桃源郷のとあるお家に、灰かぶり姫・・・と呼ばれる娘がおりました。
継母と姉に毎日こき使われ、今日もせっせと家の掃除に明け暮れています。
「シンデレラ、ここの片付けもお願いしますね。」
「へいへい。」
「あぁあと、洗濯物も溜まってますから干しておいて頂けますか。あと今朝の食事の後片付けがまだですので、手早く片付けて下さい。あぁそれと新聞がたまってるので紐で縛って倉庫に入れて、ついでに倉庫の掃除も・・・」
「ってまだあるんかい!」
「仕方ないじゃないですか、貴方がシンデレラに決まってしまったんですから・・・」
「・・・とっとと終わらせてやる。」
そうボソリと呟くシンデレラは・・・真紅の長髪に、赤い瞳の悟浄だったのです。
一応くじ引きで決めたので文句は言いません。
ちなみに継母は・・・
「そうそうシンデレラ。先程お願いした窓掃除ですが、隅に埃が残ってますのでもう一度お願いしますね。」
・・・と、ある意味最強の笑顔を持っている八戒が継母です。
さすがの悟浄でも、この継母に逆らう事は出来ません。
「・・・ったく、やってられっか!」
ブツブツ文句を言いながらも窓の掃除をやり直す悟浄の前に、イジワルな姉が現れました。
「ご、悟浄!えっと・・・あたしの服の繕いはどうしたの!」
「・・・チャン。」
ナレーション兼イジワルな姉があたし・・・こんなの同時進行じゃ出来ないよ。
「もっしも〜し、心の声も音声になってますよ。」
あぁゴメンゴメン、ちゃんと進めます。
「繕い物が終わったらジープのベッド掃除があるんだからね!」
「・・・チャンが今着てる服の繕いだったら即効やるんだけどな。」
「え?」
あ、あの・・・悟浄?何であたし壁際に追い詰めてるの!?
「ん〜・・・頼まれた服の繕い物、やろうかと思って?」
「あっあたしが頼んだのは部屋に置いてあるよ!」
「でもさ、ほら・・・その肩の紐、ほどけそうじゃん。」
「え?」
「・・・ちゃーんと直してやるから、さ。」
ごっ悟浄!ちょっと近すぎっ!!
うわわっか、肩に触るなんて何処にも書いてないよ!?
「オレの台本には書いてあるゼ♪」
そんなこんなで悟浄の手が肩に触れかけた時、突然視界に眩しい光が飛び込んできました。
「サボらずに仕事をして下さい。」
「どわぁっっ!」
「お、お母様。」
窓を開けた八戒があたしの肩に手を置いて、にっこり微笑んでこう言いました。
「シンデレラ、仕事を追加します。庭の草が大分伸びてきましたから、草むしりお願いしますね。それが終わるまで・・・家にはいれませんから。」
「・・・はいぃ!?」
「さ、。シンデレラが庭を綺麗にしてくれてる間、お茶でも飲みましょうか。」
「・・・あ、うん。」
「ちょっ・・・」
「じゃぁあと任せましたよ。」
冷たい空気だけれど、柔らかな笑みを浮かべた八戒こと継母が裏口の扉を開けてあたしを先に部屋にいれると、そのまま勢い良く扉を閉めて鍵をかけてしまいました。
残された悟浄はしぶしぶ庭にしゃがみこみ、ストレスを発散するかのように草をちぎり始めます。
「ったく、なんでオレがこんな事しなきゃなんねェんだよ。」
それは悟浄が台本を無視したからです。
「チャンのカッコが可愛いのがワリィ!」
ご、ごめんなさい・・・。
「・・・もういいからとっとと進めようぜ。」
了解!じゃぁ時間ももったいない事ですから、とっととお城のパーティに行きましょう。