02.雑踏のなかで











何気なく歩いていた街でふと視界に入ったのは・・・人込みの中で泣いていた一人のオンナ。
まっすぐ前を見つめるその目は、前を歩く男の背中を見つめている。

(フラれたのか?)

男女の仲は至極難しい。
あんな風に泣きながら別れるなんて相手の男はサイテーだな。
もうちょっと上手くやらねェと、いつか背中からナイフでブスリだぜ?
自分も沢山のオンナと付き合っちゃいるが、別れは極めてスマートだし、その後もお友達として付き合ってるヤツが多い。
あんな風にボロボロ泣きながら見送られる経験なんて全く無い。

「あ〜あ、通行人面白がって皆見てンじゃん。」

自分もその一人だというのは棚に上げて、待ち合わせ時間までヒマを潰すかのように側の柵に寄りかかりながらオンナを見た。



身長は普通、体型は・・・おーっ結構胸デカイな。
でもなんとなぁ〜くオコサマな空気が漂ってる、オレ的にはパスしたいオンナ。
色んなワガママ言って、相手に捨てられるタイプだな、アレは。



そんな風に勝手に分析しながら見ていたら、ポタポタと涙を流していたオンナが急に手の甲で涙を拭うとある方向へ笑顔で手を振り始めた。

「あ゛?」

思わずくわえていた煙草を落としそうになって慌てて指に持ち帰ると、男が去っていった方向から手を振ってこちらへ来るオンナがいた。

「ダチ?」

親しげに話している様子からダチだと言うのはすぐに分かった。



普通あんな風に泣いている所へ知り合いが来たら・・・泣きつくんじゃねェの?



首を傾げながら泣いていたオンナを見れば、さっきまでとめどなく流れていた涙はどこへやら・・・まるで何もなかったかのように話をしている。

「オンナの方が一枚上手ってか。」

そこへこれから行こうとしているオンナからメールが入った。

「お♪」

先日ナンパに成功した美女からのメール。
見た目も体型も文句ナシの美女、勿論あんな風に泣き出す心配も・・・ない。

「んじゃ行くか・・・」

鼻歌と共にその場から歩き出そうとして・・・俺の足がピタリと止まる。

「・・・ナンで・・・・・・?」

ダチと別れて一人になったオンナは・・・再び瞳を潤ませて泣き出した。





泣き出したっつっても声を上げて泣くわけじゃない。
ただ、涙が零れるのを拭おうともせず・・・やっぱり男が歩いて行った方をじっと見つめながら泣いていた。
その大きな目は・・・もうそこにはいない、かつての恋人を見ているのか。
気付けばオレは涙を流しながらたたずむ女から・・・目が離せなくなっていた。















それからどれくらい見ていただろう。
夕日はとっくに沈み、オレの携帯には何度もメールと着信が続いたけど・・・そんなもん無視して彼女を見ていた。





きっかけは・・・涙





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