06.泣き虫な君にキス
「どうして貴女はいつも勝手なんです。」
「直江さんが子供扱いするからじゃない!」
目の前で今にも泣き出しそうな彼女の手を押さえつけ、その顔を見つめる。
「私がいつ、貴女を子供扱いしたと言うんですか。」
「だっ・・・だって・・・」
「言って貰わなければ分かりません。」
「・・・」
「・・・」
想いが溢れるように零れた一筋の涙をそっと指で拭う。
そのまま彼女が言葉を発するまで待つと、微かな声が耳に届いた。
「・・・え?」
「キスも・・・しない、じゃないっ!!」
掴んでいた手を振り払って窓を背にこちらを睨むの顔は、涙で濡れていて・・・けれどそれが夜のイルミネーションに輝いてまるで光のように見える。
「キスもできないくらい子供って事でしょう!!」
「それは違う。」
目を反らす事無く、この手を振り払っていった恋人へ一歩、また一歩と近づいていく。
「私が貴女に何もしないのは・・・」
「・・・しないのは?」
涙の後を拭うように手を伸ばし、両手で彼女の頬を包み込む。
いつもより数倍赤い頬、涙で揺れる瞳・・・そして、僅かに開く唇。
――― もう、抑えられない
「直江・・・」
「黙って・・・」
何か言おうと口を開きかけた彼女の唇にそっと自分の唇を押し当てる。
ただ、唇を触れ合わせるだけの・・・軽い、キス。
目を薄く開ければ、どこか怯えるようにギュッと閉じられた彼女の顔が見える。
こんな顔が見られるのは自分だけだ、という幸福感に満たされながら・・・唇を外した。
そのまま彼女の頭部に手を回して、そっと自らの胸に抱き寄せる。
「俺がに今までキスをしなかったのは・・・自分を抑える自信がなかったからだ。」
「・・・え?」
どこかぼぉっとした様子で顔をあげた彼女の唇に、もう一度キスを与えるとそのままその体を抱き上げた。
「俺は一度もを子供扱いした事は無い。」
「あ、あの・・・」
「だが、が不安に思うなら・・・」
抱き上げた体をそっとベッドへ下ろし、頬に手を添えると、真っ赤に染まった耳にそっと囁いた。
「貴女が泣き止むまで、キスをあげる・・・」