「はぁ・・・」

学校が終わって、良くアスランと一緒に遊びに来た小高い丘の上で膝を抱えて一人のんびりと空を眺めていた。
アスランがプラントへ引っ越してから1ヵ月。
学校の皆はもうアスランがいない生活に馴染んでいつもと変わりなく生活をしている。



でも・・・僕は・・・



「はぁ・・・」

何度目かのため息をついて頭を抱えると、肩に乗っていたトリィが僕の腕に移動してきた。

「トリィ?」

アスランが引っ越す時にくれたロボット鳥のトリィは、僕を心配してくれているかのように顔を覗きこみながら首を傾げてる。

「・・・平気だよ。」

「キラー!!」

振り向くよりも早く背中に大きな衝撃。
僕はその衝撃に耐え切れず、思わず両手を地面についた。

後先考えずこんな事するのは・・・

!いきなり人に飛びつくなって何度言ったら分かるんだよ!」

「イキナリじゃないもん!ちゃんと声かけたもん。」

そりゃ確かに声はかけたけど、名前呼んだだけだろ?

「キラがボーっとしてるのが悪いんだもん。」

そう言って僕の背中にギュッと抱きついてきたこの子は
アスラン家のお隣さんで、アスランの幼馴染の女の子。
あんまり詳しい事は知らないけど、両親が医療関係に勤めててあんまり家にいない。
よくアスランの家に遊びに来ていたから、自然と一緒に遊ぶことも多くなり、気付けば3人でいるのが当たり前になっていた。

小さい頃は本当にお人形さんみたいに可愛かったんだよなぁ・・・大きな目に真っ白な肌、口はすっごく小さくてまるでさくらんぼみたいに赤くて・・・初めてアスランに紹介された時、アスランの後ろに隠れて恥ずかしそうにしてたの、すっごく覚えてる。
だからその頃の僕はとアスランが一緒にいるところを見るたび、母さんに妹が欲しいってねだって困らせてた。
でもが人見知りしなくなって、僕にも笑ってくれるようになったらそんな事言わなくなったんだけどね。

「もぉ、いい加減背中から下りなよ。」

「え?何で?アスランいっつもそんな事言わないのに・・・」

「アスランはアスラン、僕は僕!」

不満そうに僕の首に回していた手を解くと僕の隣に腰を下ろした。

小さい頃はが慕ってくれるの嬉しくて、僕も良く抱っこしたりしてたけど・・・今はもう昔とは違うんだから!
一応僕も男で、思春期だって事分かってる?

同じくらいだった身長だって今では僕の方が少し高い。
それに体つきだって昔とは全然違ってきてるんだから、少しは自分が女の子だって事理解して欲しいよ!!

「はぁ〜・・・」

「キラ?どうしたの?」

「・・・別に。」

「別にって、眉間に皺寄ってるよ?」

自分の眉間に指を当ててるの表情を見たら、再びため息が零れた。



――― ダメだ・・・絶対、意識してない



「もぉ、ホント変なキラ。」

「変なのはの方だよ。こんな風に男に飛びつくなんて・・・」

「キラだからいいじゃん。」

「そういう意味じゃなく・・・て・・・え?」

「キラだからやってるんだよ。他の人になんかやらないよ。」



それって、どういう意味?



「だってキラはアスランと同じ、大事な人だもん。」

太陽を背に微笑みながら、そう言ってくれたは・・・可愛いっていうより、凄く綺麗に見えて思わず声をなくした。
それをどう取ったのか知らないけれど、置いてあったカバンを持ってが立ち上がった。

「帰ろう、キラ。」

「・・・うん。」

「今日は絶対成功させるからね。ロールキャベツ。」

「うん・・・って、えー!!



し、しまった!今日はその日だった!!



アスランに食べさせるんだってがロールキャベツを母さんに習い始めたのはいいけど、出来上がる品々は食べ物・・・とは言い難い物ばかり。
同じロールキャベツを作ってるはずなのに、どうして毎回毎回形も味も違うかな!?

「食べてくれるでしょ?キラ!」

「う・・・」

「今日は上手く行く気がするんだ♪」

それ、この間も言ってたけど・・・出来上がったのは、キャベツにひき肉乗せみたいな料理だったよね?

「頑張るぞー!」

「・・・」

さっき、一瞬だけ見惚れるほど綺麗な女の子だったは、もういつもの幼馴染の顔に戻ってる。

アスランもこんな風に色んなの表情見たのかな?
・・・それなら、この鼓動の早さの意味も、分かるだろうか。

「キラー!早く来ないとトリィ貰っちゃうよ?」

いつの間にか肩に乗っていたトリィがの手に乗っている。

「わかったよ。」

重い腰をあげて立ち上がると、トリィが僕の方へ飛んできた。

「トリィ?」

首を傾げて鳴くトリィの姿が、今、ここにはいないもうひとりの大事な幼馴染…アスランの顔に重なる。
それはまるで、色々大変だけど頑張れ、って励ましているようにも見えた。



早く、戦争が終わらないかな…
そうすれば、また3人で遊べるのに






「キラー?」

「今行く!!」

でも、今は世界を巻き込む戦争よりも、僕の夕飯の方が大事…かもしれない。
うぅ〜今日こそ、今日こそはちゃんとした物が食べられますようにっ!!





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人間、なんでも最初は失敗ばかりってのがお約束。
アスランにまともなロールキャベツを食べさせる前段階で、キラが見事に実験台となっておりました(笑)
アスランがプラントに行っちゃってから、暫くは二人でいる事が多かっただろうから、それはそれで面白そうなんですけどね。
これまた発掘してたら出てきたので、ちょっとだけ手を加えてUPしてみました。
…文章を見直すのが苦しい今日この頃(苦笑)