05.それでも











「・・・やだ、どうして?!」

目覚まし時計がなる前に起きた事に驚いた・・・ワケじゃない。
光に相談したあの日から3日連続であたしは同じ人の夢を見る。

「何であの人が夢に出てくるの!?」

名前も素性もどこの誰かも全然分からない。
一度しか会った事のない人なのに・・・あたしの頭の中にはすっかりあの人が居ついてしまった。

「うぅぅ・・・今日も抱きしめられてた・・・」

がっくり頭を垂れて布団をギュッと握り締める。



一昨日は肩を抱き寄せられていた。
昨日は腕を組んでいた。
そして今日は・・・背後から抱きしめられていた。



「うにゃぁっっ!!!」

瞬間的に顔に熱が集まるのが分かる。
まるで強いお酒を一気に飲んでしまったみたいに胸がドキドキして、顔が火照る。
でもその想いがつい最近まで持っていた感情と一致した瞬間、ピタリと動きが止まった。



ダメ・・・このままじゃあたし、またダメになっちゃう。



恋を楽しむ余裕は・・・まだ無い。
忘れたフリをしているだけで、あたしの恋心はまだ次の準備は出来ていない。



このまま知らない相手にのめり込んでしまえば、また自分が傷ついてしまう。
自分の熱が高ければ高いほど、その後の傷口は・・・深い。



「あーもう!せっかくのお休みだからのんびりしようと思ったのに!」

自分自身に活を入れるべく、あたしは目覚まし時計を止めてシャワーを浴びる準備をした。
熱めのシャワーを浴びて、お気に入りの服を着て・・・人のいる所へ行こう。
何も考えなくてすむように色んな物を見て、美味しい物を食べて元気だそう!
そう思いながらシャワーを浴び、簡単な朝食を食べてからあたしは家を出た。










それでも一度火がついた想いは薄れないという事を・・・
あたしは ――― 知っている。





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