不思議な事にさっきまでは冷たい鏡の感触しか感じなかった僕の右手が温かな人の温もりを感じていた。
夢中でその手を掴んで思い切り自分の方へ引き寄せる。

「・・・八戒ぃー!!!」

右手に感じる人の手の感触。
僕の体にかかる人の体重。
そして・・・僕の耳に届く声。

「は、八戒っ!八戒!はっ・・・かいっ・・・」

まるでそれしか言葉を覚えてない子供のように、は僕の体に抱きついて声を上げて泣いた。

「お帰りなさい・・・。迎えに来るのが遅くなってしまってすみません。」

「そんな事っ・・・ないっ。ありが、と・・・八戒・・・」

存在を確かめるかのようにぎゅっと体を抱きしめると、も僕の首に回していた手を更にきつく抱きしめる。

その間もはひたすら僕の名前を呼び続ける。
僕はその都度の声に返事を返す。
彼女が安心するまで、何度も、何度も・・・。





やがて僕がを抱きしめていた手を緩めると、側にいた悟浄がの頭に手を置いた。

「・・・オカエリv」

「ご・・・ごじょぉ〜っ!」

「うおっっ」

は僕の首に回していた手を今度は悟浄の方へ向け、勢い良く抱きついた。
悟浄はその反動で体勢を崩しながらも何とかその体を受け止め、やはり僕と同じように安堵の表情を浮かべていた。

「何だよ、少し見ない間に可愛いアイシャドウ入れちまって・・・」

「・・・ウ、ウサギみたい?」

「そっくり。」

ぉっー!!」

今まで三蔵の法衣の裾を掴んで涙を流していた悟空が、の背後に飛びついた。
そうなると悟浄は二人分の体重を受け止める事になる。
勢いあまって倒れてしまった悟浄を踏み越えて悟空はを背後から抱きしめる。

!体平気か?痛いトコ無いか?」

「悟空!悟空もありがとう!!」

悟空の方へ体を方向変換させてその体をぎゅっと抱きしめると、悟空の目が再び潤み始め涙を流し始めた。

だっ!だー!!」

悟空につられるかのように再び泣き始めたを見て、三蔵が小さくため息をつくと何処からとも無くハリセンを取り出して、二人の頭を何時もと同じように叩いた。

「「痛った〜」」

「痛みが感じられて良かったじゃねぇか。」

三蔵なりの言葉なんでしょうけど・・・もう少し他のやり方、無かったんでしょうか。
それでもは嬉しそうに笑って三蔵に飛びついた。
恐らく人に飛びつかれるなんて経験が無い三蔵にとって、かなり動揺しているらしく急いでの体を引き剥がそうとしているんですが・・・今のに怖いものは無いみたいですね。

「ありがとう三蔵!!」

「礼はいいからとっとと離れろ!」

に抱きつかれて少し表情を変えている三蔵の側にはニヤニヤした顔で見ている悟浄と、物珍しそうに見上げる悟空の二人がいる。
こうなると次に来るはいつものアレでしょうか。

「あれ〜三蔵ちゃん?顔赤くねェ?」

「死にたいかキサマ。」

「あ、ホントだ。三蔵顔赤い。」

「・・・よーし分かった。今すぐ二人まとめて楽にしてやる!」

言うと同時にの体を引き剥がし、懐から銃を取り出すと悟浄と悟空の二人に照準を合わせる。

「早く逃げんと・・・死ぬぞ。」

全て言い終わる前に銃音が寺院内に響く。

「バカヤロウ!打つ前に言え!」

「悟浄こっち来んなよ!!」

慌てて逃げ惑う二人とそれに向かって銃を連射する三蔵・・・そしてそれを笑いながら見ている
これがいつのまにか当たり前になっちゃったんですよね。

「・・・。」

「なぁに八戒?」

そう言って振り返るの顔は、いつもと同じ・・・。

「いえ、ただ名前を呼びたかっただけです。」

の隣に立ってにっこり笑えば、も同じように微笑んでくれる。
心からの笑顔がこんなにも胸を熱くさせるものだと言う事を・・・初めて彼女が教えてくれた。

止まっていた僕の時間が、少しずつ時を刻み始める・・・





END



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つ、疲れましたー!!何とか無事に連載を書き終える事が出来ました。
内容的にまだまだ未熟で、もう少しどうにか出来ればと言う部分も多いんですが・・・個人的には満足しています(笑)
ここまで拙い文章に毎週付き合って下さった方、どうもありがとうございます!
これも掲示板やメールで感想を下さった皆様のおかげです。ありがとうございましたv
(多分それが無ければ途中で脱落してた!絶対!!)
この連載はもとは一週間ぐらいで全てを書き上げました。(部分部分に分けて)
今の自分からは考えられない集中力で書き上げたのを覚えています。
寝る間も惜しんでプロットを立てて、荊藍と馮祁の過去を作って性格を作って・・・この辺は凄く楽しかったです(笑)

ではここで、貴女は気付いていましたか?チェーック(笑)

★ようやく出た連載のタイトル”雨夜の月”
ページのタイトルにしていたので気付いた人は多いと思いますが、意味を知った時から「あーこれだ!」と決めていました。
が、最初からそれを載せるとちょっとネタバレ?と思って最後にタイトルを明確にしてみました。
全体的に・・・と言うよりは、部分部分が八戒の気持ちと被っている気がしたのでこのタイトルをつけましたv



★背景・・・何気に変わっているの、気付きましたでしょうか?
ヒロインが鏡に入るまでは窓に影があったんですが、鏡に閉じ込められてからは影・・・無いのに気付きました!?
背景が黒か白かと言うのはただ単に私の頭の中で夜か昼かって言う違いですが。
第2部の(7)背景の窓が影ありなのは、最初八戒はヒロインと話をしている・・・からです。
その後の会話の流れでヒロインが違う人物だと言う事に気付くので、(11)の場面では窓は影無しになってます。
実はそんな所もちょっぴり考えてこの連載、やってました(笑)

4/25〜8/8迄、毎週楽しみにして下さった方ありがとうございましたv
またこのような素敵な話(自分で言うなっ)を思いついて、書き始めたらお付き合いくださいませm(_ _)m