「こんばんは。」

家の前に座り込んでいた人影に真っ暗闇な中声をかけられたけど、大して驚きもせず同じように挨拶を返す。

「こんばんは、アスラン。」

「すまない、こんな所で・・・」

「ううん、それはいいけど・・・どうしたの?」

「今朝鍵をテーブルに忘れていったみたいなんだ。それで・・・」

「いや、鍵の話じゃなくって・・・」

今朝、アスランが家を出る時にはごく普通の格好をしていたはずだ。
けれど、今目の前にいるアスランは白シャツに黒の燕尾服。
それに緩められた襟元には黒の蝶ネクタイがかかっている。
更に右胸には何かに出席した証、とでもいうように紫の薔薇が止められていた。

「何かあった?」

「まぁ、あったといえばあったけど・・・あんまり俺には関係ないかな。」

少し困ったような表情でこちらを見上げているアスランの姿に、思わず見惚れてしまい手に持っていた鍵を落としてしまう。

「鍵、落としたよ。」

余程疲れているのか、落ちた鍵を指差しながらもアスランは腰を上げようとしない。
取り敢えず落としてしまった鍵を拾うと、素朴な疑問をたずねてみた。

「ね、何か賞でも貰ったの?」

「どうして?」

「だって、何となく表彰式にでもでそうな格好じゃない?」

「・・・俺は別にそのまま授賞式に出ても構わないって言ったんだが、イザークが『公式の場にそのままの格好で出るヤツがあるかっ!』って言ってね。一式用意されて無理矢理着せられた。」

そう言っているイザークの姿と、横で苦笑しながらも服の手配をしているディアッカの姿が目に浮かび思わず笑みがこぼれる。

「笑う事ないだろう。」

「ご、ごめん。それで?」

「・・・それだけだよ。」

「でも何を受賞したの?」

「何だったかな。」

横に置いてあった大輪の真っ赤な薔薇の花束を膝に乗せて、あたしの方を見上げるアスランの顔はちょっと照れくさそうだった。

「ね、何受賞したの?」

「・・・はなんだと思う。」

「ん〜・・・」

両手を組んで首を傾げ、最近の動向や雑誌の内容などを頭の中に反芻させる。
あらゆる出来事が浮かんでは消え、なんだろうなぁと一生懸命考えていると目の前のアスランが声を抑えて笑い出した。

「・・・アスラン?」

「ごめん、あんまりにもが真剣な顔してるから・・・つい・・・」

「アスランが聞いたんでしょ?」

「最初に聞いたのは君だろう?」

そう言えばそうだっけ?と思いながら、もう一度アスランにたずねる。

「降参、教えて。」

おねだりするように首を傾げれば、アスランは優しく微笑みながらこういった。

「家の中に入ったら、にだけ教えてあげるよ。」





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え〜っと、随分と前に雑誌のキャラ投票でアスランが1位になりまして。
その時の表紙がこの話に出てくるような格好だった訳なのですよ。
日記か何かで書いた小話を発掘したので、ちょっと手を加えてUPしてみました。
なんか久し振りに種校正しましたってか、まだあったんだねぇ〜(笑)
そして校正したり、ちょこっと資料を見たりするとやっぱりアスランが好きだなぁ〜と思うのでした。