「ねぇ八戒。」
「はい?」
「お月様、見に行かない?」
「え・・・」
彼女の台詞に一瞬言葉を失ってしまった。
その様子は声をかけた彼女も不思議に思ったのか、視線を僕に合わせて首を傾げる。
「どうしたの?八戒。」
「いえ・・・あの、?」
「ん?」
「ひとつ伺ってもいいですか?」
「うん?」
「・・・コーヒーを飲みながら、今まで何を見てました?」
食後のコーヒーを飲みながら、彼女はずっと窓の外を眺めていた。
てっきり僕は久し振りの満月を眺めているんだと思ったんですが、違うんでしょうか?
けれど彼女はにっこり微笑みながら、僕の予想を肯定する言葉を口にした。
「お月様だよ。」
――― 本当に貴女は不思議な人ですね ―――
けれどそんな所も僕の心を惹きつけてやまない魅力のひとつです。
自然と緩みそうになる口元を押さえながら、さり気なく彼女の目的を確認する。
「じゃぁ何故今、改めて月を見に行くんですか?」
「別に大した事じゃないんだけど、折角の満月だから家の中より外で見た方が綺麗かなぁって思って・・・」
「・・・」
「あ、あははは・・・子供っぽくてゴメン。」
――― 何処までも真っ白で、いつまでも純粋な気持ちを忘れない ―――
「・・・そんな事ありませんよ。」
「え?」
「素直に物事を捉えられる心は大切ですからね。」
「そっ、そんな事ないよ!!」
――― 誰よりも純粋な、女性 ―――
音も立てず席を立ち、上着を二着手に取るとの方へ手を差し伸べた。
「一緒に月光浴にお付き合いさせて貰ってもいいですか?」
「うん!」
貴女の行く場所なら、何処へでも・・・
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