昼食を頂いてお腹もいっぱいになった頃、部屋の側にひとつの影がやって来た。

「失礼致します。」

その声に聞き覚えがあって、反射的に顔を向ける。

「藤姫の命に従い、お迎えにあがりました。」

あたしみたいなワケの分からない・・・というより、素性の知れない人間に対しても礼を尽くしてくれる人なんて早々いない。
でもって今まで会った八葉の皆を消去法で消していくと・・・これは、きっと恐らくあの人。

「・・・頼久、さん?」

躊躇いがちに影に向かって声をかければ、即座に返ってくる返事。

「はい。」



やっぱり頼久さんだったか。



「身支度が整っているようでしたら、神子殿の部屋へお連れするよう言われたのですが、ご準備はよろしいでしょうか。」

「え、あ、はい。」

「では、失礼致します。」

ひと声かけてから部屋に入ってきた頼久さんは、思っていたよりも大きく見えた。
更に頼久さんだけ今まで見た事のない刀を持ってるので、自然とそこに目が釘付けになる。



――― あれ、持ってみたいとか言ったら怒られるんだろうなぁ



考えてみれば初めて会う相手を凝視するなんて物凄く失礼な態度を取っているのに、頼久さんは変わらぬ口調で話しかけてくる。

「足を怪我されていると伺っていますが・・・具合は如何ですか?」

「あ、足ですか?殆ど大丈夫ですよ。」

そう言って立ち上がった瞬間、正座をしていた時の痺れも手伝って思わずよろけてしまった。
慌てて両手を床につこうとすると、それよりも早く体を抱きとめてくれた・・・逞しい腕。

「大丈夫ですか。」

「・・・あ、ありがとうござい・・・ます。」



うわっ、うわっっ頼久さんに抱きとめられちゃってるよっ!!



内心ドキドキしつつも、ちょっぴり乙女モードに入っていると不意に支えられていた腕が逆の腕に変わった。

「?」

「そのままでは歩くのに不自由でしょう。・・・失礼致します。」

「は・・・」

驚きの声を上げるよりも早く、あたしの体はあっという間に地面から遠ざかってしまった。



・・・ちょ、ちょっと待って。
今、あたしの身に何が起きてるの!?



パニックしているあたしに構わず、頼久さんが歩き出したので思わず声を上げる。

「ちょっ、待って・・・高いっ!!怖いっっっ!!

「は?」

「頼久さ・・・止まってーっ!

「・・・は、はぁ。」

あたしが足を痛めているから歩くのが大変だろう、という事で頼久さんが気を使って・・・お姫様抱っこで歩き始めた。
ゲームや本で見る分には乙女の憧れ〜とか喜んでいられるけど、実際にお姫様抱っこされて歩かれると・・・意外と安定感が無くて、怖い。
しかも頼久さん身長が高いから、視界がいつもと全然違う。

怖いけど何処につかまっていいのか分からなくて両手をじたばたさせて奇声をあげているあたしの姿を見た所為だろうか。
今まで表情を崩さなかった頼久さんが・・・小さく吹き出した。

「・・・」

「も、申し訳・・・ありません・・・」

「・・・笑って、る?」

「いえ、そのような・・・事は・・・」

顔そむけてこっちを見ないようにしてるけど、頼久さんの耳ちょっと赤いし肩震えてるし。
こりゃ確実に笑われてるな・・・と思いながら、取り敢えず抱き上げられたままの体勢で頼久さんの服の肩の部分を軽く掴んだ。

「あたし、その、こういうの慣れてなくて・・・」

「そうなのですか?」

「はい。で、その・・・安定感がなくて、高くて怖いので・・・」

下ろしてくれ、と言うつもりだったが、あたしの言葉の意味をどう取ったのか頼久さんが至極真面目な顔であたしの目をまっすぐ見つめてこう言った。

「でしたら両手を私の首に回してしっかり掴まっていて下さい。」

「・・・あぅ」

「大丈夫です。たとえ何が起ころうとも、あなたを神子殿の前にお連れするまで私が御身をお守り致します。」

「・・・」



――― ま、負けました



恥ずかしくて掴まれないって言おうとしたんだけど、これ以上あたしが何か言うと真面目な頼久さんは困るだろう・・・多分。
言われた台詞の恥ずかしさも手伝って、真っ赤になった顔を隠すように死ぬ気で頼久さんの首に両手を回して肩口に額を押し当てた。

「宜しいですか?」

「・・・はい。」

悔しい事に、あたしがどんなにピッタリくっついても頼久さんは全然全く一向に動揺する気配がなかった。
しかも頼久さんが一番表情変えたのって・・・あたしが抱き上げられて暴れた時だけじゃん!!





でさぁ、取り敢えず八葉の皆とは全員会えたけど・・・あたしが自己紹介出来るのは、いつ!?





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やったぁーーっっ!八葉コンプリート!!
おめでとう、自分!頑張ったね、自分!!(笑)
・・・え?名前変換がない?
あぁ〜・・・最後までなかったねwゴメン♪←おい。
冗談ですってば、ちゃんと最後に個別エンディング(違っ)用意してあるから、そこまで待ってて下さい(苦笑)
という訳で、最後の八葉は頼久さんです。
この人が最後ってのは実は最初から決まってました(笑)
神子の所へ連れて行く相手は頼久、と。
でもってお姫様抱っこも最初からやる事の中に入ってました。
頼久と言えばお姫様抱っこ!と私の頭の中には刻まれているようです(笑)
これを後に生かす話を書きたいので、どうしてもこの話は書きたかったんですよw
お姫様抱っこは、体重の軽かった頃にやって貰った事がありますが・・・怖いです(苦笑)
視界が高くなるし足元が見えない上にゆらゆら揺れながら進むので、高所恐怖症の私にはうっとり楽しむ前にただの恐怖でした(笑)
・・・後は私の体重が重すぎて相手に負担になってるのが目に見えてしまうので、とにかく地面が恋しかったな(遠い目)