「なぁなぁ天ちゃん、これ何?」
僕の部屋で本を読んでいた悟空がある絵本の挿絵を指差した。
「あぁそれは・・・クリスマスツリーですね。」
「くりすますつりー?」
「下界での季節のお祭り、とでも言いましょうか。その時に装飾される常緑樹・・・大抵はモミの木が使われていますね。」
「へぇ〜・・・」
初めて知る単語とお祭りと言う言葉に目を輝かせている悟空の後ろで同じように本を読んでいたも、楽しそうな笑みを浮かべながら読んでいた本を手に僕の側へやってきた。
「ねぇ天ちゃん、クリスマスって何?」
僕の口から語られる言葉を今か今かと待っている二人を見ていると、天界で起こる小さないざこざが馬鹿みたいに思える。
まっすぐな目をした二人・・・世の中の悪い部分を知らないその純粋な目が時に羨ましく、疎ましくも感じてしまう。
「天ちゃん?」
中々僕が話し出さないのを不思議に思ったのか、悟空が服の裾を引っ張った。
「あぁ・・・すみません。」
「また天ちゃんあっちの世界行っちゃったんでしょ?」
「あははは・・・には敵いませんね。」
本当に時々鋭いんですから、には驚かされます。
それから僕は手短に下界のクリスマスについて二人に語った。
まぁ僕の言う手短は大体30分くらいですけどね。
「・・・ねぇ天ちゃん?24日はヒマ?」
「はい?」
話し終えて資料に使った本をその辺に置いた瞬間、何かを企むようなの声が聞こえた。
「悟空は空いてるよね?」
「うん!」
「あとは捲兄と金蝉か・・・」
「何するつもりですか?」
大体分かりますけど、時折貴方は僕の常識を超える事をやりますからね。
用心の為に確認しておかないと・・・。
「もっちろん、皆でクリスマスパーティやるんだよv」
・・・やっぱり。
口は災いの元・・・いつも捲簾に言っている台詞をまさか自分が体験するとは思いませんでした。
それから数日間、僕らが良く集まる桜の木の下でと悟空が何かをやっている姿を見かけた。
時折ナタクも一緒にいたようで、楽しそうな笑い声が書類整理と言う名の部屋の片付けをしている僕の耳にも届いていた。
12月24日の朝。
目が覚めると可愛らしい手書きのカードが机の上に置かれていた。
表紙には可愛らしい桜の絵が書かれており、中にはたどたどしい文字で言葉がつづられていた。
『メリークリスマス! よる8ち゛ サクラのした で まつ』
多分これを書いたのは悟空なんでしょうけど文頭にメリークリスマスって書いていなければただの挑戦状になっちゃいますよ、これ。
しかも・・・時間の「じ(時)」が「ぢ」になってます。
それでも一生懸命に教えられながら書いている姿が目に浮かび、僕はそれを白衣のポケットにしまって大きく伸びをすると、約束の時間までに全ての用事を片付けられるよう手早く本日のスケジュールをこなして行った。