「・・・」
今日、アスランがお休みだって言うから隊長に無理を言って同じ日にお休みを取らせてもらった。
折角だから一緒にお買い物に行ったり、映画を見たりって色んなプランを考えてたのに・・・
「あぁ、そのまま頼む。」
部屋でパソコンに向かってるアスランは今朝からずっとメールの返信や、次々かかってくる通信にかかりっきり。
ついさっきまでミゲルやラスティと話してたと思ったら今度はニコルが提出書類について通信を送ってきて、今はそれにかかりっきり。
「そうだな・・・それについては今から添付書類を送るから、それも参考にしてみてくれ。」
アスランの目は、パソコンをずっと見てる。
アスランの手は、ずっとパソコンに触れている。
アスランの声は・・・パソコンに向けて発せられている。
「・・・」
このままパソコンを見てたら手に持ってるコップの中身をかけてしまいそうなので、ベッドに寝転んでわざとアスランから視線を逸らした。するとベッドに置いてあったラクスのネイビーちゃんがあたしのいる方へやってきた。
「オマエゲンキカ?」
「・・・ネイビーちゃん。」
目を赤く点滅させて、ぴょんぴょん跳ねているネイビーちゃんは先日ラクスから修理を依頼された物だ。
暑い日が続いたようなので一緒に水遊びをしていた時、ネイビーちゃんだけプールに落ちたらしい。
いくらアスランの機械が優秀でも水の中に沈んでしまってはお手上げだ。
引き上げた時には既にショートしていて動かなかったらしい。
けれどそれを元に戻してしまうアスランは・・・本当に凄いって思う。
「元気になって良かったね。」
「ハロゲンキ!」
アスランに相手にされないあたしを慰めるかのようにネイビーちゃんは寝転んでるあたしの周りをぴょんぴょん飛び回る。
「あはははっ!」
「ガンバレーガンバル!」
ネイビーちゃんのその言葉が今の自分に向けられている気がして、ちょっと・・・ホンのちょっとだけ元気が出た。
アスランが皆に慕われてるのは良く分かる。
誰よりも面倒見が良くて、頼られると無碍に出来ない・・・優しいアスラン。
チラッと視線をパソコンの画面に向けると、さっきまでニコルと通信で話をしていたはずが今度はイザークに変わっている。
いつもの喧嘩口調のようなイザークの声が、少し離れたあたしの所まで聞こえきた。
休みの日まで通信を使って文句言わなくてもいいのに。
自然と眉間の皺が寄ってしまう。
いけないいけない・・・折角のお休み、アスランと二人でいられるだけでも良しとしなきゃ!
「貴様!それでいいと思ってるのか!」
「だからその件については既に隊長に・・・」
「おっ通信繋がってんじゃん。おいアスラン、帰りにどっかでさぁ・・・」
「ディアッカ!今俺がコイツと話をしてるんだぞ!」
「俺は買出しの為に休んでるわけじゃないんだぞ。」
ため息交じりのアスランの声、今日一日ずっと繋がれている通信回線上の同僚の声。
あたしの胸の中で、何かがちりちりと音を立てて燃えている。
「だから今日は休みなんだって!」
「貴様の休みなど知った事か!」
イザークの声を引き金に、あたしは手に持っていたネイビーちゃんをベッドに置くとゆっくりアスランの背後に近づいた。
アスランがイザークとディアッカと何か喋ってる。
でも、もうその内容は耳に届いていない。
覚えてるのは・・・画面に映ったイザークとディアッカが、珍しく驚いた顔をしていたという事だけ。
プツン
気付けばあたしの指はパソコンの電源に置かれていた。
「・・・え」
「・・・あ」
真っ暗になった画面を唖然と見つめているアスランと、自分の指が電源に置かれている事に気付いて慌てて手を引っ込めた。
やだっ・・・あたし今、何やったの!?
「・・・?」
「・・・」
呆然と自分の手が置かれていた場所を見つめる。
あたし、今・・・電源切った?
パソコンの画面には既に何も映っていない。ただまっ黒な画面にアスランの驚いた横顔が鏡のように映っているだけ。
「ごっ・・・ごめんなさい!」
今更ながら自分のしでかした事の大きさに驚いてアスランに頭を下げる。
相手と話してる最中に回線を強制切断するなんて何て事しちゃったんだろう!
まだ相手がイザーク達だからいいけど、これが隊長や上院議員の人だったらどうすればいいか・・・考えただけでも血の気が引く。
「ごめ・・・ごめんなさいっ・・・」
声の震えが体に伝わるかのように、徐々に握り締めている手も震え始める。
どうしよう・・・アスラン、怒ってるよね。
「ほん・・・本当に、ごめ・・・」
視界が揺れ始め、あと少しで泣き出してしまいそうな自分の身体を抱きしめようとするよりも先に、目の前のアスランがそっと抱きしめてくれた。
「・・・ごめん。」
「え・・・」
「ちょっと待たせすぎた、かな。」
「アスラン?」
「前から言ってたもんな。休暇が重なったら一緒に出掛けようって。」
「・・・」
「それなのにオレが仕事を持ち帰っちゃったからこんな事になって・・・本当にすまない。」
アスランが謝る事じゃない。
だってこれは・・・あたしの我侭なんだから。
「はキチンと仕事を終わらせて休みに入ったって言うのに、情けないな。」
苦笑しながら机に積まれたファイルに視線を向けたアスランを見て、あたしは腕の中から顔を上げた。
「情けなくなんかない!だってこれはアスランの仕事じゃなくて、皆の仕事でもあるんだから!!」
隊長の秘書をやってるあたしだから分かる事。
確かにこれらのファイルの整理や提出書類はアスランも目を通す必要があるけど、実際はイザーク達と分担してやるはずの仕事だ。
「だから、アスランは情けなくなんかないの!アスランはいつも頑張ってるんだから!!」
さっきまでしょんぼりとした顔をして泣いていたあたしが、そんな風に言う姿に驚いたのか、アスランが珍しく驚いた顔をしていた。
「・・・。」
「何?」
困ったような笑っているような微妙な顔をしたアスランが、指でそっとあたしの目元を拭ってくれた。
「?」
「泣きながらそんな風に言われると、ちょっと・・・」
「え!?嘘、泣いてる!?」
「ん。」
慌ててアスランの腕から離れて目元に手を当てると、確かに目元が濡れている。
「え、え・・・」
「取り敢えず。通信を強制的に切断した影響で、暫くこの機材は使えないし・・・復旧はスタッフに任せて、その間食事にでも行こうか。」
言いながら既に修理スタッフに連絡を入れると、そのまま椅子にかけられた上着を手に取った。
「2時間もあれば直るらしいから、それまで出掛けよう。」
「いい・・・の?」
「あぁ。オレも息抜きしたいからね。」
「・・・アスラン!!」
「うわっ!」
嬉しくて嬉しくて、どんな言葉を伝えても足りないって思ったから、思いを込めてアスランに抱きついた。
誰よりも優しくて、誰よりも大好きなアスラン。
本当はお休みの時だけでいいから、機械や仲間よりあたしを見て欲しいって・・・思ってたんだ。
アスランと楽しく食事をして戻ると、通信機器は復活していた。
勿論、アスランの隣でイザーク達に謝罪したのは・・・言うまでもない。
何かの作品のボツだったと思う。お題・・・かな?
それをちょっと追記して、校正して使いまわそうとしているセコイ人がここにいます。
今の時代でもそうですけど、相手がPCばっかり弄ってると寂しいって思う時ありませんか?
我が家は私も旦那様も両方PCに張り付いてる事が多いのですが、寂しくなるとヒロインのように邪魔しに行きます(主に私が(笑))
ま、さすがに電源は落としません(やられたら私も辛いから(苦笑))
けど、夢小説書いてる時にひょっこり現れてマウスも使わず画面を動かしたり開いたりする技を持っている相手だと結構困ります(汗)