくけどきっと両手が違う事をやるのは無理、と勝手に決め付けたので(笑)片手で弾いています。
本当ならニコルと一緒に弾かせてあげたかったんだけど・・・じ、時間が無くてゴメン(笑)

・・・それにしてもニコル、何故キミは途中でアスランに謝るかな(苦笑)
思わず「何で!?」と書いてた手も止まりましたよ!そこまで遠慮しなくても・・・(汗)
ん〜でもまぁそんなニコルが好きだから、今回お誕生日の歌を歌ったんですけどね。
今回私ってばニコルに対して謝ってばかりだわ(爆笑)
皆さんはニコルの誕生日、しっかり覚えておいてね?3月1日ですよぉ〜!!